イギリスの文化として欠かせないものの1つはパブ文化です。
パブは、「公共の家」という意味のパブリックハウス(public house)の省略語で、日本でいう居酒屋にあたります。
元々は、パブはお酒だけを提供する場所だけでなく、宿泊所や集会所の機能も備えた場所でした。
バーカウンターがあり、樽詰めのドラフトビールをハンドポンプと呼ばれるタップから注ぐ今の形のパブは19世紀初めに登場し、イギリス全土に広がりました。
パブは、公共の家の名の通り、町の社交場として、地域のコミュニティを支える場所として発展してきました。
現在のイギリス国内のパブの数は、45,350軒です(2023年現在)。
近年、多くのパブが事業税、アルコール税や人件費の上昇といった理由から存続が難しくなり、閉店に追い込まれているという事実はあります。ですが、イギリスを訪問するからには、「パブに行かなければイギリスがわからない」というほど、パブはイギリス人の生活に根付いた文化なのです。
また、イギリスのパブには、チャールズディケンズ、アーサーコナンドイル、チャーチルを始めとする文豪や歴史的な著名人達が通っていたと言われるパブが各地にあります。そんなパブを訪れるのもイギリス旅行の楽しみです。
この記事では、パブの楽しみ方、パブ料理、オーダーの仕方、パブで注意することなどイギリスのパブ文化を詳細にお話しします。
飲まなくても楽しい!イギリスのパブ
パブは日本でいう居酒屋とご紹介した通り、アルコールを出す場所です。
仕事帰りに同僚とパブに寄ってビールを一杯飲むのがイギリスの文化です。
しかし、日本の居酒屋と違うところは、イギリスのパブはお昼から営業していて、パブでランチが楽しめることです。
「パブランチ」で出る食べ物はイギリスの伝統的な料理で、ランチには家族で行くことができます。
アルコールを注文する必要はありませんし、子供も含め、最近は場所によっては犬まで連れて行けるところも多いです。
つまり、イギリスのパブは、気軽にイギリスの伝統料理を食べることもできるところ。
加えて、どこの街に行ってもあるので、イギリス旅行をする時にはとても便利な存在です。
そして、地元の憩いの場であるパブの楽しみ方は、そこでフットボールやラグビーを観戦することです。
イギリスはフットボールそしてラグビーの発祥の地で、フットボールとラグビーがもう1つの文化と言って良いほど、それらのスポーツが大好きな国です。
特に、国対抗のフットボールやラグビーの試合があるときは、パブに行ってみんなで盛り上がって観戦するのが醍醐味です。
観戦するときは、ビールを飲みながらの人は多いですが、ノンアルコールドリンクでも問題ありません。
最近は、パブで提供されるノンアルコールのドリンクの数も増えていますので、飲まない人も十分に楽しめます。
定番メニュー:イギリスのパブ料理
パブの定番メニューは伝統的なイギリス料理です。ここでは、いくつか代表的なものをご紹介します。
・フィッシュアンドチップス:英国飯の代表です。タラのフライとフライドポテト(チップス)です。
・パイ料理:イギリスにはパイを使った料理がたくさんあります。パイ生地の代わりにマッシュポテトを使うこともあります。
1)ステーキパイ:パイ生地の中にビーフシチューが入ったパイ
2)フィッシュパイ:魚にホワイトソースを絡め、マッシュポテトをかけたもの
3)シェパーズパイ:パイ生地の代わりにマッシュポテトを使ったラムとマトンの挽肉を使った料理
4)コテージパイ:牛挽肉とマッシュポテトのパイ
・サンデーロースト:イギリスで日曜日に食べる定番料理の肉のローストです。
ローストの代表はローストビーフですが、他にも豚、羊、鶏のお肉をローストしたものに、ローストしたじゃがいも、にんじん、ブロッコリーなどの各種野菜、ヨークシャープディングと呼ばれる甘くないパイと一緒にワンプレートに盛られ、全体にグレイビーソース(肉汁から作られたソース)がかけられています。
・ハンバーガー:パブ飯の定番。フォークとナイフで食べるのが英国風です。
・オールデー・ブレックファスト:イギリスのフルブレックファストを1日中出すパブが多くあります。
大きなプレートに、目玉焼き、ベーコン、ハム、ソーセージ、ハッシュポテトやマッシュポテト、マッシュルームのソテー、グリルトマト、ベイクドビーンズがのり、そしてトーストとジャムと一緒に食べるボリューム満点の一皿です。
・プラウマンズランチ:「農夫のランチ」と名のついたパブランチの定番メニューです。
パン、チーズ数種、コールドミート(ハムやパテ)、ピクルスがのったプレートランチで、パンとバターが添えられていて、自分でオープンサンドにして食べます。
・フィッシュケーキ:イギリス風の魚のコロッケです。
白魚のタラに、マッシュポテトとハーブを加えて、パン粉をまぶして揚げたり、フライパンで焼いたものです。
多彩な飲み物:パブでのオーダー方法
パブでのビールの種類
パブといえばやはりビール。イギリスには何種類ものビールがあります。
ビールは、「エール」「スタウト」「ラガー」の3つに分けられますが、イギリスの原産はスタウトとエールです。
ラガーは日本のビールやハイネケンなどの輸入ビールです。
・エール:大麦を主原料とし、酵母によって上面発酵させたビールで、色や香り、味わいを楽しみながら飲む常温ビールのことです。
エールはイギリスのクラフトビールで、飲みやすいことが特徴です。
エールの中でもビターエールと呼ばれるほんのりとしたホップの苦味があるものを「ビターエール」または「ビター」と呼びます。
・スタウト:エールの一種で、黒くなるまでローストした大麦を上面発酵して作ったビールです。
イギリスではアイルランド産のギネスが人気です。常温で飲みます。
・ラガー:麦芽を主原料とした、下面発酵で作られたビールです。
ドイツや日本のビールはラガーで、缶や瓶詰めのビールで冷やして飲みます。
パブのカウンターには、スタウトとエール用に種類ごとにタップと呼ばれる水道の蛇口のようなものがあります。注文を受ける度に、そこからグラスに注いでくれます。
ビールの他に、パブにあるイギリス独特な飲み物も何種類かありますので、試してみてください。
・シャンデイ:ビールと炭酸飲料を半分ずつあわせたカクテルです。
炭酸飲料とは、レモネードやジンジャーエールなどのことをいい、パブではレモネードを使うのが一般的です。
・サイダー:リンゴを発酵させたお酒です。
・ピムス:イギリスを代表する果物やハーブが混ざったジンベースのカクテルです。
ピムスにレモン、リンゴ、キュウリ、イチゴ、オレンジ、ミント、レモネード、ジンジャーエールなどを混ぜて作るカクテルで、イギリスでは夏にこのお酒を好んで飲みます。
・ジン&トニック:ジンにトニックウォーターを加えて作るカクテルです。
最近は、パブでもワインを出すところも増えています。
パブでのオーダーの仕方
ここではオーダーの仕方をご紹介します。
1.パブでは、カウンターに行き自分でスタッフにオーダーします。
ビールは1パイント(568ml)という単位で注文します。
その半分のサイズのハーフパイントでオーダーすることもできます。
2.飲み物を受け取ったら、その場で支払いを終えます。
3.カウンターで飲むこともできますし、テーブル席に座って飲むこともできます。
食べ物をオーダーするときは、テーブル番号を覚えて、カウンターでテーブル番号を伝えオーダーします。
食べ物はテーブルまで持ってきてくれます。
パブには味つけのための調味料として、HPソースやケチャップ、モルトビネガー、マヨネーズ、塩、胡椒などが置いてあります。
テーブルに設置されている場合と、専用の棚がある場合、調味料セットが運ばれてくる場合があります。
パブで注意すること、やってはいけないこと
イギリスのパブを利用する際は守るべきルールがいくつかあります。
・カウンターで並ぶ:順番にオーダーを聞いてくれます。
・イギリスのパブは全店が禁煙です。
・チップは不要です。
・複数人でお酒を飲む場合のルールがあります。
Round of drink(ラウンド制)です。
例えば、4人でパブに入店してお酒を注文する場合、1人がカウンターで4人分の料金を支払います。
そして飲み終わると、グループ内の違う1人が同じように支払います。
これがラウンド制というものですので、4人で行くと4杯飲むことになります。
・未成年がパブに行く時の注意点
1)イギリスでは18歳からお酒を購入することができます。
2)16歳になると、購入することはできませんが、食事を伴うときはビールやワインを飲むことはできますので、親同伴の時のみ飲むことができます。
3)16歳以下の場合、大人が同伴していればパブに行くことができますが、アルコールは飲めません。
英語でオーダーしてみよう!例文紹介!
パブではカウンターでオーダーするため、店員さんと会話をする機会があります。
沢山のビールがあるので、オーダーに困った時には、店員さんに聞いてみましょう。
・オーダーする時の英語
“Can I have a pint of Guinness, please ?”
ギネスを一杯ください。
簡単に“A pint of Guinness, please. ”でもOKです。
・何を選べばいいかわからない時の英語
“What bitter do you have?”
どんなビターがありますか?
“I would like to have bitter. What’s your recommendation?”
ビターが飲みたいのですが、おすすめは何ですか?
おすすめを聞くと、
“Would you like dark or light ?(濃いのがいい?軽いのがいい?)”
と聞かれることが多くあります。
その時には、
“I’d like a dark/light one please.(濃い/軽いのがいいです)”
と答えてください。
おすすめのビールや料理に決めたときは、
“I’ll have that one.(それにします)”
と言います。
折角なので、地元のビールを飲みたいときの便利なフレーズは、
“Which one is the local bitter?(地元のビターはどれですか?)”
です。
こんな感じで店員さんと会話できたら、イギリスのパブ文化の仲間入りです。
まとめ
イギリス人にとってパブは大切な生活の一部です。
パブはビールを飲むところというイメージが強いですが、友達と出かけたり、フットボールを観戦したりできる社交場でありながら、家族でイギリスの伝統的な定番料理を気軽に食べれる場所でもあります。
最近は、アルコールではなく、食事をメインにしたグルメパブも出てきています。
イギリスに行くならば是非パブに行って、イギリスの文化を満喫してください。