
「世界三大夜景」という言葉を聞いたことはありますか?
香港、ナポリ、そして日本の函館がそう呼ばれ、その美しい輝きは多くの人々を魅了してきました。
しかし、一体どのような基準でこれらの都市が選ばれたのでしょうか。
その定義や歴史的背景を知ることで、夜景の新たな魅力が見えてきます。
本記事では、それぞれの都市が誇る夜景の特徴や見どころ、そして知っておきたい豆知識まで、世界三大夜景の全貌を分かりやすくご紹介します。
世界三大夜景の意味や定義
多くの旅好きを魅了し、一度は訪れたい憧れの代名詞となっている「世界三大夜景」。
その言葉の響きは、格別に美しい夜景への期待感を抱かせます。
しかし、この権威ある称号が、一体誰によって、どのような基準で定められたのか、その背景を正確に知る人は意外と少ないのではないでしょうか。
実は、その「定義」は私たちが想像するような公式なものではなく、その成り立ちを知ることで夜景の価値をより深く理解することができます。
「公式な定義」は存在しない、日本発祥の"通説"

まず最も重要な点は、「世界三大夜景」という称号は、ユネスコのような国際機関や特定の公的団体が公式に認定したものではないということです。
一般的に「函館」「香港」「ナポリ」の三都市を指しますが、これは明確な根拠に基づく定義ではなく、自然発生的に広まった「通説」なのです。
その起源は定かではありませんが、日本の高度経済成長期を経て海外旅行が普及し始めた1950年代から60年代にかけて、旅行会社やメディアが観光客を惹きつけるためのキャッチコピーとして使い始めたという説が有力です。
当時は、船旅が主流だった時代背景もあり、美しい港町の夜景としてこの三都市が選ばれたとも言われています。
つまり、「世界三大夜景」は世界的な共通認識というよりは、日本で生まれ、育まれ、定着した文化的な概念に近い存在と言えるでしょう。
称号としての「意味」と文化的なブランド価値
では、公式な定義がないにも関わらず、なぜこれほどまでに権威ある言葉として認識されているのでしょうか。
それは、「世界三大夜景」という言葉が、単なる景色の評価を超えた、一種の"文化的なブランド"としての役割を果たしているからです。
この称号は、数ある夜景の中から選りすぐられた特別なものであるという「お墨付き」を都市に与え、観光客にとっては「訪れるべき価値がある場所」という分かりやすい指標となります。
人々はこの共通の称号を通じて、夜景の美しさや感動を語り合い、共有することができます。
このように、「世界三大夜景」という言葉は、夜景そのものの価値をさらに高め、後世に語り継いでいくための強力なブランドとして機能しているのです。
新たな潮流「世界新三大夜景」の登場との違い
こうした背景を理解する上で対照的なのが、近年登場した「世界新三大夜景」です。
これは、日本の「夜景観光コンベンション・ビューロー」が、国内外の夜景観光の専門家へのアンケート調査や現地調査を経て、数年ごとに認定しているものです(2024年現在はモナコ、長崎、上海)。
こちらには明確な認定主体とプロセスが存在し、現代の夜景観光の視点から評価が行われます。
この「新三大夜景」の存在は、通説として愛されてきた従来の「世界三大夜景」が持つ文化的な価値と、明確な基準で評価される現代的なブランド価値との違いを、より浮き彫りにしていると言えるでしょう。
世界三大夜景に選ばれている国・都市と夜景スポットの特徴
「世界三大夜景」とは、世界に数ある夜景の中でも特に美しいとされる景観に与えられた称号です。
公式な認定機関はありませんが、長年にわたり語り継がれてきた3つの都市には、それぞれ唯一無二の魅力的な輝きがあります。
函館
函館の夜景の美しさの根源は、函館山がかつて島であり、砂州の堆積によって本土と陸続きになった「陸繋島(トンボロ)」という極めて珍しい地形にあります。
この地形が、市街地の両側を津軽海峡と函館湾の深い闇が縁取るという、世界でも類を見ない景観を創り出しました。
山頂の展望台に立つと、扇形に広がる街の光はまるで漆黒の海に浮かぶ巨大な船のようにも、あるいは宝石を散りばめた箱庭のようにも見えます。
日本初の国際貿易港として栄えた歴史を物語る教会群や洋館のライトアップ、そして沖合に揺れるイカ釣り漁船の漁火(いさりび)は、この光の芸術に繊細な彩りと物語性を加えています。
鑑賞の際は、日没時刻の30分ほど前に展望台に到着するのがおすすめです。
空が茜色から深い青へと移ろう「マジックアワー」に、街の明かりが一つ、また一つと灯っていく瞬間は、息をのむほどの感動を覚えるでしょう。
香港
香港の夜景は、アジアの金融センターとして発展を遂げたこの都市のエネルギッシュな魂そのものを光で表現した、まさに「動的な夜景」です。
その最大の特徴は、ビクトリア・ハーバーを挟んで香港島と九龍半島に林立する、世界屈指の密度を誇る超高層ビル群から放たれる圧倒的な光量にあります。
展望台からは、白や青のシャープな光を放つ金融街と、オレンジ色の温かい光が混じる住宅街との対比、そして昼夜を問わず船舶が行き交う港の光跡が一体となり、立体的で壮大な光のパノラマを創出します。
名物のピークトラムで急斜面を登っていく道中、木々の間から徐々に夜景が姿を現す過程も期待感を高めてくれます。
毎晩8時から開催される光と音のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」は必見。
レーザービームが夜空を彩り、ビル群が音楽に合わせて明滅する様子は、街全体が巨大な生命体であるかのような錯覚さえ覚えるほどの迫力です。
ナポリ
「ナポリを見てから死ね」という有名なことわざに象徴されるナポリの夜景は、その華やかさの中に、古代ギリシャ・ローマ時代から続く悠久の歴史と人々の生活の温もりを感じさせる、情緒的な魅力に満ちています。
ポジリポの丘から見下ろす景色は、派手さよりも調和の美しさが際立ちます。
世界三大美港に数えられるナポリ湾の優美な海岸線に沿って、オレンジ色のナトリウムランプを中心とした温かい街明かりが緩やかな弧を描きます。
その光の連なりの先には、古代の要塞「卵城(カステル・デッローヴォ)」やサンタルチア港が浮かび上がり、遠景には雄大なヴェスヴィオ火山が荘厳なシルエットを見せます。
この自然と歴史、そして人々の生活の灯りが完璧に調和した景観は、まるでルネサンス期の絵画のよう。
特に、ティレニア海に夕日が沈み、空と街が一体となって紫から深い青へと染まっていく夕暮れ時は、他のどの都市でも味わえない詩的でロマンティックな感動を与えてくれます。
「世界新三大夜景」に選ばれている国・都市と夜景スポットの特徴
通説として語り継がれてきた「世界三大夜景」に対し、「世界新三大夜景」は、夜景観光の専門家たちが厳格な基準と投票によって選出する、新しい時代の夜景の称号です。
単なる景観の美しさだけでなく、夜景を観光資源として活用する地域の取り組みや、鑑賞環境の整備といった現代的な視点も評価の対象となっています。
ここでは、2021年の「世界夜景サミット」で認定された3都市の、進化し続ける光の魅力に深く迫ります。
モナコ
世界で2番目に小さい国家であるモナコ。
その夜景は、険しい崖と紺碧の地中海に抱かれた国全体が一つの光の芸術作品となる、圧倒的な密集感と気品が特徴です。
鑑賞の特等席は、旧市街「ル・ロシェ」の丘や、フランス領の絶壁「テット・ド・シアン(犬の頭)」からとなります。
眼下には、F1グランプリのコースとして有名な市街地、ライトアップされ荘厳な輝きを放つ「大公宮殿」や「カジノ・ド・モンテカルロ」、そして港に停泊する無数の豪華クルーザーの灯りが、まるで宝石箱のように煌めきます。
国土が狭いがゆえに生まれる光の高密度と、世界有数の高級リゾート地ならではの洗練された輝きが融合し、他のどの都市にもないエレガントで豪奢な夜景を創り出しています。
夜でも安心して散策できる治安の良さも、この美しい光を心ゆくまで堪能できる大きな魅力です。
長崎
長崎の夜景の核心は、長崎港を包み込むように山々が連なる「すり鉢状」の独特な地形にあります。
この地形により、鑑賞者はまるで光の渦の中にいるかのような没入感を味わうことができます。
代表的な鑑賞地である「稲佐山」の山頂からは、港の曲線美と、山の斜面の隅々まで広がる家々の灯りが織りなす、立体的で奥行きのある絶景を一望できます。
大都市のシャープなネオンとは異なり、長崎の夜景の主役は一つひとつの暮らしを象徴する温かな生活の灯りです。
それが観る者の心に温もりと親しみやすさを感じさせます。
ライトアップされた女神大橋や歴史的な教会群がアクセントとなり、港町・長崎の異国情緒豊かな歴史を光の中に映し出します。
稲佐山だけでなく、鍋冠山など複数の視点場からそれぞれ異なる表情の夜景を楽しめる点も高く評価されており、訪れるたびに新たな発見がある、奥深い夜景と言えるでしょう。
中国(上海)
上海の夜景は、黄浦江(こうほこう)という川を挟んで、過去と未来の中国が対峙する、壮大な光のスペクタクルです。
その最も象徴的な鑑賞スポットが、西岸の租界時代の歴史的建造物が並ぶ「外灘(ワイタン/バンド)」です。
ここから眺める東岸「浦東(プートン)」地区の景観は、まさに圧巻の一言に尽きます。
外灘に立つと、目の前には東方明珠電視塔や上海タワーといった、色彩豊かにライトアップされた超近未来的な摩天楼群がそびえ立ちます。
一方で、自身の背後には、黄金色にライトアップされた重厚な西洋建築群が静かに佇んでいます。
この100年の時を超えた光の劇的なコントラストこそが、上海夜景の最大の魅力です。
川面を彩りながら行き交うクルーズ船の光も加わり、凄まじいエネルギーで発展を続けるアジア経済の中心地の躍動感を五感で感じることができます。
外灘から未来を望むだけでなく、浦東の超高層ビルから歴史的な外灘を見下ろすことで、この街が持つ二面性の魅力をさらに深く味わうことができます。
まとめ
歴史を纏う伝統の光から、未来を照らす革新的な輝きまで、世界の夜景は多くの物語を語りかけてくれます。
写真や言葉では伝えきれない、その場に立って初めて感じる空気とスケール、そして心の奥深くに響く感動がそこにはあります。
次の旅行の計画に、「最高の夜景」という目的を加えてみてはいかがでしょうか。
きっとその光景は、忘れられない思い出として心に深く刻まれることでしょう。
◇経歴
国際系学部出身
◇資格
英検1級、TOEIC900点以上
◇留学経験
アメリカ・ワシントン大学に半年間留学経験あり
◇海外渡航経験
旅行と留学のみ。アメリカ、オーストラリア、シンガポール、カナダに渡航経験あり
◇自己紹介
「暗記」よりも「理解」を意識した記事作成を心がけております。海外経験がなくても、オンライン英会話を活用すれば英語は話せるようになります。私自身もそうでした。一緒に楽しみながら英語を学んでいきましょう!