
みなさんは、コーヒー愛好家の間で幻とも称される
「アラミドコーヒー」をご存じでしょうか?
世界の高級コーヒー市場の中でも特に希少性が高く、価格は1杯あたり数千円にものぼることもあるアラミドコーヒー。
主な生産地はフィリピンの山岳地帯で、現地では「アラミド」または「カペ・アラミド」と呼ばれ愛されています。
このコーヒーの最大の特徴は、ジャコウネコという動物の力を借りてつくられること。
本記事では、このアラミドコーヒーの味や香りの魅力、なぜ幻とまで言われているのか、その理由や購入方法などを解説していきます。
アラミドコーヒーとは?
アラミドコーヒー(Alamid Coffee)はフィリピン原産の希少なコーヒーで、「シベットコーヒー」や「コピ・ルアク」とも呼ばれる一種の「動物コーヒー」です。
ジャコウネコが完熟したコーヒーチェリーを食べたあと、その排泄物から取り出された豆を使ってつくられており、そのユニークな生産方法で知られています。
特にフィリピンで採取されたものを「アラミドコーヒー」と呼びますが、その名称はジャコウネコの現地語「Alamid(アラミッド)」に由来しています。
体内発酵が生む独特の風味
アラミドコーヒーの最大の特徴は先述の通り、その製法にあります。
まずフィリピンの山岳地帯や森に生息する野生のジャコウネコが、自然の中で完熟したコーヒーチェリーを選んで食べます。果肉部分は消化され、豆は腸内で自然発酵されてから糞と共に、未消化の形で排出されます。
その後、現地の農家がジャングルの中からジャコウネコの糞を探して手作業で収集し、丁寧に洗浄・乾燥・焙煎を行って初めて「アラミドコーヒー」として出荷されます。
このように、人の手では再現できない自然発酵のプロセスと、極めて手間のかかる収集作業がこのコーヒーの価値を高めています。
ジャコウネコによる天然のコーヒーチェリー選別
唯一無二の風味の秘密は、第一に「発酵」です。
ジャコウネコの体内に入ったコーヒー豆は、胃酸や酵素の働きによってゆるやかに発酵されます。発酵によって豆のタンパク質が分解され、苦味が軽減されると同時に、まろやかで芳醇なコクが生まれています。
さらに、ジャコウネコはコーヒーチェリーを「選別」しています。ジャコウネコは非常に嗅覚が鋭く、最も熟して糖度の高いコーヒーチェリーだけを食べる習性があります。
人間が機械的に選別するよりも格段に質の高い実だけが選ばれるため、結果として非常に風味豊かなコーヒーとなります。
フィリピンの自然と共にある生産
アラミドコーヒーの主な産地は、フィリピンの山間部。標高が高く昼夜の寒暖差が大きい気候条件が、コーヒー栽培に適しています。
さらにフィリピンの火山灰が豊かな土壌にも恵まれ、育成環境が整っていることもアラミドコーヒーの特徴です。
そしてアラミドコーヒーの生産地では、自然の中でジャコウネコが自由に過ごす環境が保たれています。
一部の農園では、ジャコウネコを無理に飼育せず、野生のまま放し飼いで生活させており、倫理的にも環境に配慮した「サステナブルな農法」が注目されています。
生産量が極めて少ない「幻のコーヒー」
こういった生産過程や環境条件から、アラミドコーヒーは年間にわずかしか採取されない極めて希少なコーヒーです。
世界のコーヒー市場で見ても、その流通量はごくわずか。
日本国内でも取り扱い店は限られており、見つけたとしてもごく少量しか販売されていません。
アラミドコーヒーの味と香りの特徴
動物の体内で発酵した豆を使った…と聞くとやや抵抗を感じる人もいるかもしれません。
ですが、これはれっきとしたコーヒー豆の製法。
ここで、ジャコウネコの力で出来上がるアラミドコーヒーは実際にどんな味わいなのか、その味と香りの特徴について詳しく見ていきましょう。
まろやかで雑味のない口当たり
アラミドコーヒーの第一の特徴は、まろやかでスムーズな口当たり。
ジャコウネコの体内で発酵・分解されることで、一般的な深煎りコーヒーで感じられるような苦味や酸味の角が取れ、雑味のない柔らかい風味を楽しむことができます。
チョコレートやナッツを思わせる甘み
ローストするとフルーティーな甘い香りを醸し出し、ダークチョコレートやヘーゼルナッツに似た風味、甘みが感じられます。
芳醇な後味が舌に残り、ブラックで飲んでも砂糖を加えたかのような優しい甘みを感じることも。酸味は控えめでありながら、単調ではなく、味の奥行きとバランスが絶妙なのが特徴です。
豊かなアロマと長い余韻
飲んだ後にも長く残る香りと味の余韻も、アラミドコーヒーの魅力のひとつ。口の中でゆっくりと味わうことで、鼻から抜ける芳醇な香りがより強く感じられます。
まるで高級ワインを味わうような感覚で複雑なアロマをゆったり楽しむことができるため、高価ながら世界のコーヒー愛好家たちを魅了しています。
アラミドコーヒーはなぜ「世界一高価」なのか?
世界一高価なコーヒーとして知られているアラミドコーヒー。
その価格は一般的なコーヒーの数十倍にも及ぶことがあり、100gあたり数千円〜1万円を超えることも!
その背景には明確な理由があります。
ジャコウネコによる自然な選別と発酵
先述の通り、アラミドコーヒーはジャコウネコという動物の本能による「目利き」によって、人の手では到底成し得ない選別が行われています。
そこから体内での発酵というプロセスを経て、通常のコーヒーとは異なる深い味わいを生み出します。
人間が機械で行う豆の選別や加工とは生産効率も段違い。このような手の込んだ特別なプロセスこそが、アラミドコーヒーの希少性と価格を押し上げる大きな要因となっています。
完全手作業による丁寧な加工
アラミドコーヒーの精製は一般的な大量生産のコーヒーとは異なり、ほぼすべての工程が手作業で行われます。
収穫された豆はまず徹底的に洗浄され、異物や未熟豆を取り除く工程を経てから天日で乾燥、その後殻を取り除き、焙煎されてようやく製品となります。
品質保持と衛生管理のために細心の注意が払われ、手間と人件費がかかるため、その分価格も高くなる傾向にあります。
極めて少ない生産量
これまで見てきたように、アラミドコーヒーの生産には多くの手間と時間がかかります。
まず、ジャコウネコが野生で自然に完熟したコーヒーチェリーを食べる機会は限られており、その量もごくわずか。
1匹のジャコウネコが1日に排出するコーヒー豆の量はごく少量ですし、年間を通しても極めて限られた量しか収穫できません。
山に生息する完全な野生のジャコウネコからは、年間でたった500kgしか生産できないのです。
そのため市場に出回るアラミドコーヒーは絶対量が少なく、希少性の高さがそのまま価格に反映されるのです。
倫理性と持続可能性の担保
真のアラミドコーヒーは、ジャコウネコを檻に閉じ込めることなく野生で自然に食べたコーヒーチェリーからつくられます。
ジャコウネコは檻の中では、ストレスによって本来の野生の力を100%発揮できず、コーヒーチェリーの選別も野生環境下より質が下がることがわかっています。
近年は動物保護の観点からも倫理的な生産方法が重視されてきて、「野生採取であること」を明記した製品の価値はさらに高まっています。
結果としてコストは高くなり、コーヒーの価格に反映されています。
アラミドコーヒーの購入・淹れ方・保存のコツ
せっかくの高級品も、取り扱いを誤ると風味が損なわれてしまいます。ここでは、アラミドコーヒーを美味しく飲むための実践的なヒントをご紹介していきます。
購入のコツ
アラミドコーヒーはその希少性から、偽物や混合品も市場に出回っています。
購入時は以下の点に注意することが大事です。
・信頼できる販売店か
フィリピン国内の正規店や、公式サイト経由の購入がおすすめです。海外通販の場合は認証マークをチェックしましょう。
・100%アラミドコーヒーかどうか
「アラミドブレンド」などと書かれているものは、他の豆が混ざっている可能性があります。純度の高いアラミドコーヒーを飲みたい場合は、内容をしっかり確認するようにしましょう。
・焙煎日や賞味期限の記載があるか
味わいには鮮度が重要なため、焙煎から時間が経っていないか確認しましょう。
・極端に安すぎないか
価格の目安は、100gで約5,000〜10,000円程度。極端に安い場合は、品質を疑ったほうが無難でしょう。
淹れ方のコツ
アラミドコーヒーの繊細な香りと味わいを最大限に引き出すため、丁寧な抽出をしましょう。
おすすめはハンドドリップです!
以下で具体的なコツをご紹介します。
保存のコツ
アラミドコーヒーは鮮度が命。また、劣化しやすいため適切な保存が欠かせません。
・密閉容器に入れる
空気に触れると酸化が進むため、ジップロックやコーヒー専用キャニスターを使いましょう。
・直射日光・高温多湿を避ける
冷暗所で保存するのが理想的。冷蔵庫は結露による湿気のリスクがあるため避けましょう。
・豆のまま保存で長持ちさせる
豆はできれば飲む直前に挽くのがベスト。未開封であれば約3か月、開封後は2週間〜1か月以内を目安に飲みきるのがおすすめです。
まとめ
フィリピンのジャコウネコによって生み出される、極めて希少で高価なコーヒーであるアラミドコーヒー。
その独特な製法から生まれるまろやかで雑味のない味わい、チョコレートのような甘い香りは世界のコーヒー愛好家たちを魅了し続けており、立派なフィリピンのいち文化となっています。
価格だけでなく、その生産過程や環境への配慮も魅力であるアラミドコーヒーは、フィリピン旅行の思い出や、特別な日のご褒美、コーヒー好きな方へのプレゼントとしても最適です。
この記事を参考に、ぜひ一度はその贅沢な一杯を体験してみてくださいね!
◇経歴
幼稚園時代をシンガポールで過ごし、現地の友達と英語でよく遊んでいました。小学校からは日本で暮らし、中学生の時にカナダにホームステイした経験から海外での暮らしに魅了され、東京外国語大学に進学。
在学中にバンクーバーへの留学を経て就職し、新卒で入った会社では外資系クライアントと英語でやり取りをしていました。
現在は仕事で英語を使う機会はほとんどないものの、趣味として楽しく勉強し続けています!
◇資格
TOEIC940点、TOEFL iBT 90点
◇留学経験
バンクーバー(カナダ)、半年間、ILSC vancouver
◇海外渡航経験
・シンガポール(居住・旅行)
・マレーシア(旅行)
・モルディブ共和国(旅行)
・サイパン(旅行)
・カナダ(ホームステイ・留学)
・グアム(旅行)
・タイ(旅行)
・ドイツ(旅行)
・イタリア(旅行)
・トルコ(旅行)
・インドネシア(旅行)
◇自己紹介
英語が話せるだけで、世界中の「私が自分の言葉で会話できる人」の母数がぐんと広がったことが、私にとってはいちばん面白いポイントでした!これからも英語を通じていろんな地域のいろんな文化や人に触れ、知らないことを知っていきたいと思っています。