マレーシアの食文化完全ガイド|マレー系・中華系・インド系・ニョニャ料理の違いとは?

「マレーシア料理」と聞いて、すぐに特定の料理を思い浮かべることができる人は、実はあまり多くありません。

これは決して、マレーシア料理が人気がないというわけではなく、マレーシア料理のあまりに多様なバリエーションのため、代表的な料理が決められないのです。

複数の民族が暮らすマレーシアでは、長年に渡り様々な民族が自分たちの料理を広めてきました。

今回の記事では、そんな多くの側面を持つマレーシア料理を徹底解説していきます。
知れば知るほど面白くなっていく奥深いマレーシア料理の世界に、どっぷりとはまっていってください。

多民族国家マレーシアの食文化の背景

 

マレーシアには、大まかに分けても、マレー系、華人系、インド系、先住民と、様々な民族が共に住んでいます。

それは当然食文化にも大きく影響しているため、マレーシアの食は民族や文化と切り離せない関係にあるのです。

ここでは、民族と文化という観点からマレーシアの食文化の背景を見ていきます。

 

多数を占めるのはマレー系

 

イスラム教徒が多いマレー系の人種は、全体の7割を占めます。

ココナツミルクで炊いた米にサンバル、揚げた小魚、ピーナッツ、ゆで卵を添えた素朴な国民食ナシレマッを筆頭に、国民的な料理が多くあります。

イスラム教で許された食材しか使うことができないため、他の民族から見ると少し偏りがあるように感じます。

 

19世紀にやってきた華人

 

19世紀ごろ、ゴム農園の開発をきっかけに多くの華人(中国にルーツを持つ人々)がマレーシアへやってきました。

福建、潮州、客家など、中国各地の料理を持ち込み、それにマレーシア香辛料やココナッツミルクなどを加えて、独自のスタイルを確立しました。

華人の人々には、宗教による食べ物の規制がありません。しかしマレー系の人々と共生をしていくため、豚肉を使わないなどの工夫をした中華料理を提供する飲食店が増えています。

 

7%の勢力インド系

 

7%という少ない割合にも関わらず、大きな影響力を持つのがインド系です。

華人と同じくゴム農園をきっかけに渡来したのち、バナナリーフに盛るミールス、ロティチャナイやタンドリーチキンなど、マレーシアでスタンダードになっている料理を数多く広めました。

また、ヒンドゥー教は牛肉を食べないため、他宗教との食の棲み分けが進みました。

 

文化や宗教に寄り添う食文化

 

多くの地域では、外からやってきた文化、特に宗教的なものは敬遠されがちです。

しかしマレーシアでは受け入れと共生を勧めており、外からの文化を否定することはありませんでした。

逆に外からやってくる人々も、自分たちの文化を守った上で現地の思想を尊重してきました。

こういった、お互いを認め合うやり方が、今のマレーシア料理の文化の土台となっています。

 

マレー料理の特徴と代表的な料理

 

様々なカラーが入り混じって出来上がった「マレー料理」というジャンルですが、どのような料理で、その中でももっとも代表的な料理は何なのでしょうか?

マレー料理の特徴と、代表的な料理を紹介していきます。

 

マレー料理の特徴

 

マレー料理はハーブ、スパイス、ココナッツミルクが多く使われることが特徴です。
酸味と辛味が強く、ハッキリとした味わいが目立ちます。

また、米文化と小麦文化が共存しており、主食のバリエーションが豊富です。

また、複数のスタイルを掛け合わせて新しいレシピを作ることも日常的に行われており、その「フュージョン」そのものがマレー系料理の特徴ともなっています。

 

代表的なマレー料理

 

数あるマレーシア料理の中でも、特に代表的と言われる料理を紹介します。

・ナシレマッ

ココナッツミルクで炊いたごはんに、サンバル、揚げ小魚イカンビリス、ピーナッツ、卵、キュウリを入れた米料理です。

屋台から高級レストランまで、どこでも食べることのできる国民食です。

・アッサムラクサ

タマリンドと魚出汁をベースにした、辛くて酸味のあるスープ麺です。
辛さの中にある、ミントやパイナップルの爽やかさがクセになります。

・レンダン

ココナッツミルク、ターメリック葉、カランガルなどで牛肉を煮詰めた料理です。イメージ的にはドライカレーに近いです。
お祝いのイベントでよく出されます。

・サテ

鶏、牛、羊の串焼きです。ピーナッツソースにつけて食べます。
豚肉が使われてないのは、宗教的配慮のためです。

 

中華系料理の多様性とマレーシアでの進化

 

中国は言わずと知れた料理大国ですが、マレーシアの食文化はそんな中国の影響も大きく受けています。
実際にマレーシアのフードコートなどを訪れると、中国語を聞く機会も多いでしょう。
中華系料理とマレーシアの食文化の関係性を見ていきます。

 

マレーシアンチャイニーズ

 

16世紀ごろから、中国の人々はマレーシアと交流を積極的に行っていました。

19世紀には当時マレーシアを支配していたイギリスが労働力を欲していたこと、そして当時の中国が自国民の排外渡航をオフィシャルに許可したことから、マレーシア全土まで中国人が行き渡りました。

その時代の中国人たちは、マレーシアの宗教や文化の中で生きていくため、自国の料理をマレーシア風にアレンジしていきました。

 

マレーシアの中華系料理のバリエーション

 

・福建系

ホッケンミーやバクテーなどが代表の、ラードと濃い醤油が特徴の料理です。
イカンビリスやチリを加えています。

・潮州系

魚介系のスープと漬け菜が特徴です。
マレーシアではインド系のスパイスや酸辛味が加わりました。

・客家系

保存食文化の濃い客家系では、塩漬けの豚やハーブのお粥が有名です。
ムスリムの人々向けに鶏肉やラムが使われるようになりました。

・広東系

点心や雲呑麺が有名です。
マレーシアではココナッツミルクを使ったバオずや、宗教的な配慮からラードを使わないチキン叉焼包などが生まれました。

 

コミュニティ・宗教・流行り

 

マレーシアに住む中国人たちは中国の伝統を尊重しながらも、マレーシアというコミュニティ、マレーシアに集まる多様な人々の宗教、時代によって変わる流行りを考慮し、さまざまな料理のスタイルを生み出してきました。

マレーシアの食文化において、重要な一部になっているのは必然なのかも知れません。

 

インド系料理とスパイス文化の影響

 

実際にマレーシアに行くとわかるのですが、ストリートフード店が集まる場所やフードコートなどに行くと、スパイスの香りが立ち込めています。

これは19世紀に渡来した南インド系タミル人と、グジャラート商人の影響が、今も色濃く残っているためです。

インド系とマレーシアの関係性を掘り下げていきましょう。

 

南インド系

 

南インドのドラヴィダ系民族のタミル人は、ゴム農園や鉄道建設の労働力としてマレーシアに移住してきました。

米食中心の菜食プレート「ミールス」やバナナリーフ、サンバルは瞬く間にマレーシア全土へ広がり、マレーシア料理のスパイスの層をより厚いものにしました。

 

北インド・ムスリム系

 

北インドの人々は、ムスリム主体のレストランを多く設立し、ムスリムの人々が安心してマレーシア料理を楽しむことができる「マレーシアン・インディアン」を生み出しました。

 

香辛料の貿易

 

インドネシア、マレーシア、シンガポールに囲まれるマラッカ海峡は16世紀にポルトガル人に
「黄金よりも貴重」と言わせたクローブとナツメグの公益ルートでした。

インドのケララやグジャラート商人が持ち込んだガラムマサラ文化はマレーシアのスパイス文化をより複雑で奥深いものへと昇華したのです。

多様なバックグラウンドを持つマレーシア料理の中で、独自のスタイルを持って生まれたのが、ニョニャ料理です。

さまざまな要素を掛け合わせてできたニョニャ料理の特徴や、代表的な料理を見ていきます。

 

ニョニャ料理とは

 

ニョニャ料理は、15から16世紀にマレー半島へ移住した中国系移民の文化から生まれた料理スタイルです。

中国の調理技術にマレーシアやインドネシアのスパイス、ココナッツミルクが加わり数々の香り豊かな料理が生まれました。

 

ニョニャ料理の特徴

 

ニョニャ料理の特徴は丁寧な下ごしらえです。

香辛料は一からすりつぶし、ペーストを作る工程も重要視しています。

レシピは口伝えで残っているものが多く、地域や家庭によって味が微妙に異なるのも魅力の1つです。

 

代表的なニョニャ料理

 

代表的なニョニャ料理は、スパイスとココナッツミルクを使ったスープの「ラクサ」、果実で酸味を加えた鶏肉料理の「カピタンチキン」、蒸し菓子の「クエ」などです。

 

マレーシアでニョニャ料理を食べるならどこ?

 

最後に、マレーシアでニョニャ料理を食べることができるレストランを紹介します。

・Limpaulo:Baba Can Cook

マラッカ出身の中華系男性のUncle Johnさんが手がける、クアラルンプールにある本格ニョニャ料理店です。
人気メニューの「ニョニャ・ラクサ」はミシュランガイドにも掲載されました。

・Nancy’s Kitchen

マラッカの中心に位置する老舗ニョニャレストランです。
家庭的な味付けが人気で、現地の人にも観光客にも人気です。

・Kebaya Dining Room

ペナン国際空港の近くにある家庭料理レストランです。
Jiu Hu CharKerabu Chikenなどの伝統料理が人気です。

 

まとめ

 

名前だけ聞くとピンと来づらいマレーシア料理ですが、とても奥深く、ハマったら抜け出せなさそうな魅力がありますね。

マレー系のハラール料理、華人の炒麺や豚骨薬膳、インド系が広めたスパイス香るロティやビリヤニ、そして中華とマレーが融合した華麗なニョニャ料理。

さまざまなテイストがおりなすその様は、さながら味のモザイクアートと言えるのではないでしょうか。

このような複雑な文化を十分に堪能するには、現地の人々との交流が欠かせません。

マレーシアではマレー語のほかに、英語も広く話されています。

ネイティブキャンプでは、24時間365日マンツーマンでレッスンができます。

マレーシアを訪れる前に、マレーシア料理をレッスン課題に英語力を磨いておくのもいいのではないでしょうか。

 

 

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