
海外旅行や留学を前に、スーツケースを購入する方も多いはず。
海外旅行用のスーツケースを選ぶ時はサイズやデザインに注目しがちですが、どのように鍵をかけるのかという点にも注目して選ぶのがおすすめです。
今回の記事では、海外旅行用のスーツケースでよく見るTSAロックの概要をはじめ、さまざまなロックの種類のメリットやデメリットを比較します。また、鍵をかけずにいるリスクや貴重品の管理術、訪問国や路線別の鍵の取り扱いルールなどを詳しく解説します。
海外渡航を控えている方は、ぜひご一読ください。
- TSAロックの基礎知識|仕組みとマークが持つ重要な意味
- スーツケースの鍵の種類と用途別メリット・デメリット比較
- 鍵をかけないリスクとTSA以外の実効的な安全対策
- 【国・路線別】鍵の取り扱い実務と国際的なルールの違い
- 安心・安全な海外旅行のための鍵と防犯のポイント
TSAロックの基礎知識|仕組みとマークが持つ重要な意味

海外旅行用のスーツケースの多くは「TSAロック」を採用しています。TSAロックとは、アメリカ合衆国運輸保安庁(TSA、Transportation Security Administration)によって認可された鍵という意味です。
TSA職員がすべてのTSAロックを開錠できる職員専用のマスターキーを持っているため、開披検査(スーツケースを開けて荷物を確認する検査)で鍵がかかっていても、ロックを破壊せずにスーツケースを開けることができます。
ここからはTSAロックについて、TSAの役割や、マスターキーで開錠できるメカニズム、TSAロックの対象国などを解説します。
TSAの役割と米国空港における手荷物検査の実務
TSAとは、「Transportation Security Administration」の略で、アメリカ合衆国運輸保安庁のことです。TSAは、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件を受け、航空安全強化のために同年11月19日に設立され、2003年に国土安全保障省(DHS)に移管されました。
TSAの設立前までは、空港での保安検査は民間の警備会社が行っていましたが、航空安全強化のためにTSAが設立されてから、連邦政府の責任と権限を持つTSA職員が保安検査を実施するようになりました。TSAの業務は、米国を出発する航空機に搭乗する乗客と手荷物の保安検査の実施と、テロリストや危険物の持ち込みを防ぐテロ対策です。
解錠のメカニズムと種類別の開錠フロー(ダイヤル・キー式)
アメリカの空港から出発する国内外のフライトで荷物を預けた場合(受託手荷物)、TSA職員によってバッグやスーツケースを開けて中身を調べる開披検査が行われることがあります。その際にバッグやスーツケースに鍵がかかっている場合、ロックを破壊して検査が行われます。
そのため、預け荷物の鍵はかけないのが原則ですが、例外としてTSA認証マークが付いたTSAロックならば施錠が可能です。
TSAロックはダイヤル式とキー式(鍵式)のものがあります。ダイヤル式のTSAロックは、設定した3桁の暗証番号にダイヤルを合わせ、ロックボタンを押すか、スライドバーをスライドさせることで解錠できます。キー式の場合は、鍵を鍵穴に差し込み、回して引き抜くことで解錠できます。
TSA職員がTSAロックを解錠する際は、一般の人は持っていない職員専用のマスターキーを使います。
TSAマークの意味と対象国・非対応地域の確認
TSA認定のTSAロックには、TSAマークが付いています。TSAマークは、赤い菱形のマークです。TSA対象国はハワイやアラスカも含めたアメリカ合衆国全域で、グアムやサイパンなどのアメリカの領土も対象です。
また、アメリカ以外でも、75か国・750以上の空港で、TSAロックが受け入れられています。
アジア太平洋:オーストラリア、カンボジア、中国、インドネシア、日本、ニュージーランド、カザフスタン、フィリピン、韓国、スリランカ、ウズベキスタン、ベトナム
アメリカ大陸:アルバ、バハマ、バミューダ、ブラジル、カナダ、ケイマン諸島、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、オランダ領カリブ諸島(キュラソーなど)、パナマ、ペルー、アメリカ合衆国、ウルグアイ
ヨーロッパ:アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、オランダ、アイスランド、イタリア、コソボ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、モンテネグロ、北マケドニア、ノルウェー、ルーマニア、セルビア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国
中東・アフリカ:バーレーン、カーボベルデ、ガーナ、イスラエル、コートジボワール、ケニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、セネガル、トーゴ、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦
スーツケースの鍵の種類と用途別メリット・デメリット比較
スーツケースの鍵にはいろいろな種類があります。ここからは、鍵の種類とメリットやデメリットを詳しく解説します。
内蔵型TSAロックの特徴と紛失・暗証番号に関する注意点
内蔵型のTSAロックは、スーツケース本体のフレーム部分やファスナー部分に組み込まれたTSA認証のロックです。暗証番号を設定する3桁のダイヤル式のものが多いですが、キー式のものもあります。
暗証番号は忘れないように紙に書いて保存したり、スマホ内に記録しておいたりするのがおすすめです。
外付け南京錠・ワイヤー・ケーブルロックの種類と利点
外付け南京錠、ワイヤー、ケーブルロックなどは、ロック機能の付いていないバッグを預ける時におすすめです。ボストンバッグや大型のリュックなど、ファスナー開きの部分に必要に応じて取り付けられます。
デメリットは、解錠した時にバッグやリュックから外れてしまうため紛失しやすいことと、ファスナー部分をハサミで切るなどすると、簡単に開けられてしまうことです。
ベルト・電子ロック・ファスナー固定タイプの活用術
電子ロック付きベルトは、スーツケースの外周に巻き付けるベルトにTSAロックが付いたタイプです。ベルトは輸送中の衝撃などでスーツケースが開いてしまうのを防ぎますが、さらにロックを付けることで盗難リスクを軽減できます。TSAロックの付いていない古いスーツケースを使われている方におすすめです。
ファスナー固定タイプは、スーツケースのファスナー同士をケーブルで固定します。TSAロック内蔵のスーツケースでも、ロックが付いていない外ポケットの施錠などに役立ちます。
鍵・ロック選びで失敗しないための重要チェック項目
スーツケース用の鍵やロックを選ぶ時は、以下の点に注意しましょう。
・TSA認定か
・スーツケース内蔵か外付けか
・ダイヤル式かキー式か
・ケーブルやワイヤーの長さは十分か
また、耐久性や使い勝手の良さも気になるポイントです。店舗で実際の商品を試せる場合は操作性をチェックしてみましょう。オンラインで購入する場合はレビューを参考にするのがおすすめです。
鍵をかけないリスクとTSA以外の実効的な安全対策
「どうせ検査されるのだから、わざわざ鍵をかけなくても良いのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、スーツケースに鍵をかけないと、さまざまなリスクがあります。
無施錠で発生するトラブル事例と補償問題のリスク
日本の空港では考えられないことですが、海外の空港では空港職員による預け荷物から貴重品を抜き取る盗難被害が報告されています。無施錠のまま荷物を預けた場合、到着空港で受け取るまでの間に、勝手にスーツケースやバッグを開けられてしまう恐れがあります。
実際に、フロリダ州マイアミ国際空港で2010年~14年までの5年間で空港職員による預け荷物の窃盗件数が1000件以上あったことが、大きなニュースになりました。
また、万が一盗難にあって航空会社や海外旅行保険から補償を受けようとした場合、無施錠だった場合は盗難を証明するのが難しいというリスクがあります。
貴重品の管理術|機内持ち込み推奨品と預け荷物のルール
飛行機に搭乗する際、貴重品をどう管理するかが重要です。原則として、貴重品・壊れやすいものは、紛失や破損時の補償対象外となるため、預け荷物ではなく機内持ち込み荷物に入れ、自身で管理するのがおすすめです。
貴重品:
現金、クレジットカード、有価証券、宝石、貴金属、高級ブランド品、美術骨董品など
壊れやすいもの:
時計、カメラ、パソコン、タブレット、ガラス製品、陶磁器、楽器など
施錠以外の防犯術|ベルト・スマートタグの活用
施錠以外でスーツケースを盗難から守る方法として、ベルト・タグの活用があげられます。ベルトは衝撃によってスーツケースが開いてしまうのを防ぐために使用されますが、スーツケースを開けにくくすることによって荷物を抜き取られるリスクを下げる効果もあります。
スマートタグは、GPSトラッカーやAirTagなどで、スーツケースに入れておくと紛失防止や追跡に役立ちます。
コストを抑えて防犯性を高めるレンタルや安価な外付けロック
TSAロックが内蔵されていない古いスーツケース、ボストンバッグ、大型リュックサックなどを預け入れる場合、外付けロックを取り付けるのがおすすめです。外付けロックは1個500円~1,000円程度で購入できるので、新しくTSAロック内蔵のスーツケースを購入するよりも、コストを抑えられます。
また、スーツケースを持っておらず一度きりで他に使う予定がないという場合は、スーツケースを購入するよりもレンタルする方が経済的です。レンタルサービスで借りられるスーツケースは、TSAロックやTSAスーツケースベルト付きの最新のものが多いので、ぜひ検討してみてください。
【国・路線別】鍵の取り扱い実務と国際的なルールの違い
スーツケースの鍵の施錠について、国や路線でどのようなルールの違いがあるのでしょうか。詳しく解説していきます。
アメリカ路線の検査ルール|非対応ロックの場合の対応
アメリカ路線でスーツケースを預け入れる場合、TSAロックの場合は施錠が可能です。TSA職員がマスターキーを使ってロックを壊さずに開錠でき荷物を検査します。検査後はロックがかかった状態で戻ってくるので安心です。
TSA非対応のロックがかかったスーツケースの場合、開披検査で鍵やスーツケースを破壊される可能性があります。その場合は、スーツケースやロックが破損しても補償は一切受けられません。
アメリカ路線を利用する場合は、TSAロック内蔵のスーツケースで施錠するか、鍵をかけずに預け入れることが推奨されます。
ヨーロッパおよび国際線における検査事情と鍵の取り扱い
ヨーロッパやアジアなど、アメリカ路線以外でも、多くの国でTSAロックを使用できます。TSAロックは75か国で750以上の空港で受け入れられており、保安職員がマスターキーを使ってTSAロックの解錠・施錠を行うことができます。
アメリカ以外への渡航では、盗難防止のためにスーツケースに鍵をかけることが推奨されています。TSAロック以外のロックや南京錠でも問題ないため、必ず鍵をかけておきましょう。
航空会社・空港ごとの対応差と対象外地域への注意
預け荷物のルールは航空会社や路線によって異なります。また、開披検査の基準も国や空港によって異なります。海外旅行に出かける前には、利用する航空会社や訪問先の国のルールをしっかり確認しておくことが大切です。
渡航前に必ず確認すべき受託手荷物の安全対策ルール
渡航前の荷造りでは、預け入れ荷物に入れるべきものと機内持ち込み荷物に入れるべきものを確認しておくことが大切です。ご利用の航空会社の公式サイトや政府の公式サイトをチェックして、安全対策ルールを確認しましょう。
・ハサミやカッターなど刃物類
・スポーツ用品や護身用具
・リチウム電池使用のモバイルバッテリー
・電子タバコ
・喫煙用ライターや安全マッチ(個数制限あり)
・高圧ガス(ライター用の補充ガス、キャンプ用ガスなど)
・引火性液体(オイルライター用燃料、ペンキ、塗料など)
・火薬類(花火、弾薬など)
・可燃性物質(マッチなど)
・毒物類(殺虫剤、農薬など)
・腐食性物質(液体バッテリー、水銀など)
・放射性物質
安心・安全な海外旅行のための鍵と防犯のポイント
海外の空港ではスーツケースから荷物が抜き取られてしまう盗難被害が発生することがあります。スーツケースを預け入れる時には施錠することが大切ですが、アメリカへ渡航する場合はTSAロックを使用することが必須です。TSA非対応の鍵を使うと、検査の時にロックやスーツケースを破壊されてしまう可能性があるので注意しましょう。
アメリカ以外の国へ渡航する際も、多くの国や空港でTSAロックに対応しています。スーツケースを新しく購入するという場合は、TSAロック内蔵のものを選ぶのが安心でしょう。
防犯のポイントをしっかり押さえておけば、安心して海外旅行を楽しめます!
◇経歴
東京出身。アメリカの大学を卒業後に現地企業にて12年勤務。子育てを機に退職し、現在はフリーライターをしています。
◇英語に関する資格
英検準1級
TOEIC875点
◇留学経験
アメリカ高校交換留学、アメリカの4年制大学卒
◇海外渡航経験、渡航先での経験内容
アメリカに住んで20数年!アメリカ以外にもカナダ、イタリア、フランス、スペイン、モロッコ、メキシコなど旅行経験あり。
◇自己紹介
高校での交換留学を機に、アメリカの大学へ進学、そのままアメリカで就職し、いつの間にかアメリカ在住20数年。趣味はガーデニングと美術館巡り。