大学生活の途中で休学し、海外に飛び出す「休学留学」。
語学力の向上や異文化体験など多くの魅力がある一方で、卒業の遅れや費用の負担といった不安要素もつきまといます。「留学したいけど、休学してまで行くべきか?」「後悔することはないのか?」と悩む学生も少なくありません。
この記事では、休学留学の代表的なメリット・デメリットを整理しつつ、実際に後悔しないためのポイントや、成功させるための準備・心構えについても詳しくご紹介します。
休学留学とは
休学留学とは、大学生が在籍校の学籍を保持したまま一定期間「休学」扱いにして、その間に海外の大学や語学学校などに通う形の留学スタイルです。
この方法を取る学生は、日本の大学での卒業要件に直接関わらない形で海外経験を積むことができます。
つまり、単位認定などを目的とした「交換留学」や「認定留学」とは異なり、留学中に取得した単位が日本の大学で認められないケースが多いという点が特徴です。
そのため、自分の学年が1年遅れる可能性があるものの、自由度が高く、自主的な学びや挑戦を重視した留学スタイルとも言えます。
休学留学のメリット
1. 時間に縛られない自由な学びが可能
休学留学の最大の特長は、「卒業のための単位取得」という制約から一時的に解放される点です。これは、学業という枠組みにとらわれず、自分のペースで学びや挑戦を設計できるという意味でもあります。
例えば、語学習得だけでなく、現地でボランティア活動に参加したり、スタートアップ企業でのインターンシップにチャレンジしたりと、個人の関心や将来像に沿った経験ができます。
2. 目的に応じた柔軟なカリキュラム設定が可能
交換留学などの制度型留学では、提携大学・所定の科目の履修が求められるのに対し、休学留学では自分で進学先、学習内容、期間を決定できます。
3. キャリアに直結する経験を積める
履歴書に「〇〇大学を休学して○○に留学」と書けること自体、企業に対して強い印象を与える要素になりますが、それ以上に重要なのは、その期間に何を学び、何を得たかです。
4. 自立心と行動力が身につく
休学留学は、計画立案から渡航手続き、現地での生活やトラブル対応まで、すべて自分で判断し行動することが求められます。これは一種の「社会人予行演習」のようなもので、単なる留学とは違い、環境を自力で切り開く力が自然と養われます。
帰国後、「何でも自分でできるようになった」「予想外の出来事にも柔軟に対処できるようになった」と感じる学生は少なくありません。
5. 視野が広がり、将来の進路選択が明確になる
海外での生活や学びを通じて、自分が本当にやりたいことや、自国との価値観の違いを肌で感じる機会が得られます。
これは、単なる旅行では得られない、生活者としてのリアルな視点です。また、「海外就職や大学院進学を目指す」など、キャリアに関する選択肢が広がる傾向があります。
休学留学のデメリット
1. 卒業のタイミングが遅れる可能性が高い
休学留学は文字通り「休学」扱いとなるため、その期間は日本の大学での単位取得ができません。多くの場合、1学期~1年の休学が必要となり、その分卒業時期が後ろ倒しになります。
これは、学年が同期よりも1年遅れてしまうことを意味し、就職活動や進学準備のスケジュールにも影響を及ぼします。特に周囲が卒業・内定といった節目を迎える中、自分だけが後れを取ることに心理的なプレッシャーを感じるケースも見受けられます。
2. 学費以外の出費がかさむ
休学期間中は、日本の大学に対する授業料の一部(もしくは休学費)が発生する場合があります。それに加えて、渡航費、海外での学費、現地での生活費、保険代、ビザ申請料など、多くの費用が自己負担となります。
また、交換留学のように大学間協定に基づく支援がないことも多いため、トータルコストが高額になりがちです。奨学金の対象外となるケースもあるため、事前に資金計画をしっかり立てる必要があります。
3. 取得した単位が認定されないことがある
休学留学では、海外で修得した単位を日本の大学に持ち帰って卒業要件に組み込むことは基本的に難しいです。これは、「認定留学」や「交換留学」との大きな違いです。
そのため、専門科目などを現地で学んだとしても、卒業に必要な単位とは別枠の扱いになってしまい、結果として「学びは深まったが、卒業には貢献しなかった」ということも起こり得ます。
4. 留学中の生活・学習はすべて自己管理が必要
休学留学は基本的に個人の自由裁量で行われるため、大学側からのサポート体制が手薄になりがちです。トラブルが起きたときの相談先が限られていたり、孤独感を抱きやすかったりする点は大きなリスクです。
さらに、誰もスケジュール管理や学習の進行を指導してくれない環境において、「自己規律」や「モチベーションの維持」ができないと、成果が得られずに終わるという事態にもつながります。
5. 再適応の難しさ(帰国後のギャップ)
海外で得た自由な環境や価値観に慣れすぎると、帰国後の学生生活に対して違和感を覚えることがあります。授業の進め方、学生の雰囲気、時間の使い方など、何気ない部分にも「カルチャーギャップ」を感じるようになります。
また、長期間休学していたことで、友人関係が希薄になったり、就活や卒業研究の情報から遅れを取ったりするケースもあります。これは「逆カルチャーショック」とも呼ばれ、意外と見落とされがちなポイントです。
休学留学で後悔している人は少ない?
休学留学を経験した人の多くは、その時間を「自分にとって大きな意味があった」と振り返る傾向があります。語学力の向上だけでなく、異文化の中での生活を通じて自立心や柔軟な思考力を身につけることができたと感じる人が多数を占めています。
こうした体験は、単なる旅行や短期プログラムでは得られにくい「人生の視野を広げる機会」となっており、休学という形で時間を確保できたことに意味を感じている人が多いのです。そのため、「行かなければよかった」と深く後悔する人は、全体の中では少数派といえます。
それでも後悔につながるケースとは
一方で、休学留学がすべての人にとって成功体験になるとは限りません。一定数ではあるものの、「思っていたほど得るものがなかった」と振り返る人も存在します。共通して見られるのは、留学前に明確な目標や計画を持たずに出発したケースです。
たとえば、
また、現地での生活費や学費が想定以上にかかり、「経済的な負担が精神的なストレスになった」という声もあります。さらに、「留学経験が就職活動で思ったほど評価されなかった」と感じる人もいますが、その場合も共通して「経験をどう語るか」という準備が不足していたケースが目立ちます。
このように、休学留学の成果は個人の取り組み方によって大きく左右されるため、「行けば自動的に何か得られる」という考え方はリスクが高いといえるでしょう。
休学留学で後悔しないためのコツ
休学留学を成功させるためには、何よりも出発前の準備が重要です。
その中でも特に意識すべきなのが、「なぜ行くのか」を自分自身で明確にすることです。
周囲の雰囲気や「とりあえず海外に行けば何か変わる」という曖昧な期待感だけで動くと、現地で目標を見失いやすく、結果的に中身のない時間を過ごしてしまう可能性があります。
そこで有効なのが、自分なりのゴールを具体的に設定することです。
たとえば:
など、できる限り“行動に落とし込める目標”にしておくと、留学中も軸がブレにくくなります。また、実際の生活は想像よりも地道な場面が多く、語学の壁や孤独感、トラブルにも直面します。そうした「理想と現実のギャップ」に対処するためには、事前に情報収集をし、心構えを作っておくことが欠かせません。
「その国の文化・治安・教育制度」「語学学校や大学の授業の内容」「生活費や滞在費の目安」などをしっかり把握し、自分の留学生活を明確にイメージできる状態にしておくことが、後悔を防ぐ第一歩です。
留学中も「行動の記録」と「定期的な振り返り」を
留学を意味ある経験にするには、現地での過ごし方にも工夫が求められます。ただ受け身で過ごしていると、気づけば数か月があっという間に過ぎてしまうことも珍しくありません。そのため、日々の行動を記録し、定期的に自分の状態を振り返る習慣を持つことが大切です。
例えば、週に1回「今週やったこと・感じたこと・課題に感じたこと」をノートやメモアプリにまとめるだけでも、自分の成長や課題を見える形で確認できます。また、現地で出会った人との会話や、印象に残った出来事を言語化しておくことで、帰国後の就職活動や卒業論文などにも応用しやすくなります。
さらに、「自分一人でなんとかしよう」と抱え込まずに、現地の留学生コミュニティやオンライン相談窓口を活用することも後悔を防ぐポイントです。孤独や不安は放っておくと悪化しやすいため、小さなストレスを早めに言語化して整理する力が、メンタル面の安定にもつながります。
休学留学を上手く就活でアピールする方法
休学留学という経験は、他の学生との差別化ポイントになります。
ただし、「海外に行った」という事実だけではアピールになりません。企業が見ているのは「どんな課題に直面し、それをどう乗り越え、何を得たか」というプロセスと成長です。
そこで重要なのが、「体験を論理的に言語化すること」と「志望企業との接点を明確にすること」です。
1. 「なぜ休学してまで留学したのか」を明確にする
まず企業は、「なぜそのタイミングで、休学という選択をしてまで海外に行ったのか?」という動機の部分に注目します。「語学を伸ばしたかったから」だけでは弱く、もう一歩深掘りが必要です。
・例:
「国際的な環境で働くことを視野に入れた時、自分の語学力と異文化理解力の不足を実感し、今のままでは社会で通用しないと感じた。その課題を克服するために、大学の在学中に意図的に環境を変え、自分を鍛える場として休学留学を選んだ。」
このように、「自分なりの課題認識 → 解決の手段としての休学留学」という構造で語ることで、行動に一貫性が出て、説得力が増します。
2. 留学中の行動や成果を「エピソード」で具体化する
ただ「英語力が上がりました」「成長しました」と言っても、抽象的すぎて評価されません。面接官がイメージしやすいように、具体的な行動とその結果をセットで伝える必要があります。
・コツは「STAR法」:
Situation(状況):どんな環境だったか
Task(課題):何を求められていたのか
Action(行動):自分は何をしたのか
Result(結果):その結果どうなったか
・例:
「現地のディスカッション型授業で、意見を求められる場面が多かった。しかし最初はうまく伝えられず悔しい思いをした。そこで毎日5分間の英語日記をつけ、現地学生との会話も自分から仕掛けるようにした結果、2か月後には授業中に積極的に発言できるようになった。」
このように語ることで、成長のプロセスが伝わりやすくなり、単なる“経験の羅列”にならずに済みます。
3. 留学経験を志望動機や職種にリンクさせる
経験を語るだけでは、企業にとっては「面白い話」で終わってしまう可能性があります。重要なのは、その経験が自分の将来の働き方や価値観にどう影響したかを明確にし、それを企業の業務内容とつなげることです。
・例:
「異なるバックグラウンドの人と意見を交わす中で、多様性を尊重することの重要性を実感しました。この経験を活かし、御社のグローバルチームの一員として、多国籍のメンバーと協力しながら成果を出せる人材になりたいと考えています。」
このように、自分の成長を企業のニーズに結びつけて話すことで、ただの留学経験が企業にとっても価値あるスキルや資質として伝わります。
4. 数値・成果で伝えると説得力アップ
可能であれば、経験を数値や成果で裏付けると、より客観性が高まります。
・例:
「TOEICスコアが650から835に上がった」
「留学生向けの学生イベントを30人規模で企画・運営した」
「海外インターン先で、SNS運用に関わりフォロワー数を20%増加させた」
まとめ
休学留学は、大学を一時的に休学して海外で学ぶ柔軟なスタイルの留学です。
自分の関心に合わせた学びや異文化体験を通じて、語学力や自立心、国際的な視野を育むことができます。
一方で、卒業の遅れや費用負担、孤独感といったリスクも伴います。成功させるには、目的を明確にし、現地での経験を記録・言語化することが重要です。
また、その体験を就職活動で活かすために、課題と成長を論理的に伝える準備をしっかりと行いましょう。