ドイツへの大学留学が国際的に人気があるのはご存じでしょうか。
この記事では、ドイツへの大学留学について、どのような魅力があるのか、さらに実現するためには何が必要となるのかについて解説していきます。
ドイツ大学留学の魅力
教育の質が高い
ドイツの大学は、世界で高い評価を得ている教育機関が多く、質の高い教育を受けることができます。THE世界大学ランキング2025では、200位以内にドイツから20の大学がランクインしています。
日本からは2大学のみしかランクインしていないので比較すると圧倒的に高い数字であることがわかります。ミュンヘン工科大学、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学、ハイデルベルク大学、フンボルト大学などの名門校が、工学や社会科学などの分野で非常に高い評価を受けています。
学費が無料または安い
ほとんどの州の公立大学では授業料が無料です。Baden-Württemberg州のみ、留学生に対して年間1,500ユーロ(25万円)程度の学費がかかりますが、それでも他の国と比較すると非常に安いです。ヨーロッパには学費が安い国が多いですが、多くの場合ではEU圏内の学生に限定されています。しかしドイツでは、EU圏外の留学生も学費免除の対象となるので、留学生にとってはとても魅力的です。
英語で授業が受けられる
ドイツの多くの大学では、英語で授業を受けることが可能です。ですので、ドイツ語が堪能でない学生でも、教育の質を損なうことなく、専門的な学問を学ぶことができます。DAAD(ドイツ学術交流会)のInternational Programsのデータベースで、英語で学べる課程を検索することができます。
文化体験
ドイツへの大学留学では、単に教育を受けるだけではなく、豊かな文化、歴史的建造物、芸術、音楽などに触れるチャンスが多いです。クリスマスマーケットや多くのお祭りが開催されているので、地元の人々との交流や独自の文化を楽しむことができるでしょう。さらに、他のヨーロッパ諸国への旅行も簡単に行くことができるので、ヨーロッパを広く知ることもできるはずです。
現地での就職
ドイツは経済的に強い国であり、現地での就職は非常に魅力的です。現地の大学に通っていれば、学びながら現地の就職市場を探ることもできますし、さらにドイツの大学・大学院を卒業した留学生には、卒業後18ヶ月の就職活動ビザが発行されます。このような制度を利用することでドイツでの就職を実現することができるでしょう。
生活環境が良好
ドイツは比較的治安が良く、安心して留学生活を送ることができます。ドイツでは公共交通機関も整備されていて移動も便利ですし、医療技術も進んでいるので質の高い治療を受けることもできます。ドイツの大学と学位プログラムの種類
ドイツの高等教育システムは多彩で、幅広い選択肢があります。大学の種類は主に3つに分かれます。
総合大学(Universität)
総合大学は、医学、自然科学、人文科学、法学など、様々な学問分野を網羅しています。これらの大学は基礎研究や応用研究に重点を置いており、純粋な学問追求の場となっています。応用科学大学(Hochschule für Angewandte Wissenschaften / Fachhochschule / Hochschule)
応用科学大学は実践的な教育に重点を置いており、技術、ビジネスなどの分野を学ぶことができます。企業との連携が強く、実際のプロジェクトやインターンシップを通じて実務経験を積むことができます。芸術系の大学(Kunsthochschule)
芸術分野に特化した教育を提供しており、音楽、建築、美術、デザインなどの芸術分野を学ぶことができます。通常は、5年間のプログラム(Diplom: ディプロム)となっています。学位プログラムの種類
学士課程(Bachelor's Degree)期間
通常3〜3.5年(6〜7学期)
学位の種類
文学士(BA)
理学士(BSc)
経営学学士(BBA)
修士課程(Master's Degree)
期間
通常1〜2年
学士号取得後に進学可能です。
ディプロム(Diplom)
期間
通常5年
博士課程(PhD)
期間
約3~5年
明確な修了時期はなく、業績が十分になった時点で指導教員からGOサインをもらい、論文提出や審査会などの過程を経て修了します。
国家試験(Staatsexamen)
特定の分野(法学、医学、薬学、教員養成など)で行われる卒業試験で、合格することが大学卒業の要件となっています。
ドイツ大学留学のための出願要件
ドイツの大学に留学するためには、いくつかの必須条件と書類があります。複雑ではありますが、正確な情報を把握することで円滑に進めることができます。入学資格の確認
ドイツの大学に入学するためには、「Hochschulzugangsberechtigung - HZB」(大学入学資格)を取得する必要があります。状況によって、次のような条件を満たす必要があります。日本の高校を卒業した場合
大学入学共通テストを5科目以上受験し、その5科目の合計得点が420点以上であること。そのうち2科目はドイツで学びたい専攻に関連するものであり、62%以上取得をしていること。
4年制大学で1年以上修了している場合
年間35単位以上取得していること。
日本での専攻学科および関連学科のみに応募が可能です。
4年制大学を卒業(学士号取得)している場合
任意の学科に応募が可能です。
語学能力の証明
ドイツ語授業がドイツ語で行われる場合は、ドイツ語の能力を証明する必要があります。一般的には、次のような試験を受験しなければなりません。
DSH(Deutsche Sprachprüfung für den Hochschulzugang)
大学独自の試験で、DSH IからDSH IIIまでの3段階で評価がなされます(DSH IIIが最高)。DSH II(67%~81%)以上が一般的に求められますが、医学部やジャーナリズムなど特定の分野ではDSH III(82%以上)が必要な場合もあります。
TestDaF (Test Deutsch als Fremdsprache)
最も広く認められている試験で、通常4つの分野(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)で試験が行われ、DaF TDN 3(最低)からDaF TDN 5(最高)までの3段階で評価されます。一般的には、TDN 4以上が求められます。
英語
英語で授業を行うプログラムに出願する場合のみ必要となりますが、英語圏の高校や大学を卒業していて卒業証明書があれば追加の英語力証明は不要な場合があります。
IELTS Academic
多くの大学で求められる最低スコア:6.0〜7.0
出願先に制限がなくなるスコア:7.0以上
TOEFL iBT
多くの大学で求められる最低スコア:72〜90
出願先に制限がなくなるスコア:100以上
Cambridge English Qualifications(FCE, CAE, CPE)
一部の大学で認められています
必要書類
大学や専攻によって要求される書類は異なりますが、一般的には次のようなものが必要となります。語学力証明書(ドイツ語または英語)
履歴書(CV: ドイツ語形式で作成したもの)
志望動機書
パスポートのコピー
パスポート用サイズの証明写真
※出願前に志望大学の入試課(Immatrikulationsamt/Prüfungsamt)に具体的な要件を確認することが重要です。
出願手続き
ドイツの大学に出願する際は、「Uni-assist」と呼ばれる機関を通じての出願が一般的です。しかし、出願方法については、大学直接問い合わせる必要があります。出願時期を逃さないよう、事前にスケジュールを確認することも大切です。また、書類の提出と同時に受験料が必要となることが多いので、注意しておきましょう。
ビザと滞在許可の取得手続き
ドイツで大学留学するためには、滞在許可証(Aufenthaltstitel)の取得が必要です。日本国籍の方であれば、ドイツへの入国に際してはビザを取得する必要はありませんし、入国後90日間はビザ無しで滞在することができます。ですのでドイツ到着後90日以内に直接、滞在許可申請を行うことになります。滞在許可の申請手続き
住民登録ドイツに到着したら、1〜2週間以内に住居地の管轄住民登録局(Einwohnermeldeamt)に居住の登録を行います。その後で滞在許可証の申請が可能になります。
必要書類の準備
滞在許可の申請時には、パスポート、入学証明書(Immatrikulationsbescheinigung)、資金証明、住民登録証明書(Meldebescheinigung)や大学在学証明書、健康保険加入証明書、パスポート用の顔写真などが必要です。
外国人局への申請
申請書や必要書類を持って、当地の外国人局(Ausländerbehörde)を訪れ、手続きを行います。手続きには、待機時間が発生することがあるため、早めに行動することが推奨されます。書類審査後、申請料を支払う必要があります。料金は通常50〜110ユーロの範囲内です。
滞在許可の発行
申請が承認されると、正式な滞在許可証(カード形式)が発行されるまで有効な仮の証明書が発行されます。その後、滞在許可証が発行され、これによってドイツでの長期滞在が許可されたことになります。
※
就労を伴う場合は、労働許可(Arbeitsgenehmigung)も必要になります。
滞在許可と労働許可の両方を取得するまで就労はできません。
滞在目的や状況により、追加の書類が必要になる場合があります。
奨学金と経済的支援の活用
奨学金
ドイツ大学留学のための奨学金には次のようなものがあります。DAAD奨学金
DAAD(ドイツ学術交流会)が提供している奨学金制度があります。
主に大学院生、博士課程の学生が対象で、ドイツの大学での学位取得を支援してくれます。月々の支給額は、修士課程で992ユーロ、博士課程・ポスドクで1,300ユーロとなっています。また、研究費補助として年間460ユーロ支給されます。
Deutschlandstipendium
ドイツ国内の大学が独自に実施している奨学金で、特に成績優秀な学生に対して支給されます。選考基準は学業成績だけではなく、社会貢献活動や特別な才能などが注目されます。支給額は月300ユーロで、主に1年間(2学期)支給されます。
連邦奨学金制度(Bundesausbildungsförderung)
ドイツの連邦奨学金制度(Bundesausbildungsförderung)は、学生や職業教育を受ける方に対する経済的支援を目的としたシステムです。大学生だけでなく、職業教育学校の学生にも適用されるのが特徴で、一部は返済不要となっています。
トビタテ!留学JAPAN
日本政府が実施するプログラムで、海外で学ぶ学生を支援するものです。留学目的や国によって条件が異なりますが、返済不要の奨学金が用意されています。競争率が高く、難易度は高めです。
JASSO(日本学生支援機構)奨学金
学生支援機構が実施する奨学金で、日本の学生が海外留学を行う際に利用できる制度です。貸与型と給付型があり、給付型の奨学金の場合は返済が不要となるので、確認してみるとよいでしょう。
まとめ
ドイツへの大学留学について理解は深まったでしょうか。ヨーロッパの大学はレベルが高いですが、その中でもドイツの大学は経済的にも大きな利点があるのが特徴です。これから海外への大学進学を考えている方は、ドイツという選択肢を検討してみるのもおすすめです。新しい可能性を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

◇経歴
海外向けデバイスのソフト設計開発、関連資料翻訳
◇資格
TOEIC 900点
◇留学経験
ワーキングホリデーにてカナダ、オーストラリアに滞在経験あり
◇海外渡航経験
ワーキングホリデーでは、ホテルやレストランで仕事をしていました。
◇自己紹介
普段は翻訳などの仕事をしていますが、Webライターとしても活動しています。
興味の幅が広く、様々なテーマで記事を書いています。
皆様にとってわかりやすく面白い記事を書けるよう頑張ります。
よろしくお願いいたします。