
海外に出かけた際にとっても悩むことの一つ、それがチップです。
いくらくらいのチップを渡せばいいのか、どのタイミングで渡すのか、クレジットカードの場合はどうすればいいのか、そもそもチップは必要なのか?
筆者も、初めてアメリカに旅行した際、レストランやホテル、タクシーでいくらくらいのチップをいつどうやって払うのかにとても悩みました。
さて今回の記事は、
オーストラリアのチップ事情です。
オーストラリアではチップは必要なのでしょうか? アメリカなど他国のチップ文化と比べてどのような違いがあるのでしょうか?
シドニーで2年半ほど暮らした筆者自身の体験談も交えながら、詳しく解説していきたいと思います。
チップとはそもそも何?その2つの役割
オーストラリアのチップ事情を解説する前に、まずは、チップとはそもそもどんなものなのかを簡単に振り返ってみましょう。
チップとは、決まった料金にプラスしていくらかのお金を渡すことです。
英語では「tip」と書き、「心付け」や「サービス料」と言われることもあります。
動詞の場合は「チップを渡す」、動名詞の「tipping」は「チップを渡すこと」です。
名詞の「tip」には「ヒント」「秘訣」「先端」といった意味もあります。発音は「ティップ」という感じ。
日本語のチップに引きずられて「チップ」と発音してしまうと、「chip」と間違えられてしまいます。
「chip」はアメリカだとポテトチップス、イギリスだとフライドポテトの意味になってしまうのでご注意を。 また、カジノで使うプラスチック製のコインも「chip」です。
チップには大きく分けて2つの役割があると考えられます。
1.良いサービスへの感謝・評価
提供されたものやサービスに満足した時に、お礼や感謝の印、あるいは評価の印として渡すものです。
サービスなどがとても素晴らしかった場合はチップの額が大きくなり、そうでなければ少なくなる、という感じですね。
2.低賃金労働者の生活サポート
特にアメリカなどの一部の国では、接客業・サービス業における労働者の基本賃金が低いことが多いため、チップは彼らの賃金を補うものとして重要な意味を持ちます。
客の方も「労働者を支えるためにチップは払って当たり前」という感覚があるのです。
チップ文化がある国と無い国、そして渡し方
チップを払う習慣は、国によって大きく違いがあります。現代の日本には、基本的にチップを渡す文化はありません。
旅館に宿泊する時に接客係の人に心付けを渡すこともかつてはありましたが、今ではほとんどなくなっています。 ただ、結婚式のプランナーにお礼を渡すなど、特殊な場面では少しの金額を渡すことがあります。
一方で、海外のいくつかの国では、チップを渡すのが昔からの習慣であり、当然のことであり、日常生活に根付いている場合があります。
アメリカ合衆国やカナダではチップが必須とされることが多い一方、ヨーロッパの国々(イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどを含む)では、必ずしも必須ではないものの、良いサービスに対して払うのが当然という認識が一般的です。
また、飲食店やホテルなどの料金に最初からサービス料が追加されている場合も多いようです。
チップの渡し方には、料金に上乗せして店やサービスに対して払う「料金上乗せ型」と、特定のサービスを提供してくれた個人に直接手渡しする「手渡し型」の大きく2通りがあります。
オーストラリアのチップは基本不要だが浸透中
さて、今回の記事の本題である、オーストラリアのチップ事情です。
かつてはチップ習慣はなかったが…
オーストラリアは、日本と似た点があり、もともとはチップを渡す習慣・文化はありませんでした。
オーストラリアではチップ不要、これが基本です。しかし、現在、徐々にチップを渡すという行為が広まりつつあり、人によってはチップを渡すのが当然と考える人も増えつつあるのが実情です。
この変化のきっかけの一つには、2000年に開催されたシドニーオリンピックがあると言われています。
オリンピック開催で、アメリカなどチップ文化が根付く国々の観光客が世界から多く訪れ、チップの無いオーストラリアにその習慣をもたらしたというのです。
また、オーストラリアは世界中から積極的に移民を受け入れている移民大国です。
チップ文化のある国から来た移民がその習慣をオーストラリアでも実践していることも、チップ習慣が広がる要因の一つとなっています。
つまり、「オーストラリアにはチップの習慣・文化は無かったが、現在、少しずつ浸透しつつある」という感じです。
基本は不要ですが、チップを渡すこともあるという、少しわかりにくい位置づけになっています。
ただし、レストランの中には、メニューの料金に加えて「サービス料」などの名目で必ずプラスアルファのお金を払わなければならないところもあります。
では、オーストラリアにおいて、どんなシチュエーションで特にチップを渡す習慣が広まりつつあるのでしょうか? 場面別に見ていきましょう。
ホテルでのチップ目安と対応
ホテルでは基本的にチップは不要と考えて大丈夫です。
アメリカのようにベッドメイクのために枕元にチップを置いておく習慣もありません。
しかし、次のような特別なサービスを受けた場合は、チップを渡すと喜ばれます。
■ 荷物の上げ下ろしや運搬(ポーター、ベルスタッフなど)
荷物1つにつき、または対応一回につき AU$2〜5程度が目安です。大きな荷物を運んでもらった場合は、やや高めのAU$5〜10 を渡すのも良いでしょう。
■ ハウスキーピング
普通はチップ不要ですが、感謝の気持ちを表したい場合は、ベッドの上に AU$2〜5を置いておくのが一般的です。その際、置いているお金がチップであることを明確にするため、「Thank you for the excellent service」などとメモを添えるのがおすすめです。
■ コンシェルジュ・フロントデスク
レストランの予約など、少し無理のある特別なサービスを提供してもらった場合は、AU$5程度、場合によってはAU$10以上 を渡すことを検討してもよいかもしれません。
ただし、ホテルによっては、チップを渡そうとしても受け取ってくれない場合もあります。それはホテルのルールですので、無理に渡す必要はありません。
レストラン・飲食店でのチップ目安と対応
レストラン・飲食店も、オーストラリアでは基本的にはチップは必須ではありません。
しかし近年、高級な雰囲気の店になればなるほど、チップを渡す習慣が広まる傾向にあります。 支払いの形態別にチップ事情を見ていきましょう。
■ レジそばにチップ用の瓶や箱がある店
ファストフード、フードコート、カフェなどのレジそばにチップボックスが置いてあるのをよく見かけます。
これはチップを入れる入れないはあなたの自由です。もし入れるならば、AU$1〜2 程度の小銭で十分でしょう。
■ サービス料が最初から入っているお店
伝票に「service charge」「service fee」「gratuity」などという名目で、飲食料金に上乗せされた金額が明記されている場合は、それ以上チップを支払う必要はありません。
■ チップをテーブルに残したり、金額を自分で指定するタイプのお店(中級以上のレストラン)
伝票をレジに持っていくのではなく、座っているテーブルで会計をするタイプのレストランの場合、伝票にサービス料の記載がなければチップをどうするかで悩むでしょう。
もしチップを払いたい場合は、飲食料金の5〜15%程度をテーブルに残しておくか、クレジットカード伝票や決済端末の画面に「tip」や「gratuity」という欄がある場合、ここに自分でチップの金額を記載したり入力したりします。
クレジットカードで支払いをする場合、チップ分は別途現金で渡す必要はありません。
伝票の「tips」欄に記入するか、決済端末で入力すれば、合計額が決済されます。
タクシーでのチップ目安と対応
タクシーも基本的にチップは不要です。
表示された料金だけを払えばOKです。
ただし、以下のような特別なサービスを受けた場合は、チップを渡すことを検討してもいいでしょう。目安は AU$2〜10 です。
・重い荷物、大きな荷物を運んでくれた。
・その他、楽しい気分にさせてくれた。
もしチップを渡したい場合は、「お釣りをとっておいて」というやり方をすることがよくあります。
たとえば、料金がAU$47だった場合、AU$50渡して「Keep the change.(お釣りはとっておいてください)」と言うやり方です。
なお、クレジットカードでチップ分まで支払うと運転手にはチップが渡らないケースがあるため、チップ分は別途現金で渡した方が喜ばれることも多いです。
観光ガイドへのチップ目安と対応
ツアーのガイドさんに対するチップも基本的に必須ではありませんが、良いサービスを提供してくれた場合には、感謝の意を表してチップを渡すことがあります。
■ 小規模なツアー(プライベートや少人数制)
ガイドさんと親密にやり取りし、楽しい時間を作ってくれた場合は、ガイド料金とは別に、お礼として AU$5〜10程度 が目安です。
■ 大規模なツアー(数十人規模)
チップを渡す必要はあまりありませんが、気分が悪くなった時に世話してくれたなど、ガイドさんに負担をかけたような場合は、ツアー終了後にお礼として AU$5〜10程度 を渡すのもいいでしょう。
チップを渡すときに役立つ英語表現とマナー
チップを渡す慣習が基本的には無いオーストラリアですが、もし渡す場合は、感謝の気持ちを伝えることがポイントです。
英語での一言
最も一般的なのは、「Thank you.」です。これに一言添えるのがベターです。
■ お礼を言うとき
・I really appreciate your help. Here you go. (手伝ってくれてありがとうございます。これをどうぞ。)
・This is a small token of my appreciation. (これは少ないけれども感謝の印です。)
■ タクシーでのお釣り
・No need for change. Thanks for the ride. (お釣りは不要です。運転ありがとう。)
ちなみに、オーストラリア人の多くは、「Thank you.」と言われると、「No worries.」と返答します。
「どういたしまして」の意味で、オーストラリア流の言い方です。
チップを渡す際のマナー
チップを渡す際には、以下のマナーに注意しましょう。
まとめ
今回はオーストラリアのチップ事情について解説・説明しました。 基本的にはチップ不要のオーストラリアですが、近年、移民や海外からの旅行者が増えるにつれ、チップ文化が少しずつ浸透しつつあり、その位置づけは微妙に変化しています。
アメリカのように義務的なものではありませんので、オーストラリアでチップを渡す時は、旅や留学を楽しんでいる一環ととらえて、あまり深刻に考えすぎなくても大丈夫です。
チップが必須ではない分、かえってわかりづらくなっている面もありますが、基本はあなたの自由です。
感謝の気持ちを伝えたい時にだけ渡す、あるいは、サービスへの評価として渡すなど、自分なりのチップの基準を考えてオーストラリアを巡るのがおすすめです。
チップを渡す時に大事なのは、金額よりも感謝の気持ちをフレンドリーに伝えることです。
「Thank you.」と「笑顔」は忘れないようにしましょう。
◇経歴
児童英語講師
オンライン英会話講師
NC英語アドバイザー
英語学習ライター
元大学教員
◇資格
TESOL/TEC(CANADA)
中学校教諭二級免許状(英語)
◇留学経験
アメリカ・サンディエゴに語学留学(2カ月)の経験あり
その後、オーストラリア・シドニーに大学院留学(2年)の経験もあり
◇海外渡航経験
25歳で初めて、短期間の語学留学をきっかけに本格的に英語の勉強を開始しました。
雑誌の編集・ライティング、テレビCMの企画・撮影等などの仕事が長く、英語を使っての海外取材や撮影経験も多く経験しています。また海外で日系新聞社の副編集長をしていたこともあります。
◇自己紹介
「英語学習に終わりはない」「継続は力なり」を実感し、50代半ばから毎日英語の勉強を続けて2000日近くが過ぎました。
「楽しく学ぶ!」をモットーに、僭越ながら私の異文化経験や英語の知識などをブログに織り交ぜながら、執筆することを心がけています!ネイティブキャンプのオンライン講師もしています。初心者・初級者限定ですが、ぜひ一緒に学びを続けましょう。