フィリピンにはさまざまな言語が存在しますが、その中でも特に話者が多いのがセブアノ語です。セブ島を中心に広く使われており、フィリピン国内では英語やタガログ語に次ぐ重要な言語とされています。しかし、セブアノ語について詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、セブアノ語の基本知識や特徴、学習のポイントをわかりやすくご紹介します。フィリピンへの留学や旅行を考えている方や、現地の文化に興味がある方にとってセブアノ語を学ぶことは貴重な経験になるでしょう。この記事を通じて、セブアノ語の魅力を感じてみてください。
セブアノ語とは?
セブアノ語は、フィリピンで広く話されている言語の一つです。「セブアノ語」はフィリピンのセブ島に由来し、スペイン語の接尾辞「-ano」が付いたものです。地元では、「セブ語」や「スグボアノン (Sugbuhanon/Sugbuanon)」「ビニサヤ (Binisaya)」などとも呼ばれています。
セブアノ語は、オーストロネシア語族に属しており、その中でもマレー・ポリネシア語派、フィリピン語群、中央フィリピン諸語、南ビサヤ小語群に分類されます。これは、インドネシア語やマレー語とも遠い親戚関係にあることを示しています。
フィリピン国内では、ヴィサヤ諸島の中部で広く話されています。第一言語話者は1,800万人、第二言語話者も1,000万人いるとされています。これは、フィリピン国内だけでなく、世界的に見ても比較的多くの話者を持つ言語と言えるでしょう。
セブアノ語の歴史
セブアノ語の歴史を少し見てみると、16世紀までは インド系の音節文字 が使われていました。しかし、 スペインの植民地支配 以降は、 ラテン文字(Abakada) を用いた表記体系が一般的になりました。
また、セブアノ語は、フィリピンの他の言語と同様に、 スペイン語からの借用語 が多いという特徴を持っています。特にセブアノ語は、 スペイン語の影響を強く受けている と言われています。例えば、「章」はスペイン語の「capitulo」に由来する「kapitulo」と言います。ただし、外来語であっても、元のスペイン語の綴りや発音から変化している場合もあります。
セブアノ語の文法
セブアノ語の文法の大きな特徴の一つに、基本語順がVSO型(動詞-主語-目的語)であることが挙げられます。これは、日本語のSOV型(主語-目的語-動詞)とは大きく異なる点です。
動詞には、「法」(既然・未然・無然)と「相」(非使役相・使役相)を示す接辞が付くことがあります。「法」は、行為がすでに行われている状態(既然)、まだ行われていない状態(未然)、または命令や要求を意味する状態(無然)を表現します。
一方、「相」は、行為の様態を示し、例えばそれが瞬間的か継続的か、または能力や可能性を示すかなどを区別する役割を持っています。
また、セブアノ語には、「gusto(好む)」「kinahanglan(必要な)」「mahimo(可能な)」のような、疑似動詞構造を持つ語彙があります。これらの語は、動詞の未然形に付いて助動詞のような働きをし、意味の中心となる動詞に先行します。
例えば、「私は明日セブへ行きたい」は「Gusto ako muadto sa Cebu ugma」、「私は市場へ行かなければならない」は「Kinahanglang muadto ako sa merkado」、「私にその本が読めるか」は「Mahimo bang mubasa ako ug libro?」のように表現されます。
セブアノ語の語彙と表現
セブアノ語には「態度小辞」と呼ばれる小さな言葉があり、これを文に加えることで、可能性(kaha)、仮の願望(unta)など、さまざまなニュアンスを表現することができます。
例えば、「これは可能ですか」は「Mahimo kaha kin?」、「彼(女)らは良いそうだ」は「Maayo kono sila」、「彼(女)らだ、間違いなく」は「Mao gyud na sila」、「私は食べ物が買いたい」は「Gusto unta ko mupalit og pagkaon」のように表現されます。
数詞も独特の体系を持っています。1から10までは「usá, duhá, tulú, upát, limá, unúm, pitú, walú, siyám, napúlú」。11からは「napúlú'g usá」(10と1)のように、「napúlú(10)」に「ug(と)」と一桁の数を組み合わせて作られます。20は「kawha-an」、30は「katlo-an」、40は「kap-atan/kap'atan」のように、十の位は語尾が変化します。
このように、セブアノ語は独特の音韻体系や文法構造を持っています。フィリピンを訪れる際や、セブアノ語を母語とする人々と交流する際に、少しでも知っておくと会話を楽しむことができるでしょう。また、セブアノ語版のウィキペディアは、2019年現在、記事数がアジアで最も多いウィキペディアの一つであることも特筆すべき点です。
ビサヤ語との違い
セブアノ語とビサヤ語の違いについてですが、厳密に言うと、セブアノ語とビサヤ語は完全に同じではありません。セブアノ語は主にセブ島周辺で話されている言語であるのに対し、ビサヤ語はそれよりも広い地域で使われている言語です。具体的には、セブ島が位置するビサヤ地方だけでなく、ミンダナオの一部などでもビサヤ語は話されています。
話される地域には違いがあるものの、大まかにはセブアノ語とビサヤ語は同じものとして捉えられています。しかしながら、発音や細かい点で若干異なる箇所が存在することも指摘されています。フィリピン語を標準語とするならば、タガログ語は東京弁、セブアノ語は大阪弁、そしてビサヤ語は関西弁のような関係性であるとされています。この例から、セブアノ語がビサヤ語の一種であり、特定の地域に特化した言語であることが理解できるでしょう。
ただし、重要な注意点として、タガログ語とセブアノ語は方言レベルの差ではなく、完全に異なる言語です。タガログ語のみを話すフィリピン人がセブアノ語を聞いても理解することはできません。セブにいるフィリピン人がこの違いを理解し、さらに英語も話せることは特筆すべき点と言えるでしょう。
したがって、セブ島で使われている言葉はセブアノ語であり、セブの人々と円滑にコミュニケーションを取るためにはセブアノ語を学ぶことが推奨されています。ビサヤ語はより広範な地域で使われる包括的な名称であり、セブアノ語はその一部であると理解するのが適切でしょう。
タガログ語と比較
フィリピンには170を超える言語が存在する多言語国家ですが、その中でも特に広く使われているのがタガログ語(フィリピンの標準語)と、セブ島を中心に話されるセブアノ語(ビサヤ語)です。同じフィリピンの言語でありながら、セブアノ語とビサヤ語は単なる方言の違いを超え、それぞれ独自の特徴を持っています。本稿では、タガログ語とセブアノ語の違いを比較しながら、初心者にも理解しやすいように解説します。
基本的な単語とフレーズの違い
最も分かりやすい違いは、日常的に使う単語やフレーズです。
タガログ語:Magandang umaga(マガンダン ウマガ)
セブアノ語:Maayong buntag(マアヨン ブンタッグ)
「こんにちは」:Kumusta?(クムスタ)
「ありがとう」:Salamat(サラマット)
しかし、同じフレーズでも発音やイントネーションに違いがあるため、注意が必要です。
単語の違い
日常会話で頻繁に使われる単語にも大きな違いがあります。
セブアノ語:Pagkaon(カオン)
セブアノ語:Gwapa(グワパ)
文の構造と質問表現の違い
質問の仕方も異なります。
タガログ語:Anong ginagawa mo?(アノン ギナガワ モ?)
セブアノ語:Unsa imong gibuhat?(ウンサ イモング ギブハット?)
タガログ語:Anong oras na?(アノン オラス ナ?)
セブアノ語:Unsa na oras?(ウンサ ナ オラス?)
また、場所や方向を尋ねる表現にも違いがあります。
タガログ語:Saan ka pupunta?(サアン カ ププンタ?)
セブアノ語:Asa ka padulong?(アサ カ パドルング?)
さらに、状態を表す表現も異なります。
タガログ語:Gutom na ako(グトム ナ アコ)
セブアノ語:Gigutom ko(ギグトム コ)
タガログ語とセブアノ語の使用状況
フィリピンでは、タガログ語が標準語となっていますが、すべてのフィリピン人が流暢に話せるわけではありません。特に、セブなどのビサヤ語圏の人々はタガログ語を理解できても流暢に話せない人も多くいます。一方で、マニラやクラーク、バギオなどのタガログ語圏では、セブアノ語はほとんど通じません。
よく使うあいさつ
フィリピンは、日本のように単一の言語が話されている国ではありません。地域によって様々な言語があり、その一つがビサヤ語です。そして、ビサヤ語の中でも、セブ島やボホール島、ミンダナオ島の東部で広く使われているのがセブアノ語と呼ばれています。日本語の方言とは異なり、マニラに住むフィリピン人でさえ理解できないこともある、独立した言語なのです。
このセブアノ語で挨拶ができるようになると、単にコミュニケーションがスムーズになるだけでなく、セブ島の人々の文化や考え方をより深く理解するきっかけにもなります。なぜなら、言語は文化と密接に結びついているからです。それでは、セブアノ語の世界への第一歩として、覚えておきたい基本的な挨拶のフレーズを見ていきましょう。
1. ありがとう
Salamat(サラマット)
セブアノ語で最も頻繁に使う言葉の一つが、「Salamat(サラマット)」。日本語の「ありがとう」にあたります。カタカナで表記すると「サラマット」となることが多いですが、実際の発音は最後の「ト」をほとんど発音せず、「サラマッ」に近いと言われています。この一言だけでも、セブの人々はあなたに親しみを感じてくれるはずです。
2. おはよう
Maayong Buntag(マアヨン ブンタグ)
「おはよう」は、「Maayong Buntag(マアヨン ブンタグ)」です。ちなみに、「良い」という意味の英語「Good」に相当するビサヤ語は「Maayo(マアヨ)」です。
3. こんにちは
Maayong Adlaw(マアヨン アッドラウ) / Maayong Hapon(マアヨン ハポン)
日中に使える挨拶としては、「Maayong Adlaw(マアヨン アッドラウ)」があります。これは英語の「Hello」や「Good day」に近い意味合いです。また、午後の時間帯には「Maayong Hapon(マアヨン ハポン)」を使うこともできます。
4. こんばんは / おやすみなさい
Maayong Gabii(マアヨン ガビイ)
夜に人と会った時、または寝る前に使うのが「Maayong Gabii(マアヨン ガビイ)」です。「こんばんは」と「おやすみなさい」の両方の意味を持っています。より具体的に「おやすみなさい」と伝えたい場合は、「Maayong gabii (sa pagtulog)」と言うこともできます。
5. 元気ですか?
Kumusta ka?(クムスタ カ?)
相手の体調を気遣う、英語の「How are you?」と同じような挨拶が「Kumusta ka?(クムスタ カ?)」です。日本語の「お元気ですか?」よりも、もっと気軽に日常的な挨拶として使われます。「ka」は「あなた」という意味です。親しい間柄であれば、「Kumusta?(クムスタ?)」とよりフランクに尋ねることも多いようです。返事としては、「Ok ra(大丈夫だよ)」や「Kapoy(疲れた)」など、簡単な一言で返すことが多いでしょう。そして、もし何か話したいことがあれば、その後に続けるのが一般的です。
これらの基本的な挨拶を覚えるだけでも、セブの人々とのコミュニケーションはより豊かになるでしょう。言葉は、人と人との心を繋ぐ大切なツールです。ぜひ、これらの挨拶を積極的に使って、セブでの素晴らしい時間を過ごしてください。
おすすめの勉強法
セブアノ語を効率よく勉強するためには、効果的な学習法を取り入れることが大切です。ここでは、初心者でも取り組みやすい方法をご紹介します。
1. 基本文法を理解する
まずは、セブアノ語の基本的な文法を学びましょう。文の組み立て方を理解することで、その後の単語やフレーズの習得がスムーズになります。「基本文型」を解説した教材を活用し、基礎からしっかり学ぶことをおすすめします。
2. よく使う単語やフレーズを覚える
日常会話で頻繁に使われる単語やフレーズを覚えることが、言語学習の第一歩。特に、挨拶や自己紹介、簡単な質問などを身につけると、実際の会話で活用しやすくなります。「使えるフレーズ集」や「基本単語集」を活用し、少しずつボキャブラリーを増やしましょう。
3. 品詞ごとの理解を深める
名詞や動詞といった品詞の役割を理解すると、より複雑な文章の作成ができるようになります。「名詞の使い方」や「動詞の活用方法」を解説した教材を参考にしながら、体系的に学習を進めていきましょう。
4. 他の言語との関連性を意識する
セブアノ語には、英語やスペイン語に由来する単語が多く含まれています。特に、英語をある程度理解している方にとっては、馴染みのある単語が学習の助けになるでしょう。また、日本語との違いや共通点を知ることも、理解を深めるポイントになります。
5. 会話練習を取り入れる
言語は実際に使うことで上達します。覚えた単語やフレーズを積極的に会話で使うことで、表現力が身につきます。オンラインで学べる「会話練習」教材を活用するほか、セブアノ語を話す人と交流する機会を作るのも効果的です。
6. 動画を活用する
動画を使った学習は、発音やイントネーションを視覚的・聴覚的に学ぶのに最適です。「無料動画で学習できる」教材を活用し、興味のある内容を選んで繰り返し視聴することで、理解が深まります。
7. 入門書を活用する
セブアノ語の基礎を体系的に学ぶには、入門書を活用するのも良い方法です。「やさしいセブ語」などの入門書を参考に、計画的に学習を進めましょう。
まとめ
セブアノ語は、フィリピンで広く話される言語の一つで、特にセブ島やその周辺地域では日常的に使われています。文法や語順が日本語とは異なり、スペイン語からの借用語が多いことも特徴的。また、「ビサヤ語」と混同されることが多いものの、セブアノ語はその一部にあたる言語とされています。
本記事では、セブアノ語の成り立ちや特徴を詳しく紹介しました。フィリピンを訪れる際には、基本的なフレーズを覚えておくと、現地の人々とのコミュニケーションがよりスムーズになるでしょう。興味を持った方は、さらに学習を深めてみてください。

TOEIC840
◇留学経験
2013年4月~12月:ニュージーランド
2019年11月~2020年1月:フィリピン
◇海外渡航経験
台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、タイ、クロアチア、グアム、ハワイ、ニュージーランド
◇自己紹介
生まれも育ちも大阪です。小さい頃から、知らないことを知ることが好きで、好奇心を力に執筆をしています。趣味は、芸人さんのラジオを聴くこと、自然探索、グルメ巡りです。好奇心をフル活用して、日々、幸せ集めをしています。