多くの場面で登場する「主張」
ちょっと堅めのイメージなのに、ビジネスシーンのみならず日常生活の中でも意外とよく登場する言葉の一つが「主張」です。
国語辞典・辞書で「主張」を引くと、「ある人が持ち続けている強い意見や考え」「持論」「自分の意見を言い張ること」などと解説されています。いろいろな場面で幅広く使える便利な日本語でもあります。
さて、この「主張」を英語ではどのように表現すればいいのでしょうか。
今回は「主張」や「主張する」の英語表現について多くの例文を交えながら、意味や使い方を解説・説明していきたいと思います。
主張 英語表現
実は、「主張」や「主張する」の英語表現として使える英単語は複数あります。どれを使ってもいい場合もあれば、それぞれの英単語の持つニュアンスを考えながら使い分けをした方がいい場合もあります。
また、特に論文などの場合、引用などで「Aは〜と主張する」「Bは〜と主張する」「Cは〜と主張する」などと記述するケースが少なくなく、英語ではこうした場合に同じ単語ばかり使うと評価が下がってしまう恐れもあります。ですので、日本語では同じ「主張する」であっても、複数の英単語での表現方法を知っているに越したことはありません。
では、どのような英単語があり、使い方やニュアンスがどのように違うのか。順に見ていきたいと思います。
Insist
「主張する」を表現する英単語の中でも、特に「強く言い張る」「強く要望する」というニュアンスが強い動詞が「insist」です。発音をあえてカタカナで書くならば「インスィスト」。後ろの「スィス」の部分にアクセントがあります。
「insist + that節」や「insist on + 名詞」の形でよく使われます。
The lawyer insisted that his client was innocent despite the evidence.
弁護士は証拠があるにもかかわらず依頼人は無罪だと主張した。
The lawyer insisted on his client’s innocence despite the evidence.
弁護士は証拠があるにもかかわらず依頼人の無罪を主張した。
次のように、「〜すべきであると強く主張する・要望する」という場合、that節内の動詞は「should」を伴うか、原形で使われます。
She insisted that he come to the meeting on time.
彼女は彼が時間通りに会議に来るように強く主張した。
上の例では、「he」の後の動詞が「come」というように原形になっています。
次のような慣用的なフレーズもあります。
I insist.
ぜひそうさせてください。/それはゆずれません。
Claim
発音をあえてカタカナで書くならば「クレイム」という感じです。動詞だと「〜と主張する」、名詞だと「主張」「請求」「要求」といった意味を持ちます。
「苦情」などの意味を表す日本語の「クレーム」はあくまで日本語なので注意しましょう。「苦情」「クレーム」を英語にするならば、「claim」ではなく「complaint」です。
「claim」は「主張する」「主張」という意味で幅広く使われる単語です。中でも自分の所有権を主張する文脈で多く見られます。その場合は、当然の権利としての要求というニュアンスがあります。
Our claims were ignored.
我々の主張は無視された。
He claimed that he was not there then.
彼はその時そこにいなかったと主張した。
Dr. Iwasaki claims, “The result is correct.”
岩崎博士は「結果は正しい」と主張している。
The boy claimed the throne.
その少年は王位継承を主張した。
I believe his claim that he was not there then.
私は、その時そこにいなかったという彼の主張を信じる。
Argue
発音をあえてカタカナで書くならば「アーギュー」という感じです。頭の「アー」にアクセントがあります。「argue」は「言い争う」「口論する」「論争する」といった意味でよく使われます。
これに加えて、「argue + that節」の形で、「〜と主張する」という意味でも用いられます。この場合は、「言い争う」といったニュアンスは特にありません。特に論文や報告書などでは「claim」と同様に、「〜が〜と主張する」という客観的かつ冷静なニュアンスでよく「argue」が使われます。
They argued that the decision was unfair and should be reconsidered.
彼らは、その決定は不公平であり、再考されるべきだと主張した。
She argued that increasing the budget would benefit the entire department.
彼女は、予算を増額すれば部門全体に利益がもたらされると主張した。
以下のように、「argue for ~」で「〜に賛成の主張をする」、「argue against ~」で「〜に反対の主張をする」といった意味にもなります。
I argued for him.
私は彼に賛成の主張をした。
No one argued against the boss.
上司の意見に反対の主張をする者はいなかった。
Maintain
「maintain」は「〜を維持する」「〜を保つ」「〜を整備する」といった意味でよく使われる動詞ですが、「maintain + that節」などの形で「〜と主張する」という意味にもなります。発音は、後半にアクセントを置いて「メインテイン」です。
「主張する」という意味の「maintain」には、自分の立場を守ろうというニュアンスがありますが、「claim」や「argue」などと同様、論文などで登場する場合は客観的・冷静に「〜が〜と主張する」と単に述べるケースが多いです。
My mother maintained that my sister was wrong.
母は、姉が間違っていると主張した。
He maintained his innocence at the court.
彼は法廷で無実を主張した。
Sakai maintains that the result supports the hypothesis.
酒井氏は、この結果が仮説を裏付けるものだと主張している。
Assert
「assert」は「強く主張する」「断言する」「明言する」といった意味の動詞です。後ろに名詞や「that節」を伴う形で使われます。発音は「アサート」で、後ろの「サート」の部分にアクセントがあります。
She asserted her right to speak freely during the meeting.
彼女は会議中に自由に発言する権利を主張した。
The company asserted that its new product was the most innovative on the market.
同社は、自社の新製品が市場で最も革新的であると主張した。
Contend
主に論文などで使われる堅めの言葉です。発音は「コンテンド」。アクセントは「テンド」の部分です。「contend + that節」などの形で「〜と主張する」という意味になります。
The scientists contended that the new medicine had no effects on the virus.
科学者たちは、この新薬はウイルスに効果がないと主張した。
Persist
発音はあえてカタカナで書くと「パースィスト」。後ろの「スィスト」の部分にアクセントがあります。
「固執する」「持続する」といった意味の自動詞としてよく使われますが、「persist + 直接引用文」の形で、他動詞として「〜と主張し続ける」「言い続ける」といった意味にもなります。繰り返すニュアンスがあるのがポイントです。
“You can’t enter,” the guard persisted.
「入ることはできません」と警備員は主張し続けた。
Advocate
「主張する」「提唱する」「推奨する」「擁護する」といった意味を持つのが動詞「advocate」。発音は「アドヴァケイト」といった感じです。最初の「ア」にアクセントがあります。ある考えを守り支えている、というのがコアイメージです。
目的語に、名詞、動名詞、that節などが来ます。アメリカ英語では「advocate for ~」で「〜を主張する」という意味にもなります。
The organization advocates reducing carbon emissions to combat climate change.
この組織は、気候変動と闘うために炭素排出量の削減を主張している。
She advocates for better mental health services in schools.
彼女は学校でのメンタルヘルスサービスの改善を主張している。
なお、「advocate」は名詞にもなり、「主張者」「支持者」「提唱者」といった意味になります。
He is an advocate of gun control.
彼は銃の規制を主張している。
議論する 英語表現
今回のメインテーマは「主張」ですが、関連する表現、似た表現についても少しだけみていきましょう。まずは「議論する」です。
一言で「議論する」といっても、その内容や状況によって使うべき英単語がかなり変わるケースもあります。代表的な単語を見てみましょう。
Discuss
複数の人で話し合うシーンでよく使われるのが「discuss」ですね。名詞だと「discussion(議論)」になります。幅広く使われる単語です。
We have to discuss many things at today’s meeting.
今日の会議では多くのことを議論しなければなりません。
「〜について議論する」という場合、つい「discuss about ~」などとしたくなりますが、「discuss」は他動詞なので「about」など前置詞は不要です。
Argue
「主張する」のところで出てきた「argue」には「議論する」という意味もあります。「論争する」「言い争う」といった少し激しいシチュエーションがイメージされる場合もあります。
また、「〜について議論する」という場合、こちらは「argue about ~」というように「about」などの前置詞が必要です。
They argued for hours about the best approach to solve the problem.
彼らはその問題を解決するための最善のアプローチについて何時間も議論した。
Debate
「ディベート」という日本語にもなっている「debate」。「討論する」「議論する」といった意味です。比較的公式なイベントなどで、異なる立場から異なる意見を述べ合うスタイルの議論・討論の際によく使われます。動詞および名詞として使われます。
The students debated the pros and cons of social media in class.
学生たちは授業でSNSの長所と短所について議論した。
The debate over the new policy lasted for several hours.
新しい政策に関する議論は数時間続いた。
対話 英語表現
「主張」に関連する表現の2つ目は「対話」です。自分の意見を主張することも大事ですが、議論を意味のあるものにするためには相手との対話も重要ですよね。
Dialog
「対話」という意味を表すやや堅めの英単語が「dialog」です。イギリス英語では「dialogue」とつづります。
A dialog between cultures can lead to greater mutual understanding.
文化間の対話は相互理解を深めることにつながります。
Conversation
「dialog」よりもカジュアルな「対話」を意味する表現が「conversation」です。一般的に「会話」と訳される場合も多いです。
All they need is a deeper conversation for a ceasefire.
彼らに必要なのは停戦に向けたより深い対話だけだ。
Talk
より簡単な英単語「talk」でも「対話」という意味は十分表せます。動詞として使っても、名詞として使ってもOKです。
We should talk more often to maintain a strong relationship.
強い関係を維持するために、我々はもっと頻繁に対話するべきです。
The talk between the CEO and the employees helped to address their concerns.
CEOと従業員との対話が懸案の解決に役立った。
主張 英語 まとめ
いかがでしたか。今回は「主張」や「主張する」の英語表現について、多くの英語例文を交えながら解説・説明しました。加えて、「議論する」「対話」といった、「主張」に関連する表現もみました。
「主張する」という日本語に対応する英単語がたくさんあることがおわかりいただけたかと思います。今回ご紹介した以外にもまだまだありますが、最初から全部覚えようとすると大変ですので、まずは3つくらいを自分のレパートリーにするというのはいかがでしょうか。例えば「insist」「claim」「argue」などから始めてみてください。
また、「say」という簡単な英単語でも、文脈によっては「主張する」という日本語に当てはめられる場合もあります。柔軟な構えで、日本語にあまりとらわれずに自分なりの英文を作っていくという姿勢が大事ですし、それに慣れていくと、英語での表現力の幅がグンと広がりますよ。
それではまた。
◇経歴
児童英語講師
オンライン英会話講師
NC英語アドバイザー
英語学習ライター
元大学教員
◇資格
TESOL/TEC(CANADA)
中学校教諭二級免許状(英語)
◇留学経験
アメリカ・サンディエゴに語学留学(2カ月)の経験あり
その後、オーストラリア・シドニーに大学院留学(2年)の経験もあり
◇海外渡航経験
25歳で初めて、短期間の語学留学をきっかけに本格的に英語の勉強を開始しました。
雑誌の編集・ライティング、テレビCMの企画・撮影等などの仕事が長く、英語を使っての海外取材や撮影経験も多く経験しています。また海外で日系新聞社の副編集長をしていたこともあります。
◇自己紹介
「英語学習に終わりはない」「継続は力なり」を実感し、50代半ばから毎日英語の勉強を続けて2000日近くが過ぎました。
「楽しく学ぶ!」をモットーに、僭越ながら私の異文化経験や英語の知識などをブログに織り交ぜながら、執筆することを心がけています!ネイティブキャンプのオンライン講師もしています。初心者・初級者限定ですが、ぜひ一緒に学びを続けましょう。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.