海外に移住する・長期留学をするなどの理由で、手続きが必要となる 住民票。
この住民票を抜くことを
「海外転出」と言い、長期的に日本から離れて海外で暮らす場合には海外転出手続きが必要です。
しかし、 日本に帰国した後に再度 住民票を国内に戻せるのか不安を感じる方もいるでしょう。
今回の記事では、住所不定にならないために知っておくべき海外転出に関する情報を分かりやすくまとめました。
海外転出届を出さないとどうなる?
海外転出届をお住まいの市区町村に提出すると、住民基本台帳から住民票が除票されます。
海外転出届を出す必要がある基準は市区町村により異なりますが、一般的には『一年以上海外に暮らす予定である』時には、海外転出届を提出するべきだと考えられているようです。
海外転出届を提出するべき期間の基準については、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
海外転出届を出さないと住民税の支払い義務が生じる
海外転出届を出さずに住民票を残したまま出国すると、日本に暮らしていなくても住民税の支払い義務が発生します。
住民税は、市町村民税と道府県民税を合わせた税金の総称で、個人住民税または法人住民税のどちらかを支払わなければいけません。
個人住民税は、毎年1月1日時点で自治体の住民票が除票されている・12ヶ月以上住民票を戻さない2つの条件をクリアすることで、支払い不要になります。
住民税の負担額は前年度の収入により異なり、多くの方は毎月1万円弱〜になるため、年単位で考えると重い負担だと言えるでしょう。
海外転出手続きをして海外に渡航し何年も住民票を戻さなければ、長期的に住民税を支払わずに済みます。
ただし、後半の章で説明する住民票を抜くデメリットも知っておいてください。
海外転出届の出し方と必要な持ち物
海外転出届は実際に出国をする日の2週間前から市役所に提出できます。
海外転出手続きに必要な持ち物は、以下を参考にしてください。
・マイナンバーカード
・健康保険証
・印鑑
・年金手帳
必要な持ち物・手続き内容は自治体によって変わるため、事前に確認しておきましょう。
渡航先では在留届を提出するべき
在留届は、外務省が海外にいる日本人の実態を把握する・海外で日本人が関係する事故や事件が起こった時に安否を確認する際に欠かせない資料として活用されます。
その他にも、以下のような役割を持つため、渡航先の国の大使館または総領事館に在留届を提出しましょう。
・在外選挙人名簿登録申請などの領事サービスを受けるために必要
・事件の発生状況・注意喚起をメールで周知してもらえる
・小中学生向けの教科書配布サービスの連絡を受け取れる
外務省では、海外に住所を定めて3ヶ月以上滞在する場合には、在留届を提出するように義務付けています。
また、海外に3ヶ月未満の滞在する予定がある方には、海外安全情報無料配信サービス「たびレジ」の登録をお勧めします。
海外で自分の身を守るために、必要な情報が受け取れる環境を用意しておきましょう。
住民票を復活させるには
海外から帰国して住民票を復活させる手続きは難しくありません。
住所不定にならないためにも、帰国後は可能な限り早くお住まいの各市役所で手続きを済ませてください。
転入届を出す時に知っておくべきポイント
海外転出届を出して海外に暮らしていた方が日本に帰国し、転入届(住民移動届)を提出する際には、転入から14日以内に手続きをする必要があります。
提出書類は市区町村により異なりますが、入国日を確認可能なスタンプが押されたパスポートが求められるケースが多いです。
その他にも、同時に年金加入手続きも実施することから、年金手帳も用意しましょう。
罰則やデメリットは?
国外転出届を出さないことで、罰則を受ける可能性はあるのでしょうか?
また、国外転出届を出すメリット・デメリットについても説明します。
国外転出届を出さなくても罰則を受けることはない
国外転出届の提出の有無は本人に任されており、提出の有無により何らかの罰則を受けることはありません。
しかし、小中学生の子供がいるご家庭が住民票を日本に残したまま海外に暮らすと、国内の小中学校に通学できないことで「就学の義務」に違反します。
場合によっては教育委員会から督促が届き、10万円以下の罰金を命じられる可能性があるでしょう。
国外転出届を出すと国民年金の加入が任意になる
住民票を除票すると、国民年金の支払いが任意になります。
日本国内に暮らす20歳以上60歳未満の方は、全員国民年金または厚生年金に加入しなければいけませんが、国外に暮らす方には加入義務がないのです。
「国民年金を支払わなくて済む」というポイントは、支払負担が減るというメリットであり、受け取れる年金の額が減るというデメリットでもあるでしょう。
また、国民年金には老後に受け取れる老齢年金以外に以下のような年金も含まれています。
・自分が怪我や病気で障害者認定を受けた場合:障害年金
・自分が亡くなった遺族に対して給付される:遺族年金
国外転出手続きをした上で国民年金を支払い続けたいと考えている方は、住民票の除票とともに国民年金の任意加入手続きも済ませる必要があります。
令和6年度の国民年金支払額は月額16,980円であり、毎年見直されます。
国民年金の任意加入については、慎重に検討するべきでしょう。
国外転出届を出すと国民健康保険は強制脱退になる
国外転出届を出して住民票がなくなると、国民健康保険は強制脱退になり、希望しても加入できません。
国民健康保険は怪我・病気などで病院に行った時の医療費をカバーする制度です。
具体的には、小学校入学後から70歳未満の方は医療費を3割負担で済ませられます。
国民健康保険に入っていない状態で病院に行けば、これまで支払っていた額の3倍以上の医療費が請求されると考えてください。
また、国民健康保険には「海外療養制度」が用意されています。
旅行・海外赴任中などの急な怪我や病気でやむを得ず現地の医療機関に行った場合、帰国後の申請で一部の医療費の払い戻しを受けられるようです。
そのため、海外で生活をしていても住民票を日本に残していれば、一時帰国時に医療費負担を少なくできる可能性があるでしょう。
ただし、払い戻しの対象は日本国内で保険診療として認められる行為のみであり、インプラントや美容整形は適用されません。
治療を目的として海外に渡航した場合も支給対象外となるため、注意してください。
国民健康保険が強制脱退になるというポイントも、メリットとデメリットの両方が存在すると考えるべきでしょう。
国外転出届を出すと銀行口座やクレジットカードを作れない
日本に住所がない状態では、日本で新しく銀行口座やクレジットカードを作ることができません。
また、日本の銀行の中には非居住者の口座開設のみでなく継続利用を制限する銀行もあります。
必要な場合は日本にいるうちに、銀行口座を見直すべきでしょう。
クレジットカードを増やしたいと考えている方も、日本国内に住所がある間に審査を済ませておくべきです。
渡航先によって使いにくい国際ブランドが存在するケースもあるため、事前に確認しておいてください。
出し忘れた時の対応
日本から出国する前に海外転出届出を提出することを忘れてしまった場合、一時帰国などのタイミングで市役所に行けば、遡って転出手続きが可能です。
この際には、パスポートで出入国を確認するか、航空券やeチケットを提示して転出の事実を明らかにする必要があります。
また、一部の市区町村では海外から郵送で国外転出届を提出可能なサービスも用意しています。
海外転出届を出し忘れてしまった方は、住民票がある自治体に問い合わせてみてください。
また、次の章で紹介する代理申請を活用しても良いでしょう。
代理申請やオンライン対応
この章では、海外転出手続きの代理申請・オンライン対応についてまとめました。
実際に窓口で海外転出手続きをすることが難しい方は、ぜひ参考にしてください。
海外転出手続きは代理人に依頼できる
海外転出手続きは本人以外に、世帯主・同一世帯の方・法定代理人・任意代理人に依頼できます。
時間に余裕がない方は、代理人申請も検討すると良いでしょう。
代理人に手続きを依頼する場合には以下の書類が必要です。
・委任状
・本人確認書類など
・マイナンバーカード
お住まいの自治体によってルールが異なる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
海外転出手続きはオンラインで完結できない
マイナンバーカードをお持ちの方はマイナポータルを活用することで、転出届をオンラインで提出できるようになりました。
しかし、現段階では日本国内の引越しのみの対応であり、海外への引越しでは活用できません。
さまざまなサービスのオンライン化が進んでいる現在では、いずれ海外転出手続きもオンラインで完結できる可能性があるでしょう。
海外居住者でもマイナンバーを取得・維持できる
以前まで海外居住者はマイナンバーカードを保持することができず、海外転出届の提出と同時にマイナンバーカードを失効しなければいけませんでした。
しかし、2024年5月27日からは、日本の住民票を抜いて海外で暮らす方も、マイナンバーカードを使い続けられるようになったのです。
また、海外の大使館や総領事館でマイナンバーカードを申請することも可能です。
マイナンバーカードの活用により、海外からの確定申告などもスムーズに行えるようになりました。
まとめ
1年以上の期間、外国に暮らす予定がある方はお住まいの市区町村に海外転出届を提出しなければいけません。
手続きを忘れると、住民税や年金などの支払い義務が発生するでしょう。
また、帰国後には必ず住民票を戻すようにしてください。
住民票に関するルールは自治体によって異なるため、市役所に直接確認することをおすすめします。