
フィリピン料理の
「カレカレ」 (Kare-kare) というものをご存知でしょうか?
多くの人が「カレカレ」は「カレー」だと思ってしまうでしょうが、実は、カレーではないのです。
このフィリピン料理の「カレカレ」を紐解いていくと、歴史や文化などから多彩な影響を受けてきたフィリピンの食文化まで見えてきます。
フィリピン料理「カレカレ」は本当にカレーではないのか?この問いを通じて、フィリピンの奥深い食の世界を一緒に旅してみましょう。
フィリピンの食文化
歴史や地理の恩恵を受け、フィリピンの食文化は実に幅広い種類があります。
そのフィリピンの豊かな食文化についてみていきましょう。
フィリピン料理の歴史
フィリピン料理を歴史的に見ていくと、先住民のシンプルな調理法のものから始まり、中国の商人が食材と一緒に調理法も伝えた中華風料理(春巻きや麺など)があります。
また、300年にわたるスペイン統治の時代に持ち込まれた、スペインやメキシコの食材を使ったとうもろこしや、アボガド、唐辛子など、現在のフィリピン料理にお馴染みの食材もあります。
その後、約50年のアメリカによる統治時代には、英語がフィリピンの公用語になると共に、アメリカの食材やアメリカの食文化も持ち込まれ、ハンバーガーやサンドイッチ、ケーキなども広がってきました。
また、フィリピンは、島が7641ある国のため、魚介類の料理も多いのが特徴です。
ロブスターや蟹はもちろんのこと、ラプラプ (Lapu‑lapu) は、ハタ科(グルーパー)の高級魚で、フィリピンで好まれる代表的なシーフードとなっています。
そして、トロピカルな気候に恵まれたフィリピンは、トロピカルフルーツも豊富です。
このように、様々な国々から食材や調理法がフィリピンに持ち込まれ、その後にフィリピン独自のアレンジを加えて発展していきました。
フィリピン料理の特徴
フィリピン料理は、日本と同じお米を主食としていますが、フィリピンのお米は、パラパラとした食感が特徴です。
お醤油を中心に使うお料理も多く、お米によく合うため、日本人にとっても親しみやすい料理が多いです。
鶏肉や豚肉を使った料理も多く、特にチキン料理は現地でとても人気です。
フィリピン料理の大きな特徴は、酸味、甘味、塩味が作り出す「リナムナム」と呼ばれる旨みと言われています。
例えば、酸っぱいマンゴーに塩や発酵調味料を合わせたり、甘いデザートに塩気のあるチーズを添えたりするのが、フィリピン流の味の楽しみ方です。
この独特な味のバランスを支えるのが、以下の主要な4つの調味料です。
・スーカ(酢)
サトウキビやヤシの花の蜜など、亜熱帯の食材が原料です。
透明なものから色の濃いものまで様々あり、料理に独特の酸味を加えます。
・パティス(魚醤)
カタクチイワシを発酵・熟成させた魚醤で、フィリピン料理に豊かな旨味と塩味をもたらします。
・トヨ(醤油)
大豆と塩のみで作られ、日本の醤油よりも大豆の風味が濃厚なのが特徴です。
・バゴーン(発酵調味料)
魚やアミエビから作られるペースト状の発酵調味料で、強烈な旨味と独特の風味があります。
さらに、フィリピン料理に欠かせないのが、「サウサワン」と呼ばれるディップソースです。
酢、醤油、玉ねぎなどが主原料で、塩気とほのかな甘みが特徴で、上記のバゴーンもサウサワンの一つとして使われます。
特に揚げ物料理には必ずセットで付いてきて、フィリピンの人々はこれを加えて、好みの味に調節しながら食事を楽しんでいます。
また、フィリピンでは炒め物や揚げ物など、油を使った料理も非常に人気です。
「シシグ」や「チキンフライ」はその代表的なメニューです。
アジアの亜熱帯地域では、一般的に甘い味付けが好まれており、フィリピン料理のソースにも甘さがあります。
主食は「カニン」と呼ばれるお米ですが、スペイン語の「パン」と呼ばれるパンも広く食べられています。
フィリピン料理「カレカレ」とは
フィリピン料理のカレカレ (Kare-kare) というものがあります。
この「カレカレ」というその響きから、多くの人が日本の『カレー』を連想しがちですが、実は、シチューによく似た料理で、ナス、青梗菜、いんげんなどの野菜と牛肉を、ピーナッツソースで煮込んだものです。
地域によっては、トライプ(牛の胃袋)や豚足、シーフードを使うこともあるようです。
味を想像すると、ピーナッツバターを使うことから、甘そう!と思う方が多いかもしれませんが、実は、甘さは控えめで、スープにはコクがしっかりとあります。
ごまだれに似た味という声もあります。
カレカレは、塩気が少ないため、カレカレを食べるときには、バゴオン・アラマン(Bagoong Alamang)と呼ばれる発酵させた小エビのペーストを添えます。
このエビのペーストが、ピーナッツソースのまろやかさを引き立てます。
フィリピン料理「カレカレ」の由来
フィリピン料理のカレカレ (Kare-kare) の由来は諸説あるそうですが、マレー語で煮込み料理を指す「カリ(kari)」が由来だと考えられています。
もともと東南アジアでは、マレーシアやインドネシアを中心に、ココナッツミルクやスパイスを使った“カリ料理”が広く食べられてきました。
チキンや魚をココナッツミルクで煮込むマイルドな料理が代表的です。
フィリピンもこれらの国々と古くから交流があったため、その影響を受けたと考えられます。
そして、辛さを取り除いたフィリピン独自の煮込み料理として、代わりにピーナッツソースを使った「カレカレ」が誕生したとみられています。
フィリピン料理「カレカレ」はいつ食べる?
フィリピン料理のカレカレ(Kare-kare)はとても手間のかかる料理です。
牛すじなどを煮込むことや、大皿料理として振る舞うことから、昔は半日ほどかかったといわれています。
そのため、フィリピン料理のカレカレ(Kare-kare)は、普段の料理ではなく、お祭りや誕生日、結婚式などのおめでたい日にいただく料理となりました。
フィリピンに「カレー」はある?
フィリピンで「カレカレ」と呼ばれるものはカレーではなくシチュー的な料理ということがわかりましたが、フィリピンに「カレー」はないのでしょうか?実はフィリピンにもカレーはあります。
フィリピンの「カレー」はどんなもの?
フィリピンで一般的に食べられているカレーの一つに、チキンカレーがあります。
このカレーは、インドやタイのカレーのようにスパイスを加えて作るものではなく、市販のカレー粉を使って作られることが主流です。
フィリピンのチキンカレーは、インドやタイに比べてそれほど辛くありません。
また、フィリピンのチキンカレーは、タイカレーに似て、ココナッツミルクを使います。
インドのチキンカレーと比べると、とてもクリーミーな味わいです。
また、ジャガイモやニンジンなどが入っているところがちょっぴり日本にも似ています。
カレー粉を使う点も日本に似ていますね。
フィリピンのカレーは、ココナッツミルクやスパイスを使う点で、マレー圏の「カリ(kari)」と共通点が多く、また、材料の点では日本とも共通点があります。
その他のフィリピン定番料理
フィリピン料理で有名なものを以下にまとめてみました。
豊富な種類のフィリピン料理をカテゴリー別にまとめています。
ご飯と合うおかず系
フィリピンの主食であるお米(カニン)と合わせて、酸味、甘味、塩味のバランスを楽しめます。
・アドボ (Adobo):フィリピンの国民的料理。
鶏肉や豚肉を酢、醤油、ニンニク、コショウで煮込んだ、甘酸っぱくて香ばしい一品。
・レチョン (Lechon):特別な日のご馳走の豚の丸焼き。
皮はパリパリ、肉はジューシーで、
・シシグ (Sisig):豚の頬肉や耳などを細かく刻み、玉ねぎや唐辛子と一緒に鉄板で炒めた、ビールにぴったりのストリートフード。
・ブラロ (Bulalo):牛骨を長い時間煮込んだ、肉と骨髄の旨味が凝縮された滋養たっぷりのスープ。体が温まります。
・ピナクベット (Pinakbet):カボチャ、ナス、オクラなどの野菜を豚肉や発酵調味料(バゴーン)と共に煮込んだ栄養たっぷりでヘルシーな一品。
・シニガン (Sinigang):酸味が特徴のフィリピンを代表するスープ。
タマリンドの酸味が効いていて、肉(豚肉、牛肉、魚介類など)や豊富な野菜が入ってさっぱりしている。ちょっとクセが強いかも?
・トシーノ (Tocino):豚肉を甘じょっぱくマリネした、フィリピン風の甘いベーコン。
朝食の定番で、ご飯や目玉焼きと一緒に食べられます。
・トルタン・タロン (Tortang Talong):焼いたナスを潰し、溶き卵と混ぜて焼いたオムレツのような料理。家庭料理の定番です。
中華を楽しみたい麺系
フィリピンにも様々な麺料理があります。
・パンシット・カントン (Pancit Canton):フィリピン風焼きそば。
中華麺を肉や野菜と一緒に醤油ベースで炒めた酸味の強い味です。
・パンシット・ビーホン (Pancit Bihon):ビーフンを使った炒め麺。
パンシット・カントンと並び、人気の高い麺料理です。
手軽にパクッ!スナック系
おやつや小腹が空いた時にぴったりな、フィリピンでは大人気の揚げ物やパン。
・ルンピア (Lumpia):フィリピン風揚げ春巻き。
中にはひき肉や野菜がたっぷり詰まっており、サクサクとした食感。
・トロン (Turon):バナナを春巻きの皮で包んで揚げたスイーツ。
外はカリカリ、中のバナナはとろける甘さで、屋台でも定番です。
・パンデサル (Pandesal):フィリピンのロールパン。
朝食にコーヒーと一緒に楽しみます。
・タホ (Taho):温かい豆腐に黒蜜と小粒のタピオカをかけたストリートフード。
デザート系
南国フィリピンならではのデザートも豊富です。
・ハロハロ (Halo-Halo):タガログ語で「ごちゃまぜ」という意味で、かき氷の上に様々なフルーツ、豆、ゼリー、アイスクリームなどをトッピングした、フィリピンで1番有名なデザート。
・レチェフラン (Leche Flan):濃厚な卵黄とコンデンスミルクで作られたカスタードプリン。お祝いの席にも登場します。
・ビコ (Biko):もち米をココナッツミルクとブラウンシュガーで炊き込み、ココナッツバターをかけた伝統的な甘いお菓子。
お祝いでも食べられます。
フィリピン1推しファストフード店
「ジョリビー (Jollibee)」:フィリピンで圧倒的な人気を誇る国民的ファストフードチェーン。
フライドチキン「チキンジョイ」やスパゲッティなど、フィリピン独自のメニューが楽しめます。
手軽に現地の味を体験できます。
フィリピンの食事マナー
フィリピンの食事マナーについても、歴史的な背景からフィリピン独自の形になっています。
それぞれみていきましょう。
フィリピン流のテーブルマナー
フィリピンでは、料理は大皿料理で出されることが一般的です。
昔は他のアジアの地域と同じく手で食べていたようですが、現在では、左手でフォーク、右手でスプーンを持って食べています。
そして、家族みんなで、大皿に乗ったお料理をいただくのがフィリピンスタイルになりました。
レストランでも、スプーンとフォークが用意されるのが一般的です。
ナイフが必要な場合には、スプーンを使って一口サイズに切り分けます。
また、フィリピンでは、食事中は左手を膝の上に置きテーブルの下に隠します。
左手をテーブルの上に置くと失礼と認識されるからです。
また、食事中に音を立てるのはNGとされています。
麺やスープでも静かに食べます。
音を立てないようにする点は日本と同じですが、日本とは異なり、麺やスープも音を立てずに静かに食します。
さらに、フィリピンでは、食後には、お皿の食べ物を食べきらず、少し残すのが良いとされています。
これは、食事に招いてくれた人に対して「まだ食べ足りない」という印象を与えないための配慮だそうです。
レストランで食べきれない場合は、残った料理をテイクアウトするのも一般的な習慣です。
また、キリスト教徒が多いフィリピンでは、食事の前にお祈りをするのが一般的です。
フィリピン人の食事の回数
フィリピン人の食生活は、その回数の多さも他の国と違っています。
日本では「1日3食」が基本ですが、フィリピンでは「お腹が空いたら食べる」という考え方から、1日4〜5食食べる人もいます。
「メリエンダ (Meriyenda)」と呼ばれる間食は、スペイン統治時代に持ち込まれた習慣で、休憩時間などに家族や友人、職場の仲間と雑談をしながら軽食を取るのが当たり前になっています。
このメリエンダは、小学校でも一般的な習慣です。
午前中には10時頃に、また午後の授業後などにも軽食を取る時間が設けられており、『お腹が空いたら食べる』という食文化が幼い頃から根付いています。
まとめ
カレカレは、その名前が日本の「カレー」を連想させるかもしれませんが、実際にはフィリピン独自のシチューに似た煮込み料理です。
マレー語で煮込み料理を意味する「カリ(kari)」が起源と言われ、東南アジアではマレーシアやインドネシアを中心に、ココナッツミルクやスパイスを用いたマイルドな「カリ料理」が広く親しまれています。
フィリピンでは、「カリ」の辛さを取り除き、ピーナッツソースを使用したフィリピンならではの煮込み料理「カレカレ」が誕生しました。
外国の食文化を取り入れながらも、フィリピンが独自の食材や調理法で、とびきりの伝統料理カレカレを作りあげました。
カレカレだけではなくフィリピン料理には、国の歴史や文化が凝縮されています。
次にフィリピン料理を食べる時は、ぜひ、フィリピン料理の奥深さを体験してみてくださいね!
英検2級
◇海外渡航経験
渡航先での経験内容(仕事、旅行など) 子供の頃、父が海外赴任。休暇は父の元で過ごす。夫の海外赴任に帯同。12年海外で暮らす。その間様々な国に旅行。海外で2人の子供を出産。子供達が現地校、インターナショナルスクールに在籍中に、独学で学んだ英語で保護者ボランティアやイベントに参加。
◇自己紹介
3人の子供を持つ母です。子供の成長を通して様々な国の方に触れ、豊かな経験を重ねてきました。英語を話せるようになると、世界がどんどん広がります。皆さんの世界も、ネイティブキャンプの力を借りて広がりますように!