
旅行や留学で北米を訪れる際、カナダドルとアメリカドル(米ドル)の違いやレートの関係について疑問に思ったことはないでしょうか?両通貨とも「ドル」と呼ばれ、北米で広く流通していますが、実際には使える国や価値、為替レートが異なります。また、アメリカドルがカナダで使えるのかも気になるポイントですよね。
この記事では、カナダドルとアメリカドルの違いやレートの特徴、カナダでのアメリカドルの扱いまでわかりやすく解説します。
- カナダドルとアメリカドルの基本的な違いは?
- カナダドルとアメリカドルの紙幣・硬貨の種類の違い
- カナダドルとアメリカドルの為替レートの違い
- カナダでアメリカドルは使える?
- 日本円からカナダドルやアメリカドルに両替する方法
- まとめ
カナダドルとアメリカドルの基本的な違いは?
カナダドルとアメリカドルの違いは、発行している国が違うことはもちろん、世界での役割や価値が異なります。
どちらの通貨も「ドル(Dollar)」や「セント(Cent)」を使っているので、同じお金なのかと思ってしまいがちですが、カナダ銀行(Bank of Canada)とアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)によって管理される独立した法定通貨です。
そのため、それぞれの国の経済状況や金融政策によって、カナダドルとアメリカドルのレートは常に変動しています。
| 比較項目 | カナダドル(CAD, C$) | アメリカドル(USD, US$) |
| 発行国 | カナダ | アメリカ合衆国 |
| 国際的な役割 | 資源国通貨 (原油・資源価格の影響大) |
基軸通貨(世界取引の標準) |
| 通貨コード | CAD | USD |
| 特徴的なデザイン | 色鮮やかなポリマー(プラスチック)素材の紙幣 | 緑色を主とする紙幣デザイン |
| 紙幣の種類 | 5種類 5ドル、10ドル、20ドル、50ドル、100ドル |
7種類 1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、20ドル、50ドル、100ドル |
| 硬貨の種類 | 5種類 5セント、10セント、25セント、1ドル、2ドル (愛称で呼ばれる) |
6種類 1セント、5セント、10セント、25セント、50セント、1ドル |
カナダドル(CAD)とは?
カナダドル(加ドル、通貨コード:CAD)は、カナダの法定通貨で、世界の主要通貨ペア(*1)の一つとして広く取引されています。カナダドルは「$」や「C$」で表記され、100セント=1カナダドルです。
カナダは石油、ガス、鉱物、森林など、資源が豊富なため、カナダドルは「資源国通貨」と呼ばれます。例えば、原油価格が1バレル=60ドルから80ドルへ上昇すれば、資源輸出により収益が増え、カナダドルも上昇しやすくなります。反対に、原油価格が下落すると輸出の収益が減るため、カナダドルも下落しやすくなります。
また、カナダの主要な貿易相手国であるアメリカ経済の動向も、カナダドルの為替レートに強く影響します。
2020年のコロナショック時には、原油価格の暴落に連動して一時1カナダドル=0.70米ドル台まで下落しました。こうした事例は、現在の市場分析や取引データの基礎となっています。
*1 通貨ペア:取引で売買する通貨の組み合わせ。「米ドル/円」や「カナダドル/円」のように、売買する通貨の組み合わせを「/」で区切って並べて表します。
参照:Foreign Currency Units per 1 Canadian Dollar, 1950-2023|PACIFIC Exchange Rate Service
アメリカドル(USD)とは?
アメリカドル(米ドル、通貨コード:USD)は、世界で最も取引量の多い通貨で、「世界の基軸通貨」として国際貿易や金融取引の標準になっています。米ドルは「$」や「US$」で表記され、多くの国が予備の資金として保有しています。
米ドルの価値は、アメリカの経済指標(雇用統計、GDP、金利政策など)や市場動向に左右されます。
例えば、雇用統計が予想より好調なら景気拡大を見込んでドル高へ。FRB(連邦準備制度理事会)が利上げを発表すると、投資資金がドルへ流入しドル高になりやすいなどです。
また、ドル円市場(USD/JPY)ユーロドル(EUR/USD)など主要通貨ペア取引の中心でもあります。
米ドルは、通常は安定したレンジ相場(*1)で推移しますが、リーマンショックやコロナショックといったショック相場(*2)では急激な値動きを見せることがあります。
世界的な経済危機の際には、安全資産としてのアメリカドルに資金が集まりやすいのも特徴です。
*1 レンジ相場:株や通貨の値段が一定の範囲で上げ下げを繰り返す相場のこと。
*2 ショック相場:株や通貨の値段が突発的な出来事で大きく根が動く相場のこと。
カナダドルとアメリカドルの歴史
カナダのお金は、先住民やイギリス、フランスやアメリカの影響を受けながら独自の貨幣制度を築いてきました。
カナダは、カナダ連邦が成立する数十年前に、アメリカと同じ十進法を使用することを決め、1858年に、それまで使用していたイギリス通貨のポンドではなく、カナダドルを公式通貨として採用しました。初めて鋳造されたのは10セント硬貨でした。
一方、アメリカドルは、アメリカ独立後の1785年に、ドルが公式通貨単位として採用されたことから始まります。1792年には「造幣法」によって初めてドルが鋳造され、十進法を使用した米国の貨幣制度が確立されていきました。
ドルの記号は、スペイン系アメリカ人が使用していたペソの数字から派生しています。
カナダドルとアメリカドルの紙幣・硬貨の種類の違い
カナダドルとアメリカドルは、紙幣(お札)の素材や色、硬貨の種類や呼び方に違いがあります。似たようなサイズの硬貨もあるのですが、デザインも価値も違うため、お財布の中で混ざってしまわないように注意してくださいね。
特にカナダのお札は、環境に優しく、偽造を防ぐためにポリマー素材(プラスチック製)が使われていて、水に濡れても大丈夫です。
紙幣の違い
カナダドルの紙幣は、紫・青・緑などのカラフルな色合いが特徴で、ポリマー素材(プラスチック)が使用されており、耐久性が高く、偽造防止機能にも優れています。
カナダの紙幣は5種類(5ドル・10ドル・20ドル、50ドル・100ドル)あります。よく使われるのは、5ドル、10ドル、20ドル札です。個人商店等では50ドル以上の高額紙幣が使えないこともあります。
表面には歴代首相やエリザベス2世女王などが描かれ、裏面にはカナダの文化・自然・科学技術を象徴するデザインが施されています。
アメリカドルの紙幣は、「グリーンバック(greenback)」と呼ばれるように、緑色を基調とした伝統的なデザインが特徴です。
アメリカの紙幣は7種類(1ドル・2ドル・5ドル・10ドル・20ドル・50ドル・100ドル)があり、表面には歴代大統領や国家の功労者、裏面にはホワイトハウスやリンカーン記念堂などの象徴的な建造物が描かれています。
カナダドルとアメリカドルの紙幣
| カナダドル(CAD) | アメリカドル(USD) | |
| 素材 | ポリマー(プラスチック) 耐久性・偽造防止に優れる |
紙(麻25%と綿75%) 赤と青の偽造防止繊維が織り込まれている |
| 種類 | 5種類 5ドル、10ドル、20ドル、50ドル、100ドル |
7種類 1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、20ドル、50ドル、100ドル |
| 色彩 | 紫・青・緑など色鮮やか | 緑色メイン・グリーンバック |
| 絵柄 | (表面) 歴代首相、エリザベス2世女王など (裏面) 文化、自然、科学技術など |
(表面) 歴代大統領、国家の功労者など (裏面) ホワイトハウス、リンカーン記念堂など |
参考:米国通貨の豆知識|The U.S. Currency Education Program (.gov)
硬貨の種類と愛称
カナダドルの硬貨は5種類あり、コインには愛称もついています。2ドルコインはトゥーニー、1ドルコインはルーニー、25セントはクォーター、10セントはダイム、5セントはニッケルと呼ばれています。よく使われるので覚えておくと便利ですよ。
かつては1セント(ペニー)もありましたが、2013年に廃止されたため、現金で支払うときの端数は、一番近い5セントに切り上げたり切り下げたりして調整されます。
アメリカドルの硬貨は6種類(1セント、5セント、10セント、25セント、50セント、100セント)があります。1ドル(=100セント)は紙幣も硬貨も両方あります。
カナダドルとアメリカドルは同じ名前の硬貨も多く、サイズも似ていますが、デザインも価値も異なるので注意です!旅行中に混ざってしまわないように気をつけましょう。
参照:ペニー硬貨の段階的廃止 Phasing Out the Penny|カナダ政府
カナダドルとアメリカドルの硬貨
| 額面 | カナダドル(CAD) | アメリカドル(USD) |
| 1セント | ペニー (Penny) ※2013年に廃止 |
1セント硬貨 |
| 5セント | ニッケル (Nickel) | 5セント硬貨 |
| 10セント | ダイム (Dime) | 10セント硬貨 |
| 25セント | クォーター (Quarter) | 25セント硬貨 |
| 50セント | (該当なし) | 50セント硬貨 |
| 1ドル | ルーニー (Loonie) | 1ドル硬貨 (紙幣もあり) |
| 2ドル | トゥーニー (Toonie) | (該当なし) |
カナダドルとアメリカドルの為替レートの違い
カナダドルとアメリカドルの為替レートは、両国の経済状況や市場の動き、中央銀行の金利政策によって変動します。一般的に、アメリカドルは価値が高く、カナダドルは資源国通貨として原油価格の影響を受けやすいのが特徴です。
為替レートの動きは、旅行や留学のための両替をいつするかというタイミングに影響しますから、カナダドルと米ドルのレートを知っておくことは、少しでもお得に換金するためのポイントになります。
2025年11月11日時点では、1カナダドル(CAD)がおよそ0.71アメリカドル(USD)です。
カナダでアメリカドルは使える?
カナダ国内でアメリカドル(米ドル)を使えるお店はありますが、使える場所は限られているため、やはりカナダドル(CAD)を準備しておくのが一番良い方法です。
旅行や留学でカナダを訪れる際に、アメリカドルがそのままカナダで使えるか疑問に思う方もいるでしょう。
実際、カナダドルで支払うときと比べて、不利な換算レートが適用されたり、お釣りがカナダドルで戻ってきたりする場合があります。
観光地や都会では使える場所も
カナダのトロントやバンクーバーのような都市やナイアガラの滝などの観光スポットの近くにある大きなホテル、免税店、空港内のお店などでは、アメリカドルで支払いができることがあります。
ただしカナダでアメリカドルを利用する際には、店舗によっては独自に設定した為替レートが適用されるため、正規のレートよりも割高になることがあります。
また、支払いにアメリカドルを使用した場合でも、お釣りはカナダドルで返されるため、小銭を含めて金額をしっかり確認しなければなりません。
田舎や小さなお店では使えないことがほとんど
田舎や郊外、または個人でやっている小さなカフェなどでは、アメリカドルが受け入れられないことがほとんどです。こうした場所では、必ずカナダドルでの現金払い、またはクレジットカードでの支払いが必須になります。「米ドルは、あくまで緊急用」と考えておくのが無難でしょう。
クレジットカードやデジタル決済が便利
アメリカドルをそのまま使う代わりに、クレジットカードやデジタル決済アプリ(Apple Pay、Google Payなど)を利用することで、多くの現金を持ち歩くリスクを軽減できます。
カードでの支払いは、自動的にリアルタイム為替レートでカナダドルに換算されるため、スムーズに支払いができます。
現地のATMから必要な分だけ現地のお金(カナダドル)を引き出す方法も、両替所よりも良いレートになることもあるのでおすすめです。
チップの支払いはどうする?
カナダにもチップの習慣があります。レストランやホテルなどで良いサービスを受けたときにはチップを渡します。
チップは通常、カナダドルのコイン、1ドル(ルーニー)や2ドル(トゥーニー)、またはお札で渡します。米ドルでチップを渡すこともできますが、サービスをしてくれた人が後で換金する手間がかかってしまうので、できる限りカナダドルで渡す方が親切です。
日本円からカナダドルやアメリカドルに両替する方法
カナダやアメリカを訪れる際には、日本円を現地通貨に両替する必要があります。両替の方法やタイミングを工夫することで、為替手数料を抑えたり、お得に両替をすることができます。
ここでは、いくつかの一般的な両替方法について説明します。
空港の両替所を利用する
空港にある両替所は、旅行直前や到着直後に現金を手に入れたい場合に便利です。
空港での両替は手軽ですが、為替レートが高めに設定されていることが多いため、必要最低限の金額を両替するのがおすすめです。
日本国内の銀行や両替所を利用する
大手銀行では、窓口でカナダドルやアメリカドルへの両替を行っています。事前にレートを比較することで、空港や現地よりも有利な条件で両替できる場合があります。
ただし、両替可能な通貨が限られていたり、両替の上限金額がある場合があるため、事前に確認し、早めに準備することが重要です。
現地の両替所や銀行を利用する
現地では、為替レートが国内よりも有利になることがありますが、両替所の場所や手数料を事前に調べておくと安心です。特に地方では、日本円を取り扱う場所が少ない場合があるため、大都市で済ませるのが安心です。
現地のATMで現地通貨を引き出す
現地のATMを利用してカナダドルやアメリカドルを引き出す際には、クレジットカード(キャッシング機能付き)またはデビットカードが必要です。
このカードは、日本国内の銀行が発行したもので、VisaやMastercardなどの国際ブランドに対応している必要があります。ATMを利用する方法は、必要な分だけ現地通貨を引き出せるため、急に現金が必要となってしまった場合に役立つ手段のひとつです。
ただし、利用時にはATMの利用料や海外引き出し手数料が発生する場合があります。そのため、事前に自分のカードが海外のATMで利用可能かどうか、また手数料や引き出し限度額について確認しておくことが大切です。
クレジットカードやデビットカードを利用する
これらのカードでは、自動的に現地通貨に換算されて支払われるため、両替の手間を省けます。ただし、カードによっては為替手数料がかかることがあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
また、カードが利用できない店舗での支払いや、現金でチップを払う場合に備え、少額の現金を用意しておくことも重要です。
まとめ
カナダドルとアメリカドルの違いは、資源国通貨と基軸通貨という国際的な役割にあり、カナダドルとアメリカドルのレートは原油価格や金利によって日々変動しています。
カナダではアメリカドルの使用が制限されることが多いため、事前に現地通貨であるカナダドルを用意しておいたほうが安心です。また、現金を持ち歩くリスクを避けたい場合は、クレジットカードやデジタル決済を上手に活用しましょう。
また、為替相場やレートの変動に注意し、通貨換算ツールや為替チャートを活用することで、よりお得な取引や両替が可能になります。
正しい知識と準備をもって、快適で安全な旅や留学を実現しましょう!
◇経歴
日本では約10年間教育機関で勤務し、留学生の支援をはじめ、学生サポートや外国人教員の支援など幅広い業務に携わってきました。
現在は、オタワの劇場でマーケティング支援を行う傍ら、カフェのバリスタとして働きながら、フリーランスのデザイナー兼ライターとしても活動しています。
◇資格
英検準1級(1級にも挑戦しています!)
◇留学経験
渡航先: カナダ・オタワ
留学期間: 2022年~2024年
学校名: アルゴンキンカレッジ
◇海外渡航経験
2017年夏: カナダ・トロント近郊で2か月間語学学校に留学
2022年~2024年: カナダ・オタワでカレッジを修了
◇自己紹介
2022年よりカナダ・オタワで暮らし、カレッジでデザインを学びました。
「新しいことを学び、挑戦し続ける」ことを大切にしながら、異文化交流を通じて日々の学びを深めています。
多様な文化に触れる中で、コミュニケーションの重要性や継続的な学びの意義を実感しています。
現在は、記事やデザインを通じて、カナダでの経験や語学学習、異文化の魅力をわかりやすく発信し、読者の皆さんのお役に立てるよう努めています。
これからも、新たな発見を共有し、多くの方と繋がれることを楽しみにしています!