シェンゲン協定とは?旅行で加盟国を訪れる際のルールや注意点をわかりやすく【解説】

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「シェンゲン協定」のおかげで、ヨーロッパ方面への旅行は随分とスムーズになっています。でも、「どんな仕組みなの?」「ルールは?」「注意点は?」と気になる方も多いはず。

この記事では、シェンゲン協定の基本的なルールから加盟国一覧、旅行時に気をつけるポイントを丁寧に説明します。はじめての方も久しぶりの方も、ヨーロッパ旅行をより安心して楽しめるように、この記事が役立てば幸いです。

シェンゲン協定の概要

シェンゲン協定は、加盟している国の間の国境管理(入国審査)をなくし、人とモノの移動を自由にするために作られた協定です。1985年6月に始まり、2025年9月現在では、ヨーロッパの国々29か国が加盟しています。

わかりやすく言うと、加盟国間を移動するときに、いちいち出入国検査を受ける必要がなくなる仕組みです。

これまでは、入国のルールが違ったりビザが必要な国もあり、その煩雑さは旅行者にとってかなりのネックでした。シェンゲン協定の導入により出入国検査を受ける必要がなくなり、まるで一つの国の中を旅行しているような感覚になります。

シェンゲン協定ができた歴史的背景

協定名の由来は、ルクセンブルクのモーゼル川沿いに位置する小さな村、シェンゲンです(ドイツ語で「Schengen」)。この村で、1985年に最初の協定が結ばれました。

この村はルクセンブルク、フランス、ドイツの三国の国境が交わる地点です。「国境の町」で調印したことは、自由に行き来できるという協定の意図を象徴しています。

1985年のスタート時は、フランス・ドイツ・ルクセンブルク・ベルギー・オランダの5か国でしたが、1999年には「アムステルダム条約」という大きなEU法が発効し、シェンゲン協定はEUの正式なルールの一部となりました。

その後、加盟国はどんどん増え、2025年9月現在は29カ国が加盟しています。シェンゲン協定締結後、今ではヨーロッパの多くの国々で、国境検査なしの自由な移動が可能になっています。

シェンゲン協定に加盟している国

2025年9月現在、シェンゲン協定に加盟している国は29カ国あります。

オーストリア

ベルギー

ブルガリア

クロアチア

チェコ共和国

デンマーク

エストニア

フィンランド

フランス

ドイツ

ギリシャ

ハンガリー

アイスランド(EU非加盟)

イタリア

ラトビア

リヒテンシュタイン(EU非加盟)

リトアニア

ルクセンブルク

マルタ

オランダ

ノルウェー(EU非加盟)

ポーランド

ポルトガル

ルーマニア

スロバキア

スロベニア

スペイン

スウェーデン

スイス(EU非加盟)

※ブルガリア、ルーマニアについては、2024年3月から航空・海路の国境管理はなくなりましたが、陸路はまだ国境管理が残っています。

ヨーロッパの国でシェンゲン協定に加盟していない国はどこ?

シェンゲン協定は、EUの主要なルールの中に組み込まれていますが、すべてのEU加盟国が参加しているわけではありません。現在、アイルランドとキプロスはEU加盟国でありながら、シェンゲン協定には参加していません。

さらに、EUをすでに離脱したイギリスもシェンゲン圏には含まれません。

EU加盟国だけどシェンゲン協定非加盟ってどういうこと?

シェンゲン協定は1999年に「アムステルダム条約」でEU法の一部になりましたが、すべてのEU加盟国に強制的にシェンゲン協定を押し付ける拘束力はありません。

これは、シェンゲン協定が「EU法の中にあるけれど、各国が自分で参加を決められる仕組み」になっているからです。

たとえば、アイルランドはEUに入っていますが、シェンゲンには参加していません。イギリスとは「共通旅行圏(Common Travel Area:CTA)」という別のルールを持っており、両国間ではパスポートなしで移動できます。

また、キプロスもEU加盟国ですが、理由があり、まだシェンゲンに完全には参加していません。

シェンゲン協定の基本的なルール

シェンゲン協定は、加盟国どうしの国境で行われていた入国審査を原則として廃止し、人やモノの移動を自由にすることを目的とした取り決めです。この協定により、シェンゲン圏内の29カ国を移動する際、通常の出入国審査は必要なくなります。

ただし、日本人などのビザが免除されている旅行者が観光目的で滞在する場合は制限があります。それは、「いかなる180日間の期間内においても、合計90日を上限として滞在できる」というルールです。国を移動しても、シェンゲン圏内で過ごした日数はすべてこの上限に合計されます。

シェンゲン協定加盟国間の移動の流れ

シェンゲン圏の国々での移動の流れについて説明します。

たとえば、日本→ドイツに行き、オランダ→フランス→スペインと移動する場合、最初の到着国のドイツで入国手続きが完了します。次は、スペインを旅立つ時に出国手続きを行うことになります。

国境を越えるときにパスポートチェックがないので、移動時間の短縮と旅程に余裕が出てきますね。

一方、シェンゲン協定非加盟国(イギリスや、アイルランド、キプロス)への出入りは、通常の出入国検査が必要になります。

シェンゲン協定加盟国の移動で見落としがちな点は?

シェンゲン協定はとても便利な制度ですが、旅行者には気をつけたい制限があります。

それは、「いかなる180日間の期間内においても、合計90日を上限として滞在できる」という滞在ルールです。

このルールは、「過去180日を遡って見たとき、シェンゲン圏内での累積滞在日数が90日を越えることは許されない」ことを意味します。国境を越えても、シェンゲン圏内で過ごした日数は全ての日数が合計されます。

☆計算の具体例

3月(30日)、6月(40日)、7月(20日)で合計90日をシェンゲン圏で過ごしたと仮定します。この場合、8月は滞在日数の上限に達しているため、シェンゲン圏へ再入国は拒否されます。次に圏内に入国可能となるのは、日数が回復する9月以降になります。

☆注意点

シェンゲン協定非加盟国へ一時的に出国しても、この180日間の計算期間がリセットされることはありません。 重要なのは、「直近180日間」の期間で常に滞在日数がカウントされている点です。

EU加盟国でシェンゲン協定非加盟国への移動はどうなっているの?

EUに加盟していても、シェンゲン協定非加盟国では、国境で入国審査が必要になります。また、これらの国もEU加盟国として、人の移動をスムーズにするための独自の仕組みを持っている国々もあります。

アイルランドはシェンゲン協定非加盟国ですが、イギリスと一緒に「共通旅行圏(Common Travel Area:CTA)」という独自の取り決めをしています。イギリス、アイルランド、マン島、チャンネル諸島の間は パスポートなしで自由に移動できるようになっています。その代わり、シェンゲン圏(例:フランスやドイツ)からアイルランドに入るときは 入国審査が必要 になります。

シェンゲン圏内の移動ではパスポートはどうするの?

国境手続きは不要でも、本人確認のためにパスポートの提示を求められることがあります。常にパスポートは携帯することをおすすめします。

シェンゲン圏内の入国申請ETIASとは?

短期の滞在(90日以内)で日本のようにビザ免除の国籍の旅行者は、2026年からシェンゲン圏入国前にETIAS(エティアス)=電子渡航認証のオンライン申請が必須になります。

対象:日本を含むビザ免除国の旅行者

有効期間:3年(ただしパスポート有効期限が先に切れると同時に失効)

申請費用:7ユーロ

承認は、数分〜数時間で完了します

2026年以降は、ETIASを事前に申請していないと、入国拒否やフライトの搭乗を拒否されるようになります。

※ETIASの開始時期は延期となる可能性もありますので、渡航前に必ず最新情報をご確認ください。

☆ETIASの申請方法

ETIASは完全にオンラインで申請できる制度です。

https://travel-europe.europa.eu/etias_en

公式サイト(または公式アプリ)から、パスポート情報・渡航目的などを入力します。ほとんどの申請は 数分〜数時間以内に認証完了。

手続きの際の費用は 7ユーロ(約1,100円)程度。

承認されると、メールで認証番号が届き、その情報が自動的に入国審査システムに登録されます。承認されたメールは、もしもの場合に備えてすぐに提示できるようにしておくと安心です。

シェンゲン圏への旅行に保険は必要?

シェンゲン圏に渡航する際、医療費を補償できる海外旅行保険への加入が求められる場合があります。ビザが不要な短期滞在でも、保険の加入は多くの国で推奨されており、入国の際に証明書の提示を求められることもあります。

万が一に備えて保険に入っておき、証書はすぐ取り出せるようにしておくと安心です。

留学ビザや就労ビザを持っている人はETIASが必要?

留学ビザや就労ビザを持っている人は、各国が発行する長期滞在ビザ(Dビザ)で滞在できるため、ETIASの申請は不要です。

シェンゲン圏内のフライトではどの通路を通るの?

シェンゲン圏内は出入国手続きが必要ないことは理解できたけれど、実際に空港に降り立った時はどのようになっているのでしょうか?

シェンゲン圏内のフライト(たとえばフランス→イタリア、ドイツ→スペインなど)では、出発・到着どちらも「シェンゲン圏専用エリア」を通る仕組みになっています。

シェンゲン圏内では国境審査を行わないルールのため、 特別な入国・出国カウンターを通る必要がないからです。

出国例:パリ → ローマ

チェックインと手荷物検査を終えたあと、 空港の案内板で「Schengen Gates(シェンゲン行きゲート)」を探します。

その表示に従って進むと、シェンゲン圏専用の出発エリアに入ります。

シェンゲン圏内では、国境を越えても国内線扱いになるため、そのまま搭乗ゲートへ向かえます。

到着例:ローマ → パリ

飛行機を降りたら、空港の案内にある「Schengen Arrivals(シェンゲン到着)」へ進みます。

到着後も、パスポートを見せる入国審査はありません。

そのまま荷物受け取りエリア(Baggage Claim)または出口(Exit)へ行けます。

到着時も「シェンゲン専用ルート」を通るので、入国カウンターに並ぶ必要はありません。

注意しよう!シェンゲン圏外に出る場合は?

イギリス・アイルランド・日本・アメリカなどのシェンゲン協定非加盟国へ出発する場合は、「Non-Schengen Gates(非シェンゲン行きゲート)」の表示を探します。

この場合は、通常の手続き出国審査カウンター(パスポートチェック)を通過してから搭乗します。

税関の申告をする際の注意事項は?

シェンゲン協定では、人の移動に関しては自由になりますが、モノの移動、たとえば、旅行中に購入したものについてはどのようになるのでしょうか?

国境を越える際、通常モノの移動の際には税関を通る必要があります。このモノについては、「EUの関税に関する規則」に基づいて行われるため、EU加盟国かそうでないかで、申告の有無に関わってきます。

EU加盟国内:税関申告は不要。

例:イタリアで買ったワインをフランスへ → 申告不要。

スイス:シェンゲン加盟/EU非加盟。人の移動は自由でも、税関(モノの検査)は必要。

イギリス:シェンゲン非加盟/EU非加盟。人の審査+税関申告の双方が必要。

アイルランド:EU加盟/シェンゲン非加盟。EU内との物品移動は関税なし。ただしイギリスからの持ち込みはEU外扱いで免税枠・申告ルールが適用されます。

シェンゲン協定加盟国へ旅行する際の注意点

ETIASのオンライン申請と申請番号を控えよう!

2026年から、日本人はETIASの申請をしていないとシェンゲン協定加盟国への入国ができません。必ず申請を済ませてください。また、申請から3年の有効期限、180日内で最長で90日の滞在期限もよく確認する必要があります。

パスポートは常に携帯を!

シェンゲン協定加盟国内の移動では、パスポートチェックは必要ありませんが、身分確認がある場合があります。パスポートは常に携帯し、ETIASの申請番号も控えておくと安心です。

ルールを事前に把握しよう!

シェンゲン協定とEUのルール、シェンゲン協定非加盟国などの違いをよく理解し、欧州内の移動では、出入国検査の有無や税関申告の必要な国などをあらかじめ確認することが必要です。

旅行を楽しむためには、渡航前に必ず外務省の海外安全情報や、渡航予定国の大使館のウェブサイトで最新の情報を確認することが大切です。

まとめ

現在29カ国が加盟するシェンゲン協定によって、ヨーロッパ内で国を越えての移動が随分と楽になりました。入出国の手間が省けるようになるだけでなく、旅行中や滞在中の移動がスムーズになります。ですが、シェンゲン協定非加盟国や、EUのルール、EU非加盟国でのルールなどが混在し、わかりにくい点もあります。

ヨーロッパを訪れる際には、安心して旅立てるよう、事前に確認しておくことが大切です。

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