
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」
悲劇の王妃マリー・アントワネットのコメントとして全世界に知られているこのセリフです。
これは誤報と言われていますが、それでもこの時からすでに、かのマリー・アントワネットをも虜にしていたお菓子が、日常的に
フランスにはあったと言うことを象徴しているセリフです。
中世ヨーロッパの豪奢なイメージそのままのフランス宮廷から、現代に至るまで、フランスのスイーツは私たちを魅了してやみません。
今回はそのスイーツの一覧、味の特徴やフランスの発祥地域でのおすすめ店を徹底解説します。
フランススイーツの魅力と特徴

フランスのお菓子と聞いて何を思い浮かべますか?カラフルなマカロン?シュークリームやエクレア?フルーツのタルト?薄いエレガントなクッキー?魅惑的なカヌレ?様々なお菓子を思い浮かべることができるのではないでしょうか?
フランスのお菓子は、その歴史と伝統、芸術性、味、すべてにおいて世界中をリードする存在です。
ではその特徴を見てみましょう。
歴史と伝統
今でこそフランスの日常に溶け込んでいるスイーツですが、元々はとても高級なものでした。
一般市民はとても入手できませんでしたが、修道院が寄付された小麦粉やドライフルーツなどを使い、お菓子を作り始めたことが始まりと言われています。
その後、ヨーロッパの十字軍遠征に伴い、砂糖の流通が始まったため様々なお菓子が生まれました。
王家の婚姻の際にシェフやパティシエを自国から伴ってその文化が根差していき、ヨーロッパ各地からチョコレートなど製菓に適した材料や、製法が伝わってきて、ますます発展しました。
フランス革命により、貴族や王族にのみ提供されていたお菓子が一般市民にも手が届くものとなり、現在に至るまでの発展を遂げています。
科学であり芸術
「料理は芸術であり、パティスリーは科学」という名言を残したのは、フランスのフルコース料理を体系づけた近代フランス料理の父、オーギュスト・エスコフィエです。
そこに見られるように、お菓子作りはその見た目と味のみならず、温度、湿度、化学反応など、細心の注意を払い生み出される芸術作品です。
さらに、それを生みだすパティシエ達は、社会的に非常に高く評価されています。
フランスは美食の国ですが、料理だけではなくデザートやお菓子まで、その感性は浸透しており、食べる側もそして提供する側も、非常に高い志で向き合っていると言えるでしょう。
それがまた、多くの素晴らしいパティシエ、そしてお菓子を生みだしている土壌となっています。
魅力的である理由
味、見た目、伝統、すべてがフランスのスイーツを魅力的にしていますが、さらなる要素として、フランスのお菓子は地域性が高い点が挙げられます。
フランスは、その食文化において、テロワール(地域性)を大事にします。
チーズやワインと聞くと、納得ですが、その地域でしか取れない材料(バターやブドウなど)によってできる味や香りを、とても大事にし、さらにそれに価値づけをする文化が根付いています。
その文化はもちろんスイーツにも表れます。
その場所でしか作れない味からできた、スイーツという事です。
それが、さらにフランスのスイーツを魅力的にしていると言って過言ではないでしょう!
地方ごとの代表的なスイーツ|味の特徴・発祥地・おすすめ店
では、そのテロワールがどのようにお菓子作りに根付いているのか、解説していきます。
地域別に、根差しているお菓子、その味わい、さらにはその地域のおすすめのお店をご紹介します。
グラン・エスト地方
グラン・エスト地方はフランスの北東部、ベルギー、ルクセンブルグ、ドイツと国境を接している地域です。
シャンパンの有名なシャンパーニュ地方もここに含まれます。
食文化はドイツからの影響を色濃く引き継いでいます。
この地域で有名なお菓子は、クグロフです。
クグロフは、レーズンの入った王冠のような形をした独特のクグロフ型という陶器で焼かれる焼き菓子です。
中が空洞で、上にはアーモンドが飾られ、周りには粉糖が振るわれています。
オーストリア、ポーランドからドイツ経由で入ってきたお菓子で、マリー・アントワネットも馴染みがあり好んでいたという事から、彼女が言っていた「お菓子」はクグロフであったという説があります。
クグロフは、この地域でしか生まれえなかったお菓子なのです。
この地域は、夏は暑く冬は寒いため、酵母を使った発酵生地が発達しています。
クグロフは発酵菓子であり、この地域で取れるバター、乳製品をふんだんに使うお菓子です。
また、アルザス地方は陶器の街です。
クグロフ型が陶器で出来ているのも、この地域ならではです。
おすすめ店舗情報:Biscottes Sante
アルザス地方のストラスブールにある古き良き伝統的なパン屋兼お菓子屋さん
日本でも人気の高いマドレーヌも、この地域発祥のお菓子となりますが、クグロフのように地域に根差したスイーツというよりは、フランス全域で人気のお菓子となります。
ノルマンディー/ブルターニュ地方
フランスの北西地域のノルマンディー、ブルターニュ地方は、海と面しており海の幸に恵まれています。
ノルマンディー地方は「フランスの農場」と呼ばれるほど酪農が盛んで、乳製品が豊富な上、りんごの果樹園なども多く、リンゴの醸造酒や蒸留酒も人気です。
このため、バターがふんだんに使われるサブレやブリオッシュ、クイニー・アマン、などが有名です。
また、タルト・ノルマンドなどリンゴを使ったお菓子も非常に好まれています。
特にクイニー・アマンは、バターと砂糖を使った贅沢なお菓子であり、人気が高いものです。
おすすめ店舗情報:TY VORN
ブルターニュ地方のレンヌ駅内にもある、ブルターニュ愛を感じられる地元民にも人気のパン屋さん
また、ブルターニュ地方出身のお菓子としては、ガレットと呼ばれる厚みがあるサブレも人気です。
こちらも贅沢にバターを使ったとてもリッチなスイーツです。
ロワール地方
フランスの真ん中に位置し、温暖な気候、広大な地域、食材豊かな森や川を有するロワール地方で一番有名なお菓子は、タルト・タタンです。
リンゴの産地でも有名なこの地域のソローニュ発祥のこのお菓子は、リンゴをキャラメリゼして、タルトをかぶせて、焼きあがったらひっくり返す、という斬新なお菓子です。オープンパイと言われます。
フランスの姉妹が経営するホテルで、先にタルトを入れるはずがリンゴを入れてしまったら、驚きのおいしさだった、という逸話が残っています。
日本でも歌の歌詞や、小説の題名に使われたりしているため、耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
おすすめ店舗情報:Boulangerie Dupuy
ロワール地方にある地域に根差した家庭的パン屋さん
他にもアーモンドをふんだんに使ったピティヴィエという花を模したパイも人気があり、こちらの地方出身です。
リンゴだけでなく洋梨も生産されているため、リンゴや洋梨を使ったタルト、パイなども人気です。
ヌーヴェル・アキテーヌ地方
ワインの二大名産地の一つ、ボルドーを有するヌーヴェル・アキテーヌ地方はフランスの南西に位置し、西を大西洋、南も東も山に囲まれている地域です。
このボルドーが発祥の地となるお菓子は、世界的に有名で、日本でも人気のカヌレ、正式名称はカヌレ・ド・ボルドー、です。
もともとはボルドーの修道院で生まれたこのカヌレは、ワイン産業で余った卵黄を有効活用するために作られたと言われています。
外はカリっと香ばしく、中はしっとりもっちりと香り高い、円形型の漆黒の魅惑的なお菓子です。
この外側と内側の触感のコントラストが人気となっており、バニラとラム酒の豊潤な香りが漂うこのお菓子は、その外見も相まって、大人のお菓子のイメージがついています。
おすすめ店舗情報:La Toque Cuivrée
ボルドーを拠点とした伝統的なカヌレの専門店
カヌレ以外にも、日本でもおなじみのトリュフ、トリュフ・オ・ショコラや、マロングラッセも、ここボルドー発祥のスイーツです。
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方
フランスの南に位置し、南は地中海、そしてイタリアと国境を接している地方です。
この地域発祥のおすすめのお菓子としてぜひお伝えしたいのは、フリュイ・コンフィと呼ばれるフルーツの砂糖漬けです。
フランスでは、果物をそのまま食べるのはもちろんですが、お菓子として使われることがとても多くあります。
プロヴァンス地方は、地中海気候で、砂糖漬けに向く果物を育てやすい気候です。
さらに、地形的に小規模な果樹園を運営しやすく、多種多様な果物を安定して生産できるテロワールが整っているのです。
そのため、メロン、アプリコット、イチジク、柑橘など、たくさんのフリュイ・コンフィが生み出されています。
おすすめ店舗情報:Confiserie Saint-Denis
プロヴァンス地方にある砂糖菓子の専門店
また、伝統的砂糖菓子としてカリソンも人気です。
イタリアから入ってきたアーモンド風味のお菓子です。
小さな舟形と言われる丸みのあるひし形で、サクサクしたクッキーのような土台に、マジパンというアーモンドと果物の風味のする中身、表面に砂糖がけしてある、コントラストを楽しめるお菓子です。
日本にはあまり馴染みがない味で好みは分かれますが、ぜひ試してみてください。
イル・ド・フランス地方
フランスの首都、花の都パリを有するフランスの中心街です。
マカロン、フィナンシェ、シュークリーム、エクレア、モンブランなどフランスを代表するお菓子は、この地方のパティシエ達によって磨かれ、今の形に進化したと言えます。
数限りなくある素晴らしいスイーツですが、特にこの地域に根差しているお菓子としてご紹介したいのは、パリ・ブレストとオペラです。
パリ・ブレストはシュー生地が丸く円になっており、間にプラリネクリームがたっぷり入っているゴージャスなお菓子です。
これは、有名な自転車レースを記念して考案され、その後定着したお菓子で、ユニークな形は自転車のタイヤを模しています。
オペラは、コントラストのきれいな見目麗しい長方形のケーキです。
チョコレートとコーヒーのハーモニーを楽しめるこの一品は、音楽から着想を得た、またはその美しさがパリ・オペラ座のようだと名付けられたケーキで、今では世界中で愛されています。
パリではパティシエが、まさに今この瞬間もトップパティシエを目指しながら切磋琢磨しています。
そしてまた新しいスイーツが生み出されていくのかもしれません。
おすすめ店舗情報:Cedric Grolet Opera
世界的有名なパティシエ、セドリック・グロレの初めての店舗
まとめ
フランスのスイーツは、歴史も伝統も引き継ぎながら、地域により全く違うお菓子が発展していることを、ご理解いただけましたでしょうか。
今も、それをさらに美味しく、美しく、喜びと驚きを与えてくれる瞬間を目指して、パティシエ達が新しく生み出していっているところなのでしょう。
フランスを訪れ、その地域の伝統菓子を味わいながら、その新しい歴史の一部となりたいものです。
ぜひ、フランス旅行の際には、お気に入りの一品を見つけてください。
◇経歴
国際色豊かな環境で学び、その後ホテル業界、秘書、食品企業など様々な仕事を体験しました。
結婚・出産をきっかけに、英語を教える業界に飛び込み、現在は環境保護などのNPO法人で活動しつつ、親子から高校生、大人まで幅広く英語を教えています。
◇英語に関する資格
英検一級
TOEIC945
IELTS7.5
◇留学経験
ヨーロッパにてアメリカンスクール在学、スコットランドのエジンバラ大学に留学
◇◇海外渡航経験、渡航先での経験内容
ヨーロッパで10年ほど過ごし、諸国を旅行。最近始めてアメリカにNBA見に行きました!
◇◇自己紹介
高校まで10年間ほどヨーロッパで過ごした帰国子女です!大学ではエジンバラ大学へ留学。現在は子育ての傍ら英語講師となり日々英語の奥深さを痛感しています!