
「カノムチャン」は、タイを代表する伝統のお菓子で、美しい層状の見た目が特徴のスイーツです。
カラフルな見た目と、昇進や成功など縁起の良い意味から、タイではお祝いの席で欠かせない伝統的なお菓子とされています。
今回の記事では、タイの文化を味覚から知りたい旅行者に向けて、カノムチャンの名前の由来や9層である理由、また独特の食感と味わい、そして現地でカノムチャンを買えるお店をご紹介します。
伝統菓子「カノムチャン」とは?意味や名前の由来
カノムチャンは単なるお菓子ではなく、タイ社会では、文化的かつ宗教的な地位と関係のあるお菓子です。
ここでは、「カノムチャン」の名前の由来や持つ意味について解説します。
タイの伝統菓子におけるカノムチャンのポジションと概要
カノムチャンは、日本の和菓子にあたるタイの伝統的な菓子の中でも、最上級の縁起物として特別な存在とされています。
カノムチャンは、仏教の寺院へのタンブン(お供え物)や結婚式、昇進の祝いなど公の重要な儀式や地域の行事で欠かせない特別なお菓子です。
カラフルで繊細な層になっている見た目の美しさから、「食べる宝石」とも呼ばれています。
タイ語での「カノムチャン」が持つ意味
カノムチャンという名前は、タイ語で「カノム(お菓子)」と「チャン(階・層)」というふたつの言葉が組み合わさってできています。
その名前の通り「層状のお菓子」を意味しており、この名前がお菓子の見た目と構造をわかりやすく表現しています。
タイの文化では、「チャン(層)」という言葉が、昇進や出世といった上への広がりを連想させる縁起の良い言葉とされています。
縁起物として使われる由来と背景
カノムチャンが縁起物とされる由来は、「チャン(層)」という言葉と、タイ語の「カオナー(昇進・出世)」という言葉が、音や意味で強く関連している点にあります。
その背景として、タイでは古くから、人生の成功やキャリアの発展の願いを込めて、この縁起物のお菓子を贈るという文化が根付いています。
そのため、ビジネスでは、企業の設立祝いや昇進祝い、プライベートでは新築祝いなど、新たな段階へ進む時に注文されることが多い商品です。
カノムチャンの色の魅力と9層である理由
カノムチャンの特徴は、カラフルな色と重ねられた層の美しさにあります。
ここでは、層状のお菓子カノムチャンとタイにおける数字の9が持つ縁起の良さとの関係性について解説します。
色付けに使われる天然の色素と色の種類
タイの伝統的な料理やお菓子には、自然の色を取り入れる文化があります。
カノムチャンの美しくカラフルな色は、主に天然の色素によってつけられています。
これらの自然な色合いがカノムチャンの見た目の魅力を高めています。
「9層」が持つ特別な意味とタイ文化
カノムチャンの層は9層で作られています。
その理由は、タイでは「9(カオ)」という数字が特別な意味を持つためです。
縁起の良い「前進する」、「進歩する」、「昇進する」といった言葉と同じ、
もしくは似ているため、吉数とされています。
タイでは、人生における節目や成功を願う特定の場面で、9という数字を意識的に取り入れる文化があります。
例えば、9人の僧侶を招いたり、贈り物を9個セットで贈るといったことをします。
カノムチャンは、濃い色の層と薄い色の層を交互に重ね、視覚的な美しさと9層という意味を共存させています。
伝統的な製法の「蒸し分け」の技術と作る手間
カノムチャンの美しさと食感の秘密は、伝統的な製法である「蒸し分け」の技術にあります。
カノムチャンの作り方は、生地をすべて一度に流し込まずに、薄い層を一枚ずつ型に流し込み、その都度、蓋をして蒸し固めます。
この作業を9層にするために9回繰り返すため、完成までに時間と手間がとてもかかります。
しかし、この時間と手間こそが、カノムチャンが縁起物として価値を持つ理由の一つです。
時間と手間を惜しまない本格的な作り方が、贈る側の真剣な気持ちを表すことに繋がるとされるためです。
カノムチャンをおいしく作る秘訣は、生地の粉の比率にあり、食感を左右する重要なポイントです。
カノムチャンの材料・レシピ

カノムチャンの独特なモチモチとした食感と風味は、厳選された材料とその配合比率により生み出されています。
ここでは、カノムチャンの食感を決める粉の役割と、風味の中心になるココナッツの重要性を解説します。
主材料のタピオカ粉と米粉が果たす食感の役割
カノムチャンの生地の主材料は、タピオカ粉と米粉です。
タピオカ粉は、モチモチとした強い弾力と粘りを生み出すために使われ、米粉にはコシや上品な柔らかさを加える役割があります。
この2種類の粉の比率を調整することこそが、カノムチャンの独特な食感を決定する最も重要な要素です。
カノムチャンに欠かせないココナッツミルクと砂糖
カノムチャンの風味の中心となるのはココナッツミルクで、滑らかに仕上がります。
タイの料理やお菓子では、ココナッツミルクが多く使われますが、濃厚で新鮮なココナッツミルクを使うことで、伝統菓子に深みが生まれます。
甘みをつける砂糖には、白砂糖だけでなく、豊かな風味のあるココナッツから採れるヤシ砂糖などが使われることもあり、これがタイ風の素朴で優しい甘さを作り出します。
カノムチャンの美しさと価値を生む伝統製法の「手間」と「技術」
カノムチャンは、前述の通り、単純に材料を混ぜて作るのではなく、薄い層を一層ずつ9層に重ねていく伝統的な作り方が特徴です。
この手間を惜しまない製法で作る技術こそ、カノムチャンが、他の大量生産が可能なお菓子にはない特別な価値を持っています。
カノムチャンを作るためには長時間の作業が必要であるため、縁起物として贈る相手への敬意や願いの強さを象徴するものとされています。
カノムチャンの味わい・食感の特徴
カノムチャンの一番の特徴は、モチモチ、ぷるぷるの食感とココナッツの甘い風味です。
ここでは、現地の人々が楽しむカノムチャンの伝統的な食べ方や、カノムチャンと相性の良い飲み物もご紹介します。
モチモチ・ぷるぷるの食感
カノムチャンの食感は、日本の食べ物で例えると、餅やういろうに近いですが、それよりもさらにぷるぷるとした強い弾力と粘りとモチモチ感を併せ持つのが特徴のお菓子です。
私自身も、タイデザート専門店で食べたことがありますが、餅よりも更に弾力がありながら、ういろうよりも柔らかさがある、それまでに食べたことがない独特な食感がありました。
この食感を出せる理由は、タピオカ粉と米粉を混ぜることにより、長時間経っても硬くなりにくい性質を持つためです。
ココナッツとパンダンの風味が香る独特な甘み
カノムチャンの風味は、濃厚なココナッツのミルクの甘みと香りが中心です。
緑色の層には、パンダンリーフと呼ばれるハーブで香りが付けられており、この爽やかな香りがココナッツの強い甘さと調和し、独特の甘さと風味を出しています。
タイの伝統的な甘さは、ココナッツの自然な旨味や香りを感じられるのが特徴です。
層を剥がして食べる伝統的な食べ方と最適な温度
カノムチャンには、食べ方の作法があります。
伝統的な食べ方として、「層を一枚ずつ剥がして食べる」方法が正しい食べ方として推奨されています。
その理由として、層をきれいに剥がせることが正しいカノムチャンの基本とされ、層を剥がす快感とひらひらの食感を楽しむことができるためです。
カノムチャンは、デザートショップでは常温販売、カフェなどでも常温で提供されることが多いですが、冷やしても美味しく食べられます。
カノムチャンと相性の良い飲み物
カノムチャンと一緒に楽しむ飲み物には、濃厚なココナッツの甘さを和らげる飲み物と相性が良いです。
濃いめに淹れた、ミルクや砂糖を入れていないタイティー、ブラックコーヒー、さらに、苦みのある日本の緑茶や抹茶が良く合います。
また、私自身は、レモンティーやレモネードなど酸味のあるスッキリした飲み物を合わせて楽しみます。
カノムチャンが買えるお店
カノムチャンは、ローカルの屋台から高級デパートまで様々なお店で購入できます。
ここでは、各お店で買う場合の違いとお店の選び方について解説します。
ローカル市場と屋台での購入
カノムチャンは、市場や屋台で最も安く買える店が多く、個人経営のお菓子屋さんでも購入できます。
市場や屋台では作り立てが買えますが、衛生面や日持ちには注意が必要です。
デパートや高級店での購入と品質比較
カノムチャンは、デパートの食料品売り場やタイの伝統菓子の専門店でも購入できます。
これらのお店のものは、市場のものと比較して価格は高いですが、厳選された材料を使い、美しい包装が特徴であり、贈答用やお土産には最適です。
また、品質管理が徹底されており、初めての人でも安心です。
お土産として持ち帰る場合の注意点
カノムチャンは、基本的に日持ちしません。
個人経営のお店であれば、保存料を添加していないため、最短で当日中、冷蔵で2~3日が目安です。
お土産にする場合は、帰国直前に保冷剤入りのセットを購入し、早めに食べることをおすすめします。
まとめ
カノムチャンは、「食べる宝石」とも言われるタイの食文化と伝統が込められたお菓子です。
時間と手間をかけて作られた9層の縁起の良い、モチモチとした独特の食感が魅力のスイーツでもあります。
屋台や市場、デパートなど様々な所で買えるため、タイを訪れた際には、ぜひカノムチャンからタイの食文化の奥深さを感じてみてください。