
フィリピンの第一言語は英語ではありませんが、フィリピン人は流暢に英語を話すことができます。一体どうやって英語を学んでいるのか、気になる方もいるでしょう。
そこでこの記事では、フィリピンの英語教育事情とフィリピン英語の特徴について詳しく解説します。
英語学習に取り組んでいる方やこれから英語を学んでいきたい方は、フィリピンの英語教育事情を知ることで英語学習方法の参考になりますので、ぜひ読み進めてください。
フィリピンの教育制度
フィリピンの具体的な教育制度や日本の教育制度との違いをあまり知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、フィリピンの義務教育期間や学校の種類、貧富の差による教育の格差について解説します。
義務教育の期間
フィリピンでは、幼稚園1年間、小学校6年間、高校6年間の合計13年間が義務教育となっています。フィリピンの高校は2段階に分かれていて、4年間のジュニアハイスクールが日本の中学校に相当し、2年間のシニアハイスクールが日本の高校に相当します。フィリピンの子どもは、日本と比較して4年ほど多く義務教育を受けているということです。
学校の種類と現状
フィリピンの学校は、日本と同じく私立と公立の2種類があります。富裕層の子どもは、幼稚園から教育環境が整っている私立学校に通う傾向にありますが、一般家庭の子どもは、授業料が無料の公立学校に通うことがほとんどです。
フィリピンの公立学校は1クラスが40〜50人と多く、教室が足りずに体育館で授業を行うこともあります。また、常夏の気候であるものの、冷房設備があまり整っておらず、蒸し暑い中で学習に取り組む学校も多いのが現状です。
貧富の差と教育の格差
フィリピンでは、貧富の差や教育格差が存在することも事実です。
例えば、私立学校では、毎年更新される新しい教科書が配られますが、公立学校では教科書を学校から借りて進級時に返却する仕組みになっており、教科書の古さや破損などの問題が生じることがあります。
また、基本的に学校では制服を着用することになっていますが、家族の人数が多い貧困家庭では、新しい制服を買うことが難しい場合もあります。
近年、教育制度が改正されて公立学校の授業料は無償になったものの、制服やその他の備品、特別授業や試験を受ける際は有償であるため、貧困家庭の経済的な負担はまだ残っている状況です。
フィリピンで英語を話せる人の割合は?
フィリピンでは、約90%以上の人が英語を話すことができると言われています。その背景は、幼少期から英語を学ぶ教育制度が整っており、日常的にコミュニケーションの手段として英語を使う機会が多いためです。
フィリピンの人口は、約1億900万人(2020年時点)であるため、約9,000万人以上が英語を話すことができます。また、「EF English Proficiency Index(EF EPI)」の調査によれば、フィリピンの英語能力指数レベルは「高い」に設定されており、世界のランキングでは22位、アジアの中では2位となっています。
※2025年8月2日時点で確認した順位になります。
これらの情報から、フィリピンは英語が第二言語であるものの、英語を話せる人の割合が多く、世界的に見ても英語を使う能力が高いことがわかります。
フィリピンの英語教育事情
フィリピンでは約9割の人が英語を話せることがわかりました。では、フィリピン人がどのようにして英語を身につけているのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、具体的なフィリピンの英語教育事情と日本の英語学習との違いを解説します。
フィリピンの小学生の英語学習時間は日本の約7倍以上
まず、日本では小学3年生から英語学習を開始しますが、フィリピンでは幼稚園から英語学習を始めます。フィリピンの小学生は、英語の授業が週5回、1回あたり60分が一般的で、年間の英語授業時間は約300時間、6年間で1,746時間になります。
一方、日本の小学生は3・4年生で週1回(45分〜50分)、年間35時間、5・6年生で週2回、年間70時間となり、合計でおよそ210時間〜250時間です。これらの授業時間を比較してみると、フィリピンの小学生は日本の約7倍以上の時間を英語学習に充てていることになります。
イマージョン教育が導入されている
フィリピンでは小学生の段階で、イマージョン教育と呼ばれる制度が導入されています。イマージョン教育とは、外国語を単なる教科として学習するのではなく、教科を学習する際の手段として活用し、外国語と教科内容の両方を同時に習得することを目的とした教育方法です。
例えば、算数のような教科を英語で行うことで、英語を使う練習をしながら算数を学ぶというイメージになります。つまり、フィリピンの小学生は英語を学習科目として学ぶだけでなく、コミュニケーションや学習の手段として使っているため、自然と実践で使える英語力を身につけているということです。
また、フィリピンで提供されている映画や音楽などの娯楽コンテンツもすべて英語であり、日常的に英語を使う機会が多いことも、フィリピン人が英語を話せる理由の1つになります。
フィリピン英語の特徴
フィリピンの英語には、なまりや独特な表現があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、フィリピン英語の特徴について解説します。
フィリピンの英語はなまりが少なく聞き取りやすい
フィリピン人の英語は、一般的に流暢でクセが少ないのが特徴です。フィリピンでは、幼少期から英語教育が行われている影響により、比較的なまりが少ない英語を話す人が多くなります。英語を母国語とするネイティブスピーカーに比べると、少しだけタガログ語のなまりが存在しますが、英語としては十分に聞き取れるレベルです。
また、フィリピン人の話す英語のスピードは、ネイティブスピーカーと比較して遅めなので、英語が苦手な方でも聞き取りやすいと言われています。
独特な語彙や発音が含まれることがある
フィリピンの英語には、タガログ語以外にもセブアノ語、イロカノ語など、さまざまな地域の言語から影響を受けており、独特な語彙が含まれることがあります。
例えば、「トイレ」は英語で「bath room」や「wash room」と呼ぶのが一般的ですが、フィリピンでは「comfort room(コンフォートルーム)」と呼ぶことがあります。
また、フィリピンでは「f」の発音を「p」、「z」を「s」、「th」を「d」や「t」と発音するため、少し独特な英語に聞こえることもあるでしょう。
例えば、以下のような呼び方の違いがあります。
・days→dais(デイズ→デイス)
・think→tink(シンク→ティンク)
このようにフィリピンでは、一部の語彙や発音が異なるため、最初は聞き慣れないこともあるかもしれません。しかし、事前にフィリピン英語の特徴を知っておくことで、現地を訪れた際にスムーズに英語を理解することができるでしょう。
フィリピンと英語に関するよくある質問
最後に、フィリピンと英語に関するよくある質問をいくつか紹介します。
なぜフィリピンの語学留学は日本人に人気なのか?
日本人にフィリピンの語学留学が人気なのは、欧米と比べて低価格で質の高い英語の授業が受けられるためです。フィリピンは欧米と比較して物価が安く、留学にかかる学費や生活費を大幅に抑えることができます。
また、フィリピンの語学留学はマンツーマンレッスンを多く受けられるメリットもあります。欧米の語学学校では、10人前後のグループで授業を行うことが一般的なので、マンツーマンレッスンはなかなか受けられません。
このような理由から、フィリピンの語学留学はコスパ良く短期間で集中して英語を学びたい日本人に人気があります。
フィリピン人でも英語を話せない人はいますか?
貧困な家庭であることが理由で、学校に行けていない子どもや十分な英語教育を受けられていない人は、あまり英語を話せません。特に田舎の方に行くにつれて貧しい家庭が多いため、英語が通じない傾向にあります。
一方、セブやマニラなどの都市部では、英語がスムーズに通じる場合がほとんどです。
フィリピンに英語教育が浸透したきっかけは何ですか?
フィリピンは、1898年から1946年の約50年間アメリカに統治されていたことをきっかけに、英語を使うようになりました。
当時、アメリカはフィリピンの公用語を英語にしようと多くの英語教師をフィリピンに送り込み、英語を教えた結果、フィリピン全土に英語が浸透しました。後に、フィリピンの授業で英語を使う制度が正式に定められ、今では英語が公用語として使用されています。
フィリピン人は普段の生活でも英語を話していますか?
フィリピン人は、普段の生活でも英語を話しており、特に仕事の場面でよく使われています。日常の雑談時は、英語と母国語のタガログ語を混ぜて使うことが多く、現地ではこれを「タガログ語」と「イングリッシュ(英語)」を掛け合わせた「タグリッシュ(Taglish)」と呼んでいます。
まとめ
フィリピンの英語教育は幼稚園から始まり、小学校の6年間で約1,746時間も英語学習に充てられています。また、英語を単なる教科として学ぶだけでなく、コミュニケーションや学習する際の手段として使用することで、フィリピン人は自然と実践的な英語を身につけているのです。
現在、英語学習に取り組んでいる方やこれから英語学習を始める方は、フィリピンの英語教育を参考に、英語を学ぶだけでなく手段としても活用してみてください。
以下の記事では、フィリピン人の特徴について解説されておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
フィリピン人は親日国って本当?国民性・性格ややってはいけないことも含めて特徴を解説!|Jinzai Plus
◇経歴
Webライター(留学・旅行関連)
◇留学経験
・フィリピン 2ヶ月
・カナダ(ワーキングホリデー中) 4ヶ月
◇海外渡航経験
・留学:フィリピン
・ワーキングホリデー:カナダ、ニュージーランド(1年ずつ)
・旅行:アメリカ、シンガポール、台湾など
◇自己紹介
海外での留学や仕事、旅を通じて、英語力だけでなく、行動力や環境への適応力も身についたと感じています。
また、異なる文化や人々の価値観に触れる中で、多くの発見や学びを得て、自分自身の成長も実感できました。
留学や海外に興味があり、挑戦したいと考えている皆さまに向けて、経験者の視点から少しでもお役に立てる記事をお届けしていきます。