アメリカの多様な宗教事情を徹底解説!主な宗教や多文化社会での生活で注意するポイントも紹介

さまざまな宗教を信仰する人が暮らす、多文化社会のアメリカ。世界的に見ても宗教色が薄い日本では「自分は無宗教である」と考える方が多いのに対して、アメリカの宗教事情は実に多彩です。

本記事では、アメリカの宗教事情を徹底解説!アメリカで信仰されている宗教や増えつつある無宗教者についてだけでなく、アメリカで日常生活を送る上で宗教に関して注意すべきポイントも紹介します。

アメリカで生活する予定がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

アメリカの多様な宗教事情

さまざまなルーツを持つ人々が集まるアメリカでは、人々が信仰する宗教も多様です。

以下では、まずアメリカの多様な宗教事情について解説します。

アメリカ人の約64%がキリスト教を信仰

アメリカでは、約64%の国民がキリスト教を信仰しています。

熱心なクリスチャンが多く、他の国々から集まった人々がアメリカで新たなコミュニティを築いているのです。キリスト教を信仰すると答えた64%の方の宗派の割合は以下のとおりです。

・プロテスタント:41%
・カトリック:21%
・モルモン教:1%
・その他:1%

最大多数派のプロテスタントの中でも特に力を持っているのが、福音派(Evangelicals)。アメリカの政治や社会に大きな影響を与えています。

アメリカで信仰されるキリスト教以外の宗教

アメリカでは、キリスト教の他に以下の宗教も信仰されています。

ただし、どの宗教もキリスト教と比較すると非常に割合が少ないと言えるでしょう。

・ユダヤ教:2%
・イスラム教:1%
・ヒンドゥー教:1%
・仏教:1%
・その他:3%

世界的に信者が多いイスラム教も、アメリカでは少数派であることがわかります。

成人の約30%が無宗教者

現在アメリカではキリスト教の信者が急激に減少し、無宗教者の割合は成人の約30%を占めています。

宗教には関心がない」「宗教には属さない」と言う考えを持つ人々も増え続けています。

2011年に75%であったアメリカのキリスト教信者は、2021年には64%まで減少。

特に減少幅が大きいクリスチャンの宗派はプロテスタントであり、時代の変化とともに人々の考えが変わってきていると言えるでしょう。

アメリカで信仰されているキリスト教のさまざまな宗派

前の章で紹介したように、アメリカで信仰されているキリスト教は大きく分けて以下のとおりです。

・プロテスタント
・カトリック
・モルモン教

それぞれの宗派の特徴を詳しくみていきましょう。

プロテスタント

プロテスタントはアメリカ・キリスト教の中で最も信仰者数が多く、以下のようにさらに枝分かれしています。

分類 主な宗派
福音派 ・Baptist(バプテスト)
※特に南部バプテスト派が多い
・Pentecostal(ペンテコステ派)
・Presbyterian(長老派)
主流派 ・Methodist(メソジスト)
・Anglican/Episcopal(聖公会)
・Lutheran(ルター派)
・Presbyterian(長老派)
少数派 ・Amish(アーミッシュ)

プロテスタントの中でも保守層のことを指す福音派は聖書の福音書を重視しており、アメリカ国内の人口の4分の1を占める巨大宗派です。

宗教票が多いため、アメリカの政治・社会では福音派が大きな影響力を持っています。

元々福音派はアメリカ・プロテスタントの中では少数派でした。1976年の大統領選の際に福音派がジェームズ・カーターに組織票を投じたことで政治と距離が近づいたことから、1980年にロビー活動が本格化。それ以降、福音派は共和党保守政策の支持基盤となりました。

なお、かつて多数派だった主流派は福音派の台頭に伴い現在は勢力が小さくなっています。

ちなみに、歴代のアメリカ大統領の中で、ジョン・F・ケネディとジョー・バイデン以外はほとんどプロテスタントです。

一方、アメリカにはアーミッシュのような、アメリカ入植時の生活を続けるプロテスタントの宗派もあります。ドイツ系移民の宗団体であるアーミッシュは、農業をしながら近代以前の生活様式を守っており、プロテスタントの中でも特に保守的な一派だと言われています。

アーミッシュはオルドゥヌングと言う独自の戒律を持ち、快楽・娯楽・身だしなみ・教育などを厳しく制限します。

代表的な制限の例は、以下の通りです。

・交通手段は馬車であり自動車は使わない
・商用電源・ガスを使わない
・アーミッシュから離脱した家族は絶縁しなければいけない
・怒る・喧嘩をしてはいけない
・読書禁止
・讃美歌以外の歌を聞くことを禁止
・義務教育以上の高等教育を受けてはいけない
・離婚してはいけない
・派手な服を着る・化粧をしてはいけない

以上のとおり、同じプロテスタントであっても宗派によって、特徴がそれぞれ異なるのがわかります。

カトリック

カトリックはプロテスタントに次いで、アメリカで信仰されているキリスト教の宗派です。

全世界に13億人以上、アメリカには約7000万人の信者がおり、全アメリカ人の約22%がカトリック信者であると言われています。

ローマ教皇を教会のトップとしたピラミッド型の組織を持つ宗派であるカトリックですが、プロテスタントとカトリックでは、ローマ教皇の扱いが異なります。

プロテスタントでは人間は神様以外同じであると考える一方で、カトリックはローマ教皇は特別な存在であると考えます。また、カトリックでは日曜に教会に集まることをミサ、プロテスタントは礼拝と呼びます。

モルモン教

モルモン教はキリスト教から派生した宗教であり、宗教学上ではキリスト教系の新宗教に分類されます。

別名、末日聖徒イエス・キリスト教会とも呼ばれます。アメリカでは600万人以上がモルモン教を信仰。特に本拠地であるユタ州のソルトレイクシティは、住民の60%がモルモン教信者です。

場合によっては、モルモン教はプロテスタントの一派と考えることもあるようです。

モルモン教では、アルコール・コーヒー・お茶・紅茶・タバコの摂取が禁止されており、毎週日曜日は礼拝のために集まります。

アメリカで増加している無宗教者

2023年にアメリカで実施した調査では、約30%の人々が「信仰する宗教はない」と回答しました。2007年に実施された調査では16%だった無宗教者が、年々増えていることが分かります。

以下では、無宗教者の定義や宗教に対するスタンスについて解説します。

無宗教者の定義

無宗教者にアンケートを実施したところ、神の存在に対する考え方には以下のように違いがありました。

種類 割合 特徴
無神論者 約17% ・神は存在しないと考える人
不可知論者 約20% ・神がいるかどうかは人知では知り得ないと考える人
無関心者 約63% ・特に何もないと考える人

ピュー・リサーチによると、無神論者・不可知論者は高度な教育を受けた50歳未満の年齢層で、無関心者は平均的な成人よりも学歴が低い傾向がある50歳未満の年齢層に多いとのことです。

無宗教者の宗教に対するスタンス

無宗教者の多くは宗教に敵対的なのではなく、全ての事柄に科学的な説明があるべきだと考えています。

また、宗教に基づいた道徳意識ではなく、独自の道徳的な価値観を持つのが特徴です。

一方で、アメリカのクリスチャンの多くは、無宗教者の急激な増加によってアメリカの国民生活に何らかの影響が出るのではないかと考えているようです。

宗教に関して日々の生活で気をつけるべきこと

アメリカ生活では、以下で紹介する7つのポイントに注意しましょう。

相手の信仰を軽視しない姿勢を意識することが大切です。

ホストファミリーや友人が信仰する宗教を理解する

ホストファミリーや友人など日常で接する人の宗教を理解しましょう。

宗教によっては、食事・飲み物・行動に一定の制限があります。

例えば、ホストファミリーが信仰する宗教がある場合は、その宗教で禁じられている食品は食卓には出てきません。また、食事の前にお祈りの習慣がある家庭も多いでしょう。

第三者である日本人がお祈りを強制されることは稀ですが、お祈りのポーズを求められる可能性はあります。相手の宗教や考えを理解・尊重する姿勢を大切にしてください。

他の宗教を絶対に批判しない

自分が無宗教だからといって、他の宗教を批判してはいけません。

そもそも特定の宗教を信仰しない限り、その宗教について完璧に理解することはできません。

外から一部分・外側だけを見て相手の信仰対象を批判する行為は、相手に失礼なだけでなく、相手を傷つけたり、不快にさせたりするリスクがあります。

もちろん、他の宗教に対する批判はアメリカに関わらず日本でもすべきではありません。

特に親しい人の宗教について疑問があるのであれば、相手の信仰心を傷つけないように質問してみると良いでしょう。

宗教を怖がったり避けたりしない

宗教を過度に怖がったり、避けるような態度を取ったりしないようにしましょう。

宗教への関心が低い日本で暮らしていると、宗教は何だか怖いというイメージを持つ方も多いです。しかし、宗教は相手を陥れたり無理矢理信者にしたりするような怖いものではありません。信者は、各宗教のルールや教えに沿って生活をしているだけです。

宗教を無駄に怖がったり避けたりする必要はないことを、知っておいてください。

宗教的な行動に意見しない

宗教的な行動に対して、意見を述べるのはやめましょう。

お祈りや宗教独自の考え・ルールは、その宗教の中で生まれ信者が理解しているものなので、意見があったとしても部外者が口を出すべきではありません。

特にアメリカでは個人の自由は尊重されるべきであると考えられており、他人の行動を正そうとしたり変えさせようとしたりすることは、避けた方が良いでしょう。

親しい人の宗教上の食事ルールを知っておく

宗教によっては、口にできるものに厳しいルールがあるので、親しい人が宗教上食べられるものやそうでないもの、食事のマナーなどを知っておくことが重要です。

例えば、イスラム教では、不浄だと考えられている豚を口にしてはいけません。豚肉はもちろん、豚肉のエキスが入ったお菓子や調味料も同様に禁止されています。日本人は宗教的なルールに慣れていないことから、悪気なく豚肉エキスが入った食べ物をプレゼント・勧めてしまう可能性があります。

親しい相手が宗教上食べられないものは、把握しておきましょう。

宗教の勧誘には注意する

宗教を恐れる必要はないものの、宗教の勧誘には注意してください。

自分がその宗教に興味がある・信者になりたいと考えていないのに、「断りにくくて信者になってしまった」などのトラブルも少なくありません。特に、あまり知らない相手から親切にされた場合は、宗教への勧誘の可能性を警戒しましょう。

自分の宗教を説明できるようにしておく

相手が信仰する宗教について理解を深めるだけでなく、自分の宗教について深く知っておくことも重要です。

アメリカでは、何らかの宗教を信仰している人・無宗教の人の両方が宗教に関してしっかりとした意見を持っているケースが多いです。なんとなく無宗教、あるいは、親が〇〇教徒だからという理由では、相手と自分の信仰や考えを話し合うことは難しいでしょう。

いざ宗教に関する質問を受けた時には、英語で自分の意見を伝えられるように準備しておくと安心です。

まとめ

多様な人種や民族が生活しているアメリカには、さまざまな宗教が存在します。

相手が信仰する宗教を尊重するためには、最低限の知識を得ておきましょう。特にホームステイを予定している方は、ホームステイ先の家族の宗教を知っておくべきです。身近に関わる方の宗教に関心を持って理解しようとすることで、より現地の方と交流しやすくなります。

本記事が、アメリカの宗教について学ぶきっかけとなれば幸いです。

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