近年、旅行や留学先として人気のフィリピンは、キャリアアップや国際経験を求める人々から移住・就職先としても注目されています。
現地生活の充実には、給与水準や生活費のバランスを把握し、生活の質をイメージすることが重要です。
この記事では、フィリピンの平均年収、地域別・職種別の年収差、生活費との関係、さらに外資系企業や駐在員の給与事情についても解説します。理想の働き方とライフスタイルを検討する上で、ぜひ参考にしてください。
- フィリピンの平均年収は?基礎データと国全体の傾向
- 地域別に見る年収格差:首都圏 vs 地方
- 職種・業種別に見る年収水準の違い
- 物価・家計水準との関係:年収でどこまで生活できる?
- 外資・海外駐在者との年収比較
- まとめ
フィリピンの平均年収は?基礎データと国全体の傾向
経済成長が好調なフィリピンの現在の年収は、どれほどなのでしょうか。
フィリピン統計局 (PSA)発表のデータによると、フィリピンの2023年全地域の平均年収は353,230ペソ(約883,651円。 1PHP=2.5円換算)です。
2022年の日本の平均世帯年収(約524万円)と比べると1/6ほどですが、フィリピンの賃金は、経済の発展やインフレ、国際的な競争により上昇傾向にあります。
2023年度はASEAN諸国の中でトップクラスの実質GDP成長率5.5%を記録。サービス業がGDPの6割、鉱工業が3割、農林水産業が1割を占めます。
中でも、英語力と高度な教育水準を背景としたBPO (業務プロセスのアウトソーシング )がサービス産業の中心を担っています。鉱工業では半導体をはじめとする電子産業が輸出の主力で、製造業全体も重要な役割を果たしています。
また、海外で働くフィリピン人(OFW)の送金は消費拡大に貢献し、経済発展を牽引しています。
フィリピン統計局
https://psa.gov.ph/statistics/income-expenditure/fies
地域別に見る年収格差:首都圏 vs 地方
フィリピンは都市部と地方の収入格差が大きく、首都圏から周縁に行くほど、その程度が広がる傾向にあります。
最も世帯平均年収が高かったマニラ首都圏(513,520ペソ)と,最も低い地域バンサモロ自治区(206,880ペソ)では約2倍の開きがありました。
【行政地域ごとの平均世帯年収】
マニラ首都圏 | 513,520(128万3800円) |
中部ビサヤ地方(セブ含む) | 326,940(81万7千350円) |
ダバオ地方 | 318,950(79万7千375円) |
バンサモロ自治地域 | 206,880(51万7千200円) |
就労機会、職種の差や、物価水準が地域の給与水準に反映されます。都市部には、資本、企業や工場が集積し、就労先や専門職の選択肢が豊富で、物価も高いため給与水準が高い傾向にあります。
その一方で、農業や零細な商売が多い地方では現金収入と働き口が限られ、収入が伸びづらい状況です。さらに、自然災害の被害の大きさや治安の不安定さによる開発の遅れも、地域の低所得の一因となることがあります。
職種・業種別に見る年収水準の違い
業種・職種ごとにどのような年収が期待できるのでしょうか。
IT関連、金融のハイスキル人材は特に需要が高く、優秀な人材を確保するために給与水準が高めです。外資系企業との競合で、さらに給与水準が上昇傾向にあります。
流動性の高いフィリピンの労働市場では、BPO、コールセンターなどの業種で高待遇により優秀な人材へのアピールと流出防止を行うことがあります。人材不足の医療分野も所得の高い業種です。
以下はPSAの職種・業種別月収統計の一部を、年収に置き換えたものです。
業種 | 職種 | 月収(PhP) | 年収換算(PhP) | 円換算 |
航空業界 | パイロットその他専門職 | 135,363 | 1,624,356 | 406万円 |
IT産業 | ソフトウエア開発 | 70,595 | 847,140 | 212万円 |
BPO関連 | 経理アウトソーシング業務 | 45,548 | 546,576 | 137万円 |
オペレーター | 27,441 | 329,292 | 82万円 | |
金融・保険 | 保険数理士 | 69,654 | 835,848 | 209万円 |
医療 | 医師 | 57,476 | 689,712 | 172万円 |
看護師 | 20,715 | 248,580 | 62万円 | |
電子機器製造 | 製造技術者 | 31,552 | 378,624 | 95万円 |
鉱業 | 地質学者 | 49,059 | 588,708 | 147万円 |
鉱員・砕石 | 12,982 | 155,784 | 39万円 | |
建設 | 土木技術者 | 28,339 | 340,068 | 85万円 |
大工 | 13,884 | 166,508 | 42万円 | |
宿泊・飲食業 | 調理人 | 14,799 | 177,588 | 44万円 |
交通 | ドライバー | 17,192 | 206,304 | 52万円 |
卸売・小売 | 商品在庫管理 | 12,315~12,968 | 147,780-155,616 | 37-39万円 |
フィリピン統計局
https://psa.gov.ph/system/files/lsredsd/2-%28ons-cleared%29-2022%20OWS%20Tables-signed.pdf
同じ業種でも、職種や専門性によって給与水準が異なることがわかります。その他、企業規模、学歴、経験、地位、地域によっても給与は異なってきます。
また、2018年の発表では、18,200ペソ以下を低所得層、109,200ペソ以上を富裕層と位置付けており、生活をうかがい知る一つの目安となります。
職人、農業分野、建設・鉱山などの労働者、未熟練労働者の所得水準は引く、およそ月収で11,000-14,000ペソ(約27,000~35,000円)です。
日雇いや非正規雇用、短期契約が多いため、低賃金に留まりやすいという特徴があります。このように、高収入の仕事は、高度な教育が求められる狭き門です。
PIDS
https://pidswebs.pids.gov.ph/CDN/PUBLICATIONS/pidspn1818.pdf
物価・家計水準との関係:年収でどこまで生活できる?
フィリピンの物価はおおよそ日本の1/2ほどです。現地の平均年収、郊外では工夫次第で快適な暮らしが可能でしょう。しかし、ゆとりのある生活を送るには、平均以上の収入が必要です。
地域、住居のグレード、生活形態によっては必要な費用が異なります。特にマニラやセブの中心地は家賃が高いので、セキュリティ・家具付き以上の物件は、日本と大差がないかそれ以上に高額なこともあります。
ローカル食堂や自炊を取り入れば食費を抑えられますが、自炊時でもスーパーマーケットでの輸入品は、生鮮食品をはじめとして高価格です。
マニラ、セブ、ダバオの3都市の標準価格を比較してみます。
アパート家賃/月 寝室1部屋 |
光熱費45m2 | インターネット | スマートフォン月額 | 交通費 | |
マニラ | 市内中心:27,045 郊外:14,433 |
4,800 | 1,575 | 1,240 | ・ジプニー:13PhP≠ ・1ヶ月定期:664 |
セブ | 市内中心:27,500 郊外:12,500 |
5,040 | 1,699 | 1,936 | ・ジプニー:13PhP~ ・1ヶ月定期:850 |
ダバオ | 市内中心:18,333 郊外:10,000 |
4,058 | 2,040 | 1,907 | ・ジプニー:12PhP~ ・1ヶ月定期:800 |
食費
庶民的な外食 | 中級レストラン | 卵/Lサイズ12個 | 牛乳/1L | 国産ビール | 輸入ビール | |
マニラ | 300 | 700 | 122 | 107 | 85 | 150 |
セブ | 200 | 600 | 122 | 123 | 90 | 120 |
ダバオ | 250 | 675 | 115 | 97 | 80 | 100 |
参照
NUMBEO:https://www.numbeo.com/cost-of-living/
Expatistan:https://www.expatistan.com/cost-of-living
仮に、単身者が通勤のためにマニラ市内に1寝室付きの部屋を借りたとします。
朝食に、近所のローカル食堂「カレンデリア」でスープと野菜炒めライスを食べ、バスで移動し、休憩にコーヒーを購入、ランチは近くの庶民的なレストランでとり、スーパーで買い物をして夕食は自炊、といった1日が典型だとします。
すると、朝食100ペソ、昼食300ペソ、コーヒー150ペソ、夕食400ペソ、交通費30ペソとみて、1ヶ月29,400ペソ、光熱費・通信費7,500ペソとして、月の生活費の概算は37,000ペソです。家賃を含めて出費の概算は一年で約770,000ペソ(約192万円)となります。
一方、ダバオの郊外で同様の生活をした場合、支出を月33,000とすると、年間の支出は約516,000ペソ(約130万円)です。レジャーや娯楽、交際費、医療費などを考慮すると、もう少し余裕が必要でしょう。
部屋の条件やライフスタイルよって収入と支出のバランスは異なってきますが、提示された給与から生活水準の情報を集めることは、就職を検討する上で重要です。
外資・海外駐在者との年収比較
フィリピンでの就職を検討している場合、雇用主がローカル企業か、それ以外かは重要な選択基準となります。日本文化に親しみがある方ならば、日本企業への所属も視野に入ることでしょう。
外資はトップクラスで優秀な人材を獲得するため、好条件を提示します。特に、BPO、IT産業、金融での雇用が盛んです。
例えば、IT業界でソフトウェア開発者の年収は、外資系企業1,200,000PhP (300万円)なのに対し、ローカル企業では800,000 (200万円) 大きな差が出ることもあります。
参照
Playroll:https://www.playroll.com/blog/philippines-average-salary
駐在員として駐在事務所で働く場合、日本企業で働いていた収入を維持できるうえ、役職に応じた昇給も期待できます。日本同様の福利厚生が適用されることが多く、赴任手当や住居費補助が支給されるケースも少なくありません。
ただし、駐在員になるためには、所属企業での実績と経験が求められ、かつ会社の意向に沿ったタイミングでの赴任となるため、自由な移住を望む場合には不向きです。また、赴任期間は通常数年と限られている点にも注意が必要です。
近年では現地採用をおこなう日系企業も増えています。製造業の管理職や日本語を活かしたBPO、英会話業界、観光業、調理人など多業種で募集があり、賃金も上昇傾向です。
日系企業はローカル企業に条件を近づける傾向にあり、ローカル企業との競争も高まっていますが、福利厚生の条件も整いつつあり、フィリピンで働く選択肢が広がっています。
まとめ
フィリピンでは経済成長に伴い賃金が上昇傾向にありますが、地域や職種によって年収格差が大きいのが現状です。また、高収入を得るためには、高度なスキルを持つ人材として選ばれる必要があります。
生活水準は、収入、勤務地(地域)、そして大きな固定費となる住居費に大きく左右されます。求人を検討する際には、給与額だけでなく、勤務地や生活コストも含めて、どのような生活が可能かをしっかりと調べることが重要です。
就職の方法には、外資系企業への就職、日系企業の駐在員採用、現地採用などさまざまな選択肢があります。現地の給与水準と比較しながら、自分が納得できる条件の企業を選ぶことが、フィリピンで就職をする上で大切です。
◇経歴
土や紙をつかった造形や、ドローイングをしています。
◇資格
TOEIC 955
◇留学経験
スコットランドにあるグラスゴーの大学で、4年間美術を学びました。
◇海外渡航経験
今までたくさん旅をしました。
イギリス、フランス、イタリア、スイス、ベルギー、オランダ、チェコ、スロバキア、オーストリア、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、中国、香港、韓国、ネパール、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア
色褪せた思い出を蘇らせようと、古いデジカメのデータを読み込もうとしたら、ほとんど消失していてショックを受けました。
今思えば貴重だった家族旅行、感動した景色、美味しかった食べ物、かけた時間や使ったお金が写真に詰まっていたように感じられ、寂しかったです。一瞬一瞬を大切に、これからも旅を続けようと思います。
◇自己紹介
日本の一般大学を卒業した後、憧れていた海外の美術大学に留学しました。
語学の面で苦労しましたが、留学の経験は宝です。
現在、作品の制作・発表と、ライター活動、コツコツ英語の勉強をしております。
書くことを通じて、経験を活かしながら、学びを続けたいと思っています。