フィリピンといえば、美しいビーチや美味しい料理が思い浮かびますが、実はその特徴的な祝日もまた魅力の一つです。
日本とは異なる祝日の過ごし方や、意外な風習など、興味深いものがたくさんあります。例えば、突然祝日が追加されることもあります。日本では想像つかないですよね。
今回は、そんなフィリピンの祝日の魅力を、様々な角度からご紹介していきます。
フィリピンの祝日の特徴
フィリピンの祝日には、興味深い特徴がいくつかあります。 ここでは、日本にはないフィリピンの祝日の特徴をお伝えしていきます。
①宗教色が強い
フィリピンは、国民の約90%以上がキリスト教徒で、アジアでは唯一のキリスト教国家です。フィリピンにキリスト教が根付いたのは、16世紀中頃にスペインがフィリピンを植民地化したことがきっかけです。
スペイン政府の保護のもと、カトリック教会の諸修道会が宣教活動を行い、19世紀までにフィリピン人の間に広く浸透しました。
フィリピンでは、キリスト教の信仰が文化や習慣に大きな影響を与えています。 キリスト教に関する祝日が多く、欧米諸国と同様、クリスマスやイースター、ホーリーウィークなどが盛大に祝われます。
②歴史的な出来事を記念した祝日が複数ある
フィリピンにおける祝日の2つ目の特徴として、歴史的な出来事を記念した祝日が複数ある、というものがあります。
例えば、8月21日はニノイ・アキノ記念日とされており、これは20世紀にフィリピンで活躍した英雄の名前にちなんだ祝日です。
記念日のもとになった政治家ニノイ・アキノは、当時独裁政治を続けていたマルコス大統領に対し反対運動を続けていた人物で、国民から多くの支持を集めていました。 ところが、1972年の戒厳令発布と同時に彼は逮捕・死刑宣告されてしまいます。
その後一時釈放されてからはアメリカに亡命したのち、フィリピンに帰国しましたが、帰国の直後、彼はマニラ空港で暗殺されてしまいました。
国民から絶大な人気を誇っていたニノイ・アキノをたたえ、フィリピンでは、この日が祝日とされています。 フィリピンの祝日には、こうした歴史的に重要な出来事を思い出し、国民の団結力を高める狙いもあります。
③突然祝日が追加されることがある
後ほど詳しく解説しますが、フィリピンには特別祝祭日と呼ばれるものがあり、政府の決定によって突然祝日が追加されることがあります。
日本では基本的に決まった日にしか祝日はないため、これは日本とは大きく異なる点ですよね。
④地域ごとの祝日もある
マニラやセブなど、地域によっては独自の祝日を設けていることもあります。 例えば日本でも気軽に行けるリゾート地として人気が高いセブ島でも、セブ市創立記念日と呼ばれる独自の記念日があります。
実はセブ市は、フィリピンの中で最も古い都市の一つであり、歴史的な背景や文化的な重要性も非常に高い都市なんです。
セブ市は16世紀、世界一周を達成した人物として名高いマゼランが初めてフィリピンに上陸した地だということで知られています。その後、スペインの統治下に入り、重要な貿易港として発展します。 そして1937年に正式に市として認められ、その日がセブ市創立記念日として定められたのです。
こうした地域独自の祝日があるというのも面白いですよね。
フィリピンの祝日は突然決まる?
先ほども述べましたが、フィリピンでは、突然祝日が追加されることがあります。 このことには、フィリピンという国の文化や歴史的背景も関係しています。 ここでは、どのようにしてフィリピンの祝日が突然決まることがあるのか、詳しく解説していきます。
フィリピンの柔軟な制度
フィリピンでは、祝日に関する制度が比較的柔軟です。 そのため、新しい祝日を迅速に制定することができます。 通常、フィリピンにおける新しい祝日は大統領が制定します。 フィリピンの大統領は、大統領令によって新しい祝日を宣言することができます。
新しい祝日制定のタイミング①歴史的出来事の再評価
歴史的に重要な出来事の重要性が再認識されたり、新たな事実が判明したりした場合、その出来事を記念する祝日が新たに制定されることがあります。
一例として「人民力革命(ピープルパワー)記念日」と呼ばれるものがあります。
これは20年以上に渡って独裁政治を敷いたマルコス大統領を倒し、暗殺されたニノイ・アキノの意思を継いだ妻コラソン・アキノを大統領に就任させた、フィリピン国民による革命を讃えるものです。
フィリピン国民を改めて団結させようという目的のもと新たに祝日として制定されました。新しい祝日制定のタイミング②国民の意識改革
特定の社会問題に対する国民の意識を高めたり、団結を促したりするために、新しい祝日が制定されることもあります。
新しい祝日が制定されるタイミング③宗教的な行事
フィリピンはキリスト教徒以外にも多様な宗教が共する国であり、イスラム教など宗教的な行事の日が祝日になることがあります。
例えば、イスラム教の祝日である「イード・アル・フィトル」や「イード・アル・アドハ」は、ムスリム人口が多い地域では祝日となります。
一般祝祭日と特別祝祭日について
ここまでフィリピンにおける祝日の特徴について解説してきましたが、フィリピンの祝日は大きく分けると一般祝祭日と特別祝祭日に分けられます。
一般祝祭日とは、毎年固定された日付で祝われる祝日です。 日本における祝日と近いですね。クリスマスや元旦など、世界共通で祝われる宗教的な行事や、独立記念日など、国の重要な記念日が含まれます。この日は、労働者は働かなくても給料が支払われます。
一方、特別祝祭日とは、政府によって特別に定められた祝日で、日付が毎年変わる場合があります。特別祝祭日の特徴としては、特定の個人に関係する記念日が含まれることや、一般祝祭日とは違い労働者が働かない場合は、給料が支払われないということです。
フィリピンの祝日の様子
日本における祝日は、休みとはいえ人によっては普通に仕事をしている場合も多くありますよね。 一方フィリピンでは、「祝日=仕事は一切しない」という意識が徹底されています。仕事のメリハリがしっかりしているところは良いかもしれませんね。
また、アジアの中でも特に宗教色が強い国であるため、クリスマスやイースターなどは家族や親戚が集まって盛大に祝われます。
歴史的記念日にちなんだ祝日には、パレードが行われたり、歴史的な場所へ訪問する人も多くいます。 祝日を大切にするフィリピン文化は、とても興味深いものです。
ただし、フィリピンに旅行に行ったり、留学するという観点で考えると、話は変わってきます。祝日が多いシーズンに旅行したり、留学したりすると、土日以外にも学校やお店がお休みになっている、なんてことも。
そのため、祝日が重なるシーズンは避けてフィリピンに行く必要があります。本記事ではフィリピンの年間祝日カレンダーもご紹介していますので、うまく活用して実りある留学・旅行に繋げてくださいね。
2025年のフィリピンの祝日カレンダー
これまでご紹介してきたことを踏まえて、ここではフィリピンにおける主要な祝日を日付とその日についての解説も交えながらご紹介していきます。フィリピンという国に対する理解や、今後の旅行や留学の際に参考にしてみてくださいね。
1月1日(New Year's Day):
日本や他の各国と同様、年始を祝う日です。
3月29日(Chinese Lunar New Year):
中国の旧正月にあたる日です。
4月9日(Araw ng Kagitingan):
勇者の日と呼ばれ、国民は第二次世界大戦中のフィリピン人の勇気を称えます。
4月17日(Maundy Thursday):
聖木曜日とばれ、イースター前の木曜日のことを指します。
4月18日(Good Friday):
聖金曜日と呼ばれ、イースター前の金曜日のことを指します。
5月1日(Labor Day):
日本の勤労感謝の日のように、労働者をたたえる日です。
6月12日(Independence Day):
フィリピンがスペインからの独立を果たした日を祝う日です。
8月21日(Ninoy Aquino Day):
ニノイ・アキノ記念日と呼ばれ、国民から絶大な支持を得ていた元大統領のニノイ・アキノの命日です。
8月26日(National Heroes Day):
フィリピン独立のために戦った英雄たちを称えるための日です。
11月1日(All Saints' Day):
諸聖人の日と呼ばれ、カトリック教徒にとって重要な祝日です。天国にいる全ての聖人を記念する日とされています。
12月25日(Christmas Day):
いわゆるクリスマスです。イエスキリストの誕生日を祝います。
12月30日(Rizal Day):
リサール記念日と呼ばれ、フィリピンの国民的英雄、ホセ・リサールの功績を讃える日です。
ホセ・リサールは、19世紀後半のフィリピンで活躍した医師、作家、思想家です。スペインによる植民地支配下のフィリピンの現状を鋭く批判し、平和的な手段で改革を訴える彼の著書は当時のフィリピン社会の矛盾を描き出し、国民の意識改革に大きく貢献しました。
まとめ
今回はフィリピンの祝日とその特徴について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
フィリピンの祝日は、歴史、文化、宗教が複雑に絡み合い、多種多様な顔を持つのが特徴です。 世界共通の祝日だけでなく、フィリピン独自の文化や歴史を反映した祝日も数多くあります。
特に、特別祝祭日は大統領の決定によって毎年変わるため、その年のフィリピンにおける政治情勢や社会状況を反映していると言えるでしょう。
これらの祝日は、フィリピンの人々のアイデンティティを形作る上で重要な役割を果たしており、家族や友人と過ごす大切な時間となっています。 フィリピンを訪れる際は、こうした現地の文化に触れる機会にしてみてはいかがでしょうか。