
「マレーシアのラマダン中に旅行はできるの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
マレーシアは人口の約6割がムスリムですが、残りの4割は非ムスリムの中華系やインド系の人々で、彼らは普段と変わらない生活を続けています。
そのため、旅行者も心配することなく観光を楽しむことができます。
とはいえ、ラマダン期間中は街全体に独特の雰囲気が漂い、現地の文化を肌で感じられる貴重な体験となるでしょう。
この記事では、ラマダン期間中のマレーシア旅行で押さえておきたい基本情報から現地でのマナー、断食明けのお祭り「ハリラヤ・プアサ」まで、安心して楽しめる情報をお伝えします。
- ラマダンとは?マレーシアにおける断食月の基礎知識
- ラマダン中の生活・旅行への影響
- ラマダン中でも楽しめる観光客向けの食事・過ごし方
- ラマダンのバザールとイフタール体験という魅力
- ラマダン中に気をつけたいマナーと注意点
- ラマダン後の祝祭「ハリラヤ・プアサ」も体験しよう
- まとめ
ラマダンとは?マレーシアにおける断食月の基礎知識
ラマダンとは、イスラム教で使われるヒジュラ暦の9番目の月の名前です。
厳密には月の名前を指しますが、現在では断食期間を表す意味で広く使われています。
この期間中、世界中のムスリム(イスラム教徒)が約1か月間にわたって日中の断食を行います。
ラマダンが重要な理由
なぜムスリムの人たちは1か月間も断食をするのでしょうか?
それは、イスラム教で守らなければならない5つの大きな決まりのひとつだからです。
この5つは「信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼」と呼ばれ、ラマダンの断食は健康な成人ムスリムにとって重要な宗教的義務となっています。
断食の深い意味
ラマダンの断食には特別な意味があります。
お金持ちの人も貧しい人も、みんな同じようにお腹を空かせることで、普段食べ物がない人の気持ちを理解し、「いつも食べ物があることは当たり前ではない」ということを学びます。
また、家族や友人、職場の仲間と一緒に同じ試練を体験することで、お互いの絆を深めるのです。この期間中は心身を清め、欲望を抑えて精神的な成長を目指す大切な時期でもあります。
マレーシアでのラマダン
マレーシアではムスリムの人が多く、その大部分がマレー系の人々です。
ラマダン期間中はマレー系の方が住む地域は特別な雰囲気に包まれます。
街中ではラマダンを祝う装飾が施され、夜になると断食明けの食事を楽しむ人々で賑わいます。
旅行者にとっても、マレーシアの宗教文化に触れることができる貴重な機会となるでしょう。
ラマダン中の生活・旅行への影響

先にも述べましたが、ラマダン期間中のマレーシアでは、ムスリムの人の生活リズムは変わりますが、その他の民族(中華系やインド系)は通常通りの生活を送っているため、社会全体に大きな影響が出ることはありません。
ただし、ムスリムの人が経営する店舗では営業時間の変更があるため、旅行者は注意が必要です。
ムスリムの特別な生活リズム
ラマダン期間中、ムスリムの人たちは日中は普段通りに仕事や学校に通いながらも、水一滴も口にせずに断食を続けます。
日没後には家族や友人と集まって「イフタール」と呼ばれる断食明けの食事を楽しみ、夜遅くまで過ごします。そして翌日の夜明け前には「サフール」という朝食を済ませてから、再び断食が始まります。
このような生活サイクルのため、多くのムスリムの人は普段より疲れやすく、日中は静かに過ごす傾向があります。
旅行者への影響とメリット
ラマダン期間中は、ムスリムの人の多くが旅行を控える傾向があります。
日中の断食や家族との時間を重視するため、観光や外食を楽しむには適さない時期と考えられているからです。
実際に、日本政府観光局の統計でも、ラマダン期間中はマレーシアを含むイスラム圏からの訪日客が減少することが報告されています。
しかし、この期間は逆に海外からマレーシアを訪れる旅行者にとってメリットもあります。
日中の街が普段より静かで落ち着いた雰囲気になったり、観光地が比較的空いていたりするからです。
夜になると一転して活気に満ち溢れ、特にラマダンバザールが開催される地域では、多くの人で賑わう光景を見ることができるでしょう。
ラマダン中でも楽しめる観光客向けの食事・過ごし方
ラマダン期間中にマレーシアを訪れる旅行者が特に気をつけなければならない過ごし方は基本的にありません。
マレーシアでは、ラマダン期間中でも、ホテル内のレストランは通常通り営業しており、中華系やインド系の飲食店も変わらずオープンしています。
また、ショッピングモール内のフードコートや国際的なファストフードチェーンも営業を続けているため、普段通りに食事や観光を楽しめます。
特におすすめなのが、多くのホテルで開催されるラマダン特別バイキングです。
この時期だけの豪華な料理が楽しめるだけでなく、マレーシア料理から国際料理まで様々な味を一度に体験できます。
ラマダン期間中は、多くの店舗でラマダンセールが開催されます。通常よりも大幅な割引が適用されるため、お得に買い物を楽しめます。
この時期にぜひ試していただきたいのが「デーツ」です。ナツメヤシの実であるデーツは、預言者ムハンマドが断食明けに最初に食べた食べ物として知られており、ラマダン期間中にスーパーでよく見かけるようになります。
ドライフルーツタイプは干し柿のようなねっとりした食感で栗のような甘さがあり、生のフレッシュなデーツはリンゴのような食感です。
安価なものから高級品まで様々な種類があるので、マレーシア文化を体験する意味でも一度試してみてはいかがでしょうか。
ラマダンのバザールとイフタール体験という魅力
ラマダンバザールは、ラマダン期間中だけに開催される特別な夜市です。
日没後にムスリムの人が断食明けの食事「イフタール」を楽しむために、様々な料理や飲み物を販売する屋台が立ち並びます。
マレーシア各地で開催されるこのバザールは、旅行者にとって現地の食文化や宗教的な習慣を体験できる絶好の機会となっています。
バザールで味わえる料理
ラマダンバザールでは、マレーシアの多彩な料理を特別な雰囲気の中で味わえます。
日没前後の時間帯がもっとも賑わい、ムスリムの人だけでなく観光客にも人気があります。
【おすすめの料理】
・ムルタバ: 薄い生地にひき肉や卵を包んだボリューム満点の料理
・オンデオンデ: ココナッツでまぶした緑色の伝統スイーツ
・ケロポック: エビや魚のすり身で作られたサクサクのクラッカー
・テプン・ペリタ: ココナッツミルクとパンダンリーフで作られた伝統的なプリン
屋台が立ち並び、調理の様子を見ながら出来立ての料理を楽しめるのも魅力です。
イフタールを楽しむ
日没後に断食を終えて最初に口にする食事のイフタールは、マレーシアでは「ブカプアサ」と呼ばれています。
イフタールでは、まず断食で疲れたお腹にやさしいデーツ(ナツメヤシ)やスイーツ、そして水を口にします。
これらの軽い食べ物で胃を慣らした後、礼拝を行ってから本格的な食事を始めるのが一般的な流れです。
ラマダン中に気をつけたいマナーと注意点
マレーシアでのラマダン期間中は、現地の文化を尊重した行動を心がけることが大切です。
ラマダン中は、控えめな服装を選ぶのがマナーです。特に、ムスリムの人の多いバザールを訪れる際は、肩や膝が見えない服装を心がけましょう。
また、断食月の期間中は、ムスリムの人の前で堂々と食べ物や飲み物を口にしないよう気をつけることも重要です。これは相手への思いやりを示す大切なマナーといえます。
飲食店の営業時間にも注意が必要です。地元の人向けのレストランは日中閉店するところが多く、観光客向けの店舗でも営業時間が変則的になることがあります。
通常より遅い時間に開店したり、夕方前に一度閉店したりする場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
公共施設では、夕方の断食明けの時間になると、ムスリムの人がブカプアサのために席を外すため、サービスに影響が出ることがあります。
これらの変化は現地の人々の信仰と文化の一部です。旅行者として理解し、余裕を持ったスケジュールで行動することが快適な滞在につながります。
ラマダン後の祝祭「ハリラヤ・プアサ」も体験しよう
ハリラヤ・プアサは、ラマダンの断食期間が終わることを祝うイスラム教の重要なお祭りです。
マレーシアのムスリムの人々にとっては、まさにお正月のような特別な日として親しまれています。
この時期の最大の特徴は「オープンハウス」です。家族や親戚、友人を自宅に招き、心のこもったおもてなしでハリラヤを一緒に祝います。
テーブルには自慢のマレー料理が並び、特にレンダン(スパイスで煮込んだ肉料理)やクトゥパ(ココナッツの葉で包んだご飯)といった伝統的な料理が振る舞われます。
ハリラヤクエと呼ばれる美しい伝統菓子も用意され、華やかな食卓を彩ります。
旅行者にとって特に魅力的なのは、公的機関が主催するオープンハウスに参加できることです。
政府関係者や各州の責任者が地域の広場などで開催するイベントは、新聞で詳細が発表され、国籍を問わず自由に参加できます。現地の伝統文化を間近で感じられる絶好のチャンスといえるでしょう。
オープンハウスに参加する時には「スラマ・ハリラヤ」という挨拶でお祝いの気持ちを伝えるのが習わしです。
さらに、子供がいたら、RM2〜5を緑色の袋に入れてお年玉(ドゥイラヤ)として渡します。この袋は街中の店舗で手軽に購入できます。
この特別な祝祭の時期にマレーシアを訪れれば、観光だけでは得られない地元の人々との温かいふれあいと、本物の文化体験が待っています。
まとめ
マレーシアのラマダンについてお伝えしました。
多民族国家のマレーシアでは、ラマダン期間中でも旅行者は安心して観光を楽しめます。
日中は静かな街が日没とともに活気づき、ラマダンバザールでは現地の料理と文化を体験できる絶好の機会となります。
現地の人々への配慮を忘れず、控えめな服装や飲食への気遣いを心がけることで、より充実した旅行となるでしょう。また、ハリラヤ・プアサの時期に訪れることができれば、地元の人々との温かい交流も期待できます。
ラマダン中のマレーシア旅行は、普段とは違った特別な体験ができる魅力的な時期となるでしょう。
◇経歴
日本の大手英会話スクール講師
オーストラリアで現地ツアーガイド
マレーシアの日本人学校で英会話講師
マレーシアの現地企業にて正社員勤務
◇留学経験
イギリス 1年 Wimbledon collegeなど
オーストラリア(ワーキングホリデー中) 1か月 Bond University
◇海外渡航経験、渡航先での経験内容
留学→アメリカ、イギリス、オーストラリア
旅行→イギリス、ヨーロッパの各国、アメリカ、オーストラリア、東南アジア各国など
仕事→オーストラリア、マレーシア
◇自己紹介
Webライターの大井にいなと申します。
独身時代に留学を経験し、国際結婚を機に多民族国家のマレーシアに住んでいます。
私の子供は生まれたときから複数の言語で育ち、オーストラリアの大学に留学して就職しました。
大人になってから英語を学び始めた自分との違いを実感しています。
自身の経験から、早期の言語習得の重要性や大人になってからの英語学習で必要なことなどを、できるだけわかりやすくお伝えしたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。