
夜9時を過ぎても明るい街並みに、ゆっくりと沈む太陽。
夏のヨーロッパ旅行では、日本ではなかなか味わえない時間の流れを味わうことができます。
その特別な時間感覚は、サマータイムという制度が生み出しています。
サマータイムは、正しく理解していないと空港での乗り継ぎ、フライトの出発時刻、列車の発車など、旅のあらゆる場面で小さなズレが生まれてしまう可能性があります。
本記事では、日本からヨーロッパへ初めて旅する方でも失敗しないよう、時差の考え方からスマホや時計の設定方法、サマータイムならではの観光の楽しみ方まで、実践的にわかりやすく解説します。
- サマータイム制度とは?
- ヨーロッパのサマータイム実施国・期間
- サマータイム中の時差計算の方法
- サマータイム中の列車・飛行機の時刻の読み方
- サマータイム時のスマホ・時計の設定
- サマータイム中に旅行するメリット
- まとめ
サマータイム制度とは?
サマータイム(=夏時間)とは、日照時間の長い夏季に時計を1時間早め、明るい時間帯を最大限に活用するための制度のことです。
日本では現在導入されていないため、日本人にとっては馴染みの薄い仕組みですね。
サマータイムは「夏時間をより長く楽しむための制度」
サマータイムとは、春から秋にかけて時計の針を1時間進め、夕方の明るい時間を長く活用するための制度のこと。
この期間は緯度の高い地域で日照時間が長くなるため、時計の針を進めることで1日を有効活用することを目的として、ヨーロッパでは広く採用されています。
具体的に起こる現象で言うと、サマータイムが始まるタイミングの深夜2時、自動的に午前3時になるように時計が1時間進みます。
そうすることで、通常18時に日没する地域であれば、サマータイム中は19時頃まで明るさが続くことになります。
仕事や学校の後でも観光や買い物、レストランでの食事をゆったり楽しめるようになり、街全体が「夕方から夜にかけてもう一度動き出す」ような独特のリズムが生み出されるのです。
サマータイムの始まり方と終わり方
サマータイムが始まると、前述の通り時間が1時間進むので、切り替わるタイミングの日の睡眠時間は(普段通りの時刻で寝て起きると)1時間短くなります。
たとえばヨーロッパでは、サマータイムに切り替わるその瞬間にスマホを見ていると、0時59分59秒から本来は1時になるはずの短針が、一気に2時へジャンプ!
初めて見ると、まるで時計が魔法のように動くので驚くかもしれません。
逆にサマータイムが終わるタイミングでは、夜中の3時になった瞬間に自動的に2時になり、時間表示の上では「1時間戻った」ように見えます。
つまり、普段通りの時刻で寝て起きると睡眠時間は1時間長くなるのです。
あとで詳しく解説しますが、電波時計やスマホは自動でサマータイムの切り替えが行われるようになっているので調整不要。
一方で腕時計・壁掛け時計・車の時計などは、自分で1時間進める・戻すといった調整をする必要があります。
サマータイムが導入された理由
サマータイムは、もともと電力消費の削減を目的に導入されました。
照明の使用時間を減らすことでエネルギーの節約につなげる狙いがあったのですが、現在では環境面の理由に加え、人々の生活の質向上や観光産業の活性化といった側面でも重要な役割を担っています。
日本との決定的な違い
ご存じのように現在、日本ではサマータイムは実施されていません。
そのため日本からヨーロッパへ旅行する際は、同じ国でも「夏と冬で時差が変わる」点に注意が必要。
日本と同じようにサマータイムを採用していない国は、赤道に近い国やアフリカ諸国にも多く見られます。
これらの地域は季節による日照時間の変化が少ないため、サマータイムの必要性が低いのですが、季節によって日照時間の変わる日本で採用されていないのはなぜなのでしょうか?
実は、日本でもサマータイムが導入された時期がありました。
日本では戦後の1948年〜1952年の4年間、GHQの指示により「夏時刻法」が施行され、サマータイムが導入されました。
しかし労働時間が長くなったり、早起きによる生活リズムの乱れが不評を招き、1951年の世論調査では反対意見が過半数を超え、結果として占領終了とともに制度は廃止。
これ以降、日本では一度もサマータイムは実施されておらず、年間を通して日本標準時(JST)が使われています。
東日本大震災後や東京オリンピックの際には導入が検討されたこともありましたが、システム対応の問題などから実現には至っていません。
現在は他国でも生活リズムの変化による体調への影響も議論されており、国や地域によっては廃止や見直しの動きがあるのも事実としてあります。
ヨーロッパのサマータイム実施国・期間
ヨーロッパへの旅行計画を立てるにあたって、どの国がいつサマータイムを採用しているのかを知っておくことは基本となります。
旅行の時期と場所から、しっかりと旅程を管理できるように押さえておきましょう。
実施国と代表的な都市
ヨーロッパでは一部地域を除いて、ほとんどの国がサマータイムを採用しています。
パリ、ベルリン、ローマ、ミラノなどの主要な都市はすべて対象で、夏になると街全体が夕方から夜にかけて活気づきます。
特にカフェ文化が根付くフランスやイタリアでは、夜遅くまで賑わうテラス席が旅の風物詩になっていますね。
一部、例外となる国やエリア
アイスランドはヨーロッパで唯一サマータイム制度を採用しておらず、日本との時差は通年で9時間です。
また、ロシアとベラルーシはそれぞれ2014年・2011年にサマータイムを廃止しています。
トルコもサマータイムは採用していません。
サマータイムが運用されているEUでも、実は2021年に方針転換があり、廃止案が可決されています。
ただ、加盟国間の調整が難航しているという理由で、現在も運用が継続しているという実態があります。
ヨーロッパ周遊旅行の場合、国境を越えるごとに時刻の扱いが変わる可能性があるため、最新情報を確認しておくようにしましょう。
開始日・終了日と旅行シーズン
ヨーロッパのサマータイムは「3月の最終日曜日午前1時」に始まり、「10月の最終日曜日の午前2時」に終了すると定められています。
この期間は気候も安定し、日照時間が最も長く、観光のベストシーズン。
春から秋にかけてのヨーロッパは、街歩きを楽しめる時間も長くなっています。
サマータイム中の時差計算の方法
旅のスケジュール管理において、時差の理解は欠かせません。
仕組みをしっかりと理解して臨みましょう。
日本との時差:通常時とサマータイム時の違い
たとえばフランスでは、通常は日本との時差は8時間。
フランスの時刻は日本よりも8時間遅れているので、日本が朝9時のときにフランスでは「深夜1時」ということになります。
ただしサマータイム中はフランスは7時間遅れになるため、日本が朝9時のときにフランスは「深夜2時」ということになります。
この1時間の差は、国際線のフライトや現地ツアーの集合時間に影響を与えることがあります。
時差計算を間違えない方法 | アプリに頼る
最も確実な方法は、スマホの世界時計機能やアプリで旅行先の都市をあらかじめ登録しておくことです。
出発前から現地時間を日常的にチェックすることで、頭の中の「日本時間基準」での時差を徐々に切り替えることができます。
スマホの時刻表示は自動でサマータイムに切り替わるので、うっかり間違いを減らすことができるでしょう。
時差ボケ・寝不足の予防のために「時差を頭で理解する」
時差を正しく理解することは、時差ボケや寝不足の予防法としても有効です。
フライト前後の数日間は、少しずつ就寝・起床時間をずらすことで、現地到着後の疲労感が大幅に軽減されます。
サマータイムの影響を理解して意識しておくことで、体の負担は驚くほど変わります。
サマータイム中の列車・飛行機の時刻の読み方
ヨーロッパでは、鉄道や航空機を組み合わせた移動が旅の中心になります。
サマータイム中にはどんなことに気をつけたら良いでしょうか?対策もご紹介します。
ポイント①交通機関はすべて現地時間表示
駅や空港に表示される時刻、チケットに記載される時間はすべて現地基準となっています。
つまりサマータイム中であってもそうでなくても、「今自分がいる場所の時間で」「券面やスケジュール表に記載された時刻通りに」行動すれば問題ありません。
ポイント②切り替え当日、切り替えタイミングには要注意
サマータイムの切り替えも、深夜に行われるので旅程に響くことは基本的には多くはありません。
ただしちょうど切り替えの時刻、深夜帯にまたがる列車や飛行機では、注意が必要です。
時刻表上の表記が一時的にずれることがあるからです。
夜行移動や早朝便を利用する場合は時間にゆとりを持ち、現地で確認できる余裕を持って行動しましょう。
ポイント③予約・乗り継ぎ時のチェック
オンラインでの予約時は、乗り継ぎ時間に余裕があるかが重要です。
サマータイム開始直後は感覚的に「1時間早く動く」ことになるため、慣れないうちは余裕を持ったスケジュールが安心でしょう。
サマータイム時のスマホ・時計の設定

時間設定のミスは旅行中のトラブルになりやすいポイントですが、知識として知っておけば攻略できるので、押さえておきましょう。
確認①スマホは自動設定が基本
現在のスマホは、自動的にタイムゾーンとサマータイムに対応するようにできています。
渡航前に「自動設定」がオンになっているかだけ確認しておくようにしましょう。
確認②アナログ時計・腕時計は自分で調整
アナログの時計や機械式腕時計は、サマータイムが始まると自分で1時間進める必要があります。
到着直後に調整せずに日本時間のまま行動してしまう、といったことがあると、ツアー集合やレストラン予約に遅れる原因になりますので注意しましょう。
確認③ホテル・街中の時計を過信しない
ホテルや駅構内の時計がずれていることも珍しくありませんので、必ず自分のスマホ時間(腕時計を自分で調整した人は腕時計)を基準に行動するのが最も安全です。
サマータイム中に旅行するメリット
サマータイムは、旅行中の時間管理が難しかったり、健康上の問題があるという指摘がなされていたりする一方で、旅の魅力を何倍にも広げてくれるありがたい仕組みでもあります。
メリット①夕方以降も明るく観光を満喫できる!
夜8〜9時でも明るさが残り、観光・ショッピング・街歩きを思う存分楽しむことができるというのが、旅行者にとっては一番のメリットではないでしょうか。
昼の疲れを少し休ませてから、夕方から再び街へ出られるのも大きな魅力です。
旅行客にとって嬉しいだけでなく、小売業や観光業などの消費が活発になる点は地元の経済全体にプラスの効果があると言われています。
明るい時間帯が長くなると外出する機会が増え、ショッピングやレジャーに費やす時間も自然と増えますよね。
サマータイム中は、ヨーロッパ旅行に特におすすめの時期なのです。
メリット②夜の街がより美しくより安全に!
サマータイムの夕暮れは、街に特別な表情をもたらします。
屋外コンサートやナイトマーケットなど、夏ならではのイベントが各地で開催され、ヨーロッパの「夏の夜」の魅力を安心してたっぷりと味わうことができます。
メリット③日本との連絡が取りやすく安心できる!
日本との時差が1時間短くなることで、家族や職場との連絡も取りやすくなります。
留学や長期滞在の方にとっては、精神的な安心感にもつながりますね。
まとめ
サマータイムの時期のヨーロッパ旅行は、制度を正しく理解していれば、決して難しいものではありません。
むしろ、日照時間の長さや街の賑わいといった、「夏のヨーロッパ」ならではの魅力を最大限に享受できる絶好のシーズンとなっています!
明るい時間が長くなり、観光の自由度が大幅にアップするサマータイム。
夕暮れまで石畳を散策して歴史を感じてみたり、夜風に包まれるテラスディナーを味わってみたり…
昼と夜の境界が溶け合うヨーロッパの夏、ぜひサマータイムを味方につけることでじっくり堪能し、ヨーロッパ旅行の満足度を上げてみてはいかがでしょうか。
◇経歴
幼稚園時代をシンガポールで過ごし、現地の友達と英語でよく遊んでいました。小学校からは日本で暮らし、中学生の時にカナダにホームステイした経験から海外での暮らしに魅了され、東京外国語大学に進学。
在学中にバンクーバーへの留学を経て就職し、新卒で入った会社では外資系クライアントと英語でやり取りをしていました。
現在は仕事で英語を使う機会はほとんどないものの、趣味として楽しく勉強し続けています!
◇資格
TOEIC940点、TOEFL iBT 90点
◇留学経験
バンクーバー(カナダ)、半年間、ILSC vancouver
◇海外渡航経験
・シンガポール(居住・旅行)
・マレーシア(旅行)
・モルディブ共和国(旅行)
・サイパン(旅行)
・カナダ(ホームステイ・留学)
・グアム(旅行)
・タイ(旅行)
・ドイツ(旅行)
・イタリア(旅行)
・トルコ(旅行)
・インドネシア(旅行)
◇自己紹介
英語が話せるだけで、世界中の「私が自分の言葉で会話できる人」の母数がぐんと広がったことが、私にとってはいちばん面白いポイントでした!これからも英語を通じていろんな地域のいろんな文化や人に触れ、知らないことを知っていきたいと思っています。