
世界には壮大な大聖堂が数多く存在し、人気観光地となっています。
聳える塔、一歩足を踏み入れると、優しいステンドグラスからの光に包まれる大聖堂。壮大な建造物は、千年以上の歴史を静かに語りかけてきます。
近年、魅力的な大聖堂を訪れたいと願う人は増加傾向にあり、ヨーロッパでは特に人気を集めています。
この記事では、代表的な大聖堂をピックアップするとともに、その魅力を徹底的に解説してみました。
そもそも「大聖堂」とは?
「大聖堂」と聞いたときに脳裏に浮かぶイメージは、多くの方が共通しているのではないでしょうか。
一際目を引く塔や屋根、豪奢なステンドグラス、目を奪う彫刻や絵画、荘厳な音楽を奏でそうな内装、など。
キリスト教由来の建物であることはなんとなくわかるけど、そもそも何なのかを、解説します。
大聖堂の定義
「大聖堂」とは英語で“Cathedral”と言います。
これは、“Cathedra”と言われる「司教座」司教の座る椅子がある建物のことを指します。
大聖堂は教会の一つですが、ただの教会ではなく、規模の大小に関わらず周りの教会をまとめる立場である司教の拠点である場所、と定義されています。
最古の大聖堂とその数
キリスト教が世界に広がった際、それに伴って教会が多く建築されました。
そして、その教会をまとめるため、司教の拠点の大聖堂が建てられました。
現在、正式に司教座があるものだけを数えて、3,000~3,500あると見積もられています。
最古の大聖堂はローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂で、紀元324年に完成し、今も存続しています。
「ローマ最古のバシリカ式教会」と呼ばれています。
この大聖堂は、教皇宮殿として利用されたことがあり、1000年もの間、ローマで最大の大聖堂でした。
今では世界遺産に登録され、多くの観光客が訪れています。
大聖堂は何をする場所なのか
大聖堂は、宗教的目的のためのものです。
ミサ、礼拝、聖職者の任命、巡礼の拠点などが第一義の存在目的となります。日本の、神社やお寺のイメージと合致します。
大聖堂はキリスト教の歴史と共に、権威の象徴として建てられた背景があります。
そのため、時代ごとに建築様式は異なります。その時代ごとの最高の手法で建てられたので、建造物として極めて豪奢、魅惑的です。
そのような芸術性や歴史性が評価され、世界文化遺産として登録されている大聖堂も数多くあり、世界中の観光客を歓迎しています。
代表的な世界の大聖堂
では、代表的な世界の大聖堂を見ていきましょう。
この記事では、フランスのノートルダム大聖堂、イタリアのフィレンツェ大聖堂、スペインのサグラダ・ファミリア、ドイツのケルン大聖堂、をピックアップしました。
それぞれの歴史的背景や建築様式、さらに、観光で訪れる際の見どころをご紹介します。
フランスのノートルダム大聖堂
フランスのパリで最も有名と言って過言ではないノートルダム大聖堂!
ディズニーで映画化もされた「ノートルダムの鐘」の舞台にもなり、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
かのナポレオン1世が戴冠式を行った場所としても有名です。
フランス、パリ市民にとってはこの大聖堂こそが長い間信仰の拠点であり、文化的、歴史的にフランスを代表する大聖堂です。
2019年に火災があり、炎に包まれた尖塔はパリ市民だけではなく全世界へ衝撃を与えましたが、2024年12月に修復が終わり、現在では一般公開も再開されています。
パリといえばエッフェル塔に凱旋門、そしてノートルダム大聖堂の尖塔アーチ、巨大なローズウィンドウと呼ばれる薔薇を象った窓、その窓を飾る聖母マリア像。
中に入ると、中世ヨーロッパの森をイメージしたと言われる広い空間が広がり、当時最大だったステンドグラスがローズウィンドウの内側を彩り、息をのむ美しさです。
イタリアのフィレンツェ大聖堂(ドゥオーモ)
正式名称は、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂です。
イタリアの世界遺産「フィレンツェ歴史地区」に含まれている大聖堂です。(ドゥオーモはイタリア語で大聖堂の意)
教会の名前は、「花の(聖母)マリア」。巨大なドームが特徴で、華やかなフィレンツェの街並みのシンボルです。フィレンツェと一体となった歴史遺産です。
このドームは、当時最大のものであり、初めて木枠を使わずに建築された、まさに技術の革新を示した傑作です。
大聖堂の周りをぐるりと一周すると、様々な角度からドームを臨むことができます。
さらに展望フロアとなっており、入場の上で463段を登りきると、フィレンツェを一望することができます。
また、大聖堂内部には有名な「最後の審判」のフレスコ画があります。
それに加え、外壁の白、緑、赤の大理石装飾など芸術的に非常に評価が高い建造物となっています。フィレンツェへ行ったら、確実に訪れるべき場所です。
スペインのサグラダ・ファミリア
翻ってスペインでは、サグラダ・ファミリアが圧倒的人気を誇る観光名所となっています。
スペインが世界に誇る芸術家「アントニ・ガウディ」が設計したということで、有名なこのスポット、実は大聖堂だということに驚く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
サグラダ・ファミリアは大聖堂であり、もとはガウディの残したスケッチ一枚から生み出されたというユニークすぎる建造物です。
まだまだ未完成な部分が多かった時点で世界遺産へ登録される、という異例尽くしの大聖堂でしたが、2026年に堂々完成予定と発表されました。
サグラダ・ファミリアは、ガウディが設計に携わったグエル公園やグエル邸、カサ・ミラなどと合わせて、「アントニオ・ガウディの作品群」として世界遺産に登録されています。
テーマは「自然との調和」と言われており、そのすべての空間に並んで大聖堂があるところが、バルセロナのシンボルであり、近代建築と宗教建築を融合させた唯一無二の存在としてとらえられます。
ドイツのケルン大聖堂
最後に、ドイツのケルン大聖堂です。
ドイツには多くの大聖堂が存在していますが、ケルン大聖堂は多くの点で一線を画した名所となっています。「ゴシック建築の最高傑作」と言われ、世界で双塔を持つ教会建築物の中では最も高いものとなります。
また、完成まで実に600年以上をかけた、「時間を超えた建築プロジェクト」としても特徴的で、刻まれた第二次世界大戦の爪痕なども含め、歴史的意義がとても高いです。
典型的なゴシック建築であり、内部は荘厳な雰囲気です。入り口から、700体に及ぶ彫刻が並び、同じ顔が二つとない職人技にも息をのみます。
ステンドグラスも流麗であり、また、「東方の三博士の聖遺物」を収める黄金の厨子があり、巡礼地としての価値も高いのが特徴です。
ケルンは、ドイツで4番目の都市のためそこまで大きな観光地ではありませんが、この大聖堂を目当ての観光客が多く訪れます。
街中でふらりと立ち寄れる気安さと、一歩入ると別世界へ連れて行ってくれるその荘厳さに、ぜひドイツ旅行の際には、ケルンまで足を延ばすことを強くおすすめします。
その他
フランス、イタリア、スペイン、ドイツで訪れるべき有名な大聖堂をピックアップしてみました。
もちろん他にも多くの大聖堂がヨーロッパにはあります。いくつか他のものも挙げてみます。
キリスト教といえばバチカン市国、その玄関口の「サン・ピエトロ大聖堂」。
キリスト教最大の建造物であるこちらの大聖堂は、かのミケランジェロの「ピエタ像」も在り、内部の装飾や美術品は世界一豪華と言われており、必見です。
また、東欧のプラハには、観光最大の目玉である「聖ヴィート大聖堂」があり、プラハ城の敷地内に圧巻の迫力で聳え立っています。
ステンドグラスが素晴らしい。おとぎ話のように美しいと言われるプラハの夜景と共に、ぜひ一度訪れたい場所です。
知っておきたい大聖堂の建築様式

大聖堂は「神の国を地上に再現する」建物とされ、天へ向かう垂直性、光、音楽など、すべてが宗教的体験を高めるよう設計されています。
また、権力の象徴という側面もあるため、建築時には、最大限の資金を投入し、できる限りの技法を尽くして完成されます。
そのため、時代によって建築様式が様々です。徹底解説です!
バシリカ式(ローマ帝国末期~初期キリスト教時代(4〜6世紀))
313年の「ミラノ勅令」でキリスト教が初めて公認され、そこから各地で最初の大聖堂が建設されました。
当時の主要都市に司教座聖堂が整備され、それに伴って大聖堂が建築されました。
この時代は 「バシリカ式」、長方形で列柱のある様式が中心となっていました。
最古の大聖堂、ローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂もこの様式で建てられています。
ロマネスク様式(中世前期10〜12世紀)
中世前期に入り、ヨーロッパの封建社会が安定したため、巡礼が盛んになった時期です。
この頃、フランス、ドイツ、イタリア、スペインに多くの大聖堂が建設されました。
ロマネスク様式の特徴は、厚い石壁、小さな窓、半円アーチで、重厚感が感じられます。
ピサの斜塔が有名な広場に建つイタリアのピサ大聖堂が挙げられます。
ゴシック様式(中世盛期12〜16世紀)
ゴシック様式が導入された中世盛期が、大聖堂建築の最盛期でした。
この時代が、最も多く、最も壮大な大聖堂が建てられた時代であり、大聖堂建設の黄金時代と呼ばれます。
背景には、都市の成長、商業の発展、そして教会の権威が絶頂期を迎えたことがあります。
ゴシック様式の特徴は、左右対称、尖塔、ステンドグラス、アーチ構造による高い天井などで、代表例はノートルダム大聖堂、ケルン大聖堂などが挙げられます。
ルネサンス・バロック様式(近世16〜18世紀)
ゴシック大聖堂の完成・増改築が続く一方でルネサンス・バロック様式が生まれます。
新規に大量に建てられる時代ではなくなったものの、調和のとれた比例、ドームを特徴とした、豪華な装飾を持つ大聖堂もいくつも建てられました。
バチカン市国の、サン・ピエトロ大聖堂、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂なども、この様式です。
大聖堂観光の際の注意点・マナー
世界の文化遺産、大聖堂を訪れるというのは、どんな旅行にも追加できる素晴らしい感動体験です。
その魅力をお分かりいただけましたでしょうか?
いくつか、考慮すべき注意点がありますので、ぜひご確認ください。
訪れる際の注意点
基本的に、大聖堂はすべての人々に門戸を開く、というキリスト教的理念があるため、どのような年齢、人種、宗教の人でも、入場無料で入ることができます。
ただ、事前予約可能の場合があるため、ぜひ事前に確認をしてから訪れることをおすすめします。
入場無料でも、オンラインの事前チケットにより並ばずに入れる特典がある場合もあります。
また、展望フロアや、聖遺物のコーナーなど、事前予約が必要な場合も多々あります。
有料なケースもあります。ぜひ訪れる前に一度確認をして、より一層安心かつ有意義な時間をお過ごしください。
マナーについて
大聖堂の第一義存在意義は、キリスト教の礼拝、ミサなどを行う事です。
如何に芸術的観点からの訪問予定だとしても、すべての人々がそうであるとは限らないため、配慮が必要です。
一つ目、静かに行動する。お祈りをしている信者がいる可能性は常にあります。
なるべく声を抑える、走らない、撮影可能な場所でもフラッシュは焚かないなど、敬意を払い、行動しましょう。
二つ目、服装は最低限礼儀正しく。肌の露出はなるべく抑えられる格好をしていきましょう。
正装の必要はもちろんありませんが、短パンは避ける、肩を出している場合羽織るものを持っていく、など、少しの配慮で十分ですが、ぜひ意識してみてください。
三つ目、表示の確認をする。撮影は概ね許されていますが、場所によっては禁止の場合もあります。
また、立ち入り禁止区域がある場合もあります。観光客用にわかりやすい表示が多いので、見落とさないよう気をつけましょう。
単なる観光地ではなく、宗教的建造物なのだと意識して、敬意を払うということは、素晴らしいことだと思います。
宗教的建造物とは
キリスト教にとっての大聖堂は、日本にとってのお寺や神社のようなもの、というイメージです。
一時期、海外のユーチューバーが神社の中で驚くような動画を撮り、世界中から批判されるという悲しい事件がありました。
宗教観も含めた文化の違いは、残念なケースでこそ、露呈されます。お寺や神社で大声を出したら、驚いてしまうと思います。
どんなに綺麗なステンドグラスを前にしても、そこは神聖な場所。歓声を上げずに、荘厳な雰囲気を分かち合う事こそ、大聖堂を訪れる異議ではないでしょうか。
その神聖さこそ、宗教的建造物の醸し出す、素晴らしい歴史的財産なのです。ぜひご堪能ください。
まとめ
世界のいくつかの大聖堂を例として挙げ、大聖堂のそれぞれの魅力をまとめました!
その歴史的背景、芸術的個性により、大聖堂が人気の観光スポットであることは一目瞭然です。
旅行が決まったら、近隣の、またはちょっと足を延ばしていけるくらいの大聖堂もぜひチェックしてみてください!
歴史、芸術、宗教観、街との一体感など、文化遺産を体感できること請け合いです!
◇経歴
国際色豊かな環境で学び、その後ホテル業界、秘書、食品企業など様々な仕事を体験しました。
結婚・出産をきっかけに、英語を教える業界に飛び込み、現在は環境保護などのNPO法人で活動しつつ、親子から高校生、大人まで幅広く英語を教えています。
◇英語に関する資格
英検一級
TOEIC945
IELTS7.5
◇留学経験
ヨーロッパにてアメリカンスクール在学、スコットランドのエジンバラ大学に留学
◇◇海外渡航経験、渡航先での経験内容
ヨーロッパで10年ほど過ごし、諸国を旅行。最近始めてアメリカにNBA見に行きました!
◇◇自己紹介
高校まで10年間ほどヨーロッパで過ごした帰国子女です!大学ではエジンバラ大学へ留学。現在は子育ての傍ら英語講師となり日々英語の奥深さを痛感しています!