
次の旅行はどこに行こうか、と考えるとき、ぜひ候補にしたいのは
世界遺産。
人類の歴史や文化を刻んだ遺跡や、手つかずの自然を残す国立公園、さらに独創的な建築物など、世界各地には訪れる価値のある場所が数多く存在します。
本記事では世界遺産検定事務局の公式データをもとに、代表的な遺産をご紹介します。
世界遺産とはどういうものを指すのか、その前提からご説明しながら、それぞれの世界遺産についてアクセス方法やおすすめの時期もあわせて解説。
旅行計画の参考に、ぜひご活用ください!
改めて知りたい世界遺産の基礎知識
世界遺産の定義をしっかり説明できる人は、案外少ないかと思います。
筆者は世界遺産検定の勉強をしたときに初めてその意味を理解しました。
世界遺産に登録される価値を理解した上で世界遺産を見ると、またその感動もひとしおですよ。
そもそも世界遺産とは?
世界遺産とは、1972年にユネスコの会議で決められた「世界遺産条約」に基づいて、世界遺産リストに登録された建物や遺跡、景色や自然のことをいいます。
これは国や地域、時代や世代、宗教や考え方が違っても、誰もが同じように素晴らしいと感じられる価値のことで、そんな価値を持つ世界遺産は人類共通の財産と考えられます。
全人類にとって大事な財産を、国境を越えて協力しあって後世まで守っていくため、条約でしっかり基準を定めて体制を整えているのです。
世界遺産の種類
種類は大きく分けて以下の3つです。
それぞれに登録基準が定められており、文化遺産になるには文化遺産になるための、自然遺産になるには自然遺産になるための基準をクリアしているかどうかを「世界遺産委員会」が審議します。
文化遺産と自然遺産の基準をどちらもクリアしていると、複合遺産の認定となります。
2025年7月の第47回世界遺産委員会を経て、現在世界遺産の総数は1,248件となりました。
そのうち文化遺産の数は多く972件、自然遺産の数は235件、複合遺産は最も少なく41件となっています。
世界遺産を守る意義
世界遺産は、地球の歴史や文化の多様性を未来へと受け継ぐために守られています。
世界遺産はまさにいま、現在進行形で戦争や自然災害、貧困などによって失われる危機にさらされていて、そのため国際的な協力のもとで保護・保存し、次の世代へ引き継いでいくことが私たちの責任です。
また世界遺産を訪れることは、異文化への理解を深め、地球の豊かさを実感し、自らの人生をより豊かにするきっかけにもなります。
「人類共通の遺産」を守り、次の世代へと残していくために必要な国際的な仕組みが世界遺産であり、世界遺産について勉強することや世界遺産を実際に訪れることは、その取り組みに参加することでもあります。
日本と世界遺産の関わり
日本が世界遺産条約に正式に参加したのは1992年のこと。
翌1993年には「法隆寺地域の仏教建造物群」「姫路城」「白神山地」「屋久島」の4件が日本で初めて世界遺産として登録されました。
その後、日本は世界遺産の保全への協力や、「真正性(※)」といった価値基準の見直しにおいても重要な役割を果たしています。
(※真正性=文化遺産が「本物であるか」という評価項目のこと。
遺産の形状、素材、材質などが当初のオリジナルの状態をどの程度維持しているか、またその文化を真実らしく伝えているかなどが考慮・評価される)
日本は現在26件の世界遺産を持ち、特に「文化を大切にする国」として評価されています。
また、学校教育や検定試験を通して、一般の人々が世界遺産を学ぶ機会が増え、旅行や観光への関心が高まっています。
世界遺産の人気ランキングと各遺産のアクセス・おすすめの時期
世界遺産検定事務局が2024年11~12月「第58回検定」の受検者を対象に、「勉強して行きたくなった」世界遺産のアンケートを実施。
そのランキングから人気の世界遺産のトップ5について解説します。
ちなみにランキングのトップ20は以下のようになっています。
◆2025年版世界遺産ランキングTOP20
| 順位 | 世界遺産 |
| 1 | モン・サン・ミシェルとその湾(フランス共和国) |
| 2 | 屋久島(日本国) |
| 3 | イエローストーン国立公園(アメリカ合衆国) |
| 4 | アントニ・ガウディの作品群(スペイン) |
| 5 | マチュ・ピチュ(ペルー共和国) |
| 6 | アルベロベッロのトゥルッリ(イタリア共和国) |
| 7 | 小笠原諸島(日本国) |
| 7 | 厳島神社(日本国) |
| 9 | 姫路城(日本国) |
| 9 | タージ・マハル(インド) |
| 11 | ヌビアの遺跡群:アブ・シンベルからフィラエまで(エジプト・アラブ共和国) |
| 11 | 佐渡島の金山 (日本国) |
| 13 | ケルンの大聖堂(ドイツ連邦共和国) |
| 14 | 文化交差路サマルカンド(ウズベキスタン共和国) |
| 14 | ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑(ポーランド共和国) |
| 16 | メンフィスのピラミッド地帯(エジプト・アラブ共和国) |
| 17 | 知床(日本国) |
| 17 | 白川郷・五箇山の合掌造り集落(日本国) |
| 19 | 古都京都の文化財(日本国) |
| 21 | パリのセーヌ河岸(フランス共和国) |
| 21 | シーギリヤの古代都市(スリランカ民主社会主義共和国) |
1位:モン・サン・ミシェルとその湾
「モン・サン・ミシェルとその湾」は、フランスの西海岸・サンマロ湾に浮かぶ孤島で、1979年に世界文化遺産に登録されています。
8世紀頃に建立されたといわれ、フランス革命後は監獄として使われていたそう。
モン・サン・ミシェルがあるサン・マロ湾は、潮の干満差が非常に激しいことで知られている場所です。
満潮時にはまるで修道院が海に浮かんでいるかのような神秘的な絶景が広がります。
・アクセス
パリから電車(TGV)でレンヌ駅へ約2時間、その後バスに乗り換えて1時間半。
パリから西へおよそ360キロメートル、日本でいえば東京から名古屋までの距離に位置しており、島内は3〜4時間ほどあれば一通り歩いて巡ることができるため、日帰りでも十分に楽しめます。
・おすすめの時期
春(3月〜6月)または秋(9月〜11月)がおすすめ。
比較的天候が安定しており、日中の観光がしやすいうえ、特に春は日差しが穏やかなので街歩きが快適です。
春と秋の満潮時には修道院が海に浮かぶ幻想的な姿が見られます。
2位:屋久島
「屋久島」は1993年に白神山地とともに、日本で初めて世界自然遺産に登録されました。
日本の世界自然遺産の中で自然景観が高く評価されたのは屋久島だけ。
島内では多くの固有種や北限・南限種の植物が自生しており、独特の生態系を形成しています。
特に注目すべきは、島内に広がる原生的な天然林。樹齢数千年に及ぶヤクスギを含むこの森は、豊かな苔に覆われた景観と相まって、圧倒的な自然美を誇ります。
・アクセス
鹿児島本土から屋久島へは、トンネルや橋がないため陸路では渡れません。
鹿児島から屋久島へ行く方法は大きく3つあり、鹿児島空港からの飛行機、鹿児島本港からの高速船、またはフェリーです。
乗り継ぎには2時間以上の余裕をもたせたスケジュールを組むことをおすすめします。
・おすすめの時期
5月、7月〜10月は屋久島観光のベストシーズン。
トレッキングは6月と2月以外は通年楽しむことができます。
3位:イエローストーン国立公園
世界で初めて国立公園に登録された「イエローストーン国立公園」。
アメリカ西部のワイオミング州を中心に広がる国立公園で、七色に輝く温泉など、さまざまな熱水現象によって生まれた自然の景観が楽しめます。
イエローストーンを初めて目にした人々は、そのあまりの美しさに感銘を受け、「ここは全人類のための聖域であり、少数の利益のために開発されるべきではない」と政府に提言しました。この提言を受けた1872年にユリシス・グラント大統領が署名、世界初の国立公園が誕生しました。
公園は非常に広大で、見どころも多いため、すべてをじっくり巡るには数日かかります。
・アクセス
イエローストーン国立公園へ向かうには、アメリカ・ワイオミング州のジャクソンを目指します。
日本からは直行便がないため、アメリカの主要都市で乗り継ぎ、所要時間はおよそ18時間ほど。
ジャクソン空港から公園までは車で約1時間半。
ジャクソンを拠点に観光することもできますし、公園内やその周辺にも宿泊施設があります。
公園内をじっくり巡る場合は、専用車によるガイドツアーの利用もおすすめです。
・おすすめの時期
イエローストーン国立公園の最も人気の高い観光シーズンは6月から8月で、来園者の半数以上がこの時期に訪れます。
間欠泉や温泉は気温が高いほど立ち上る湯気が少なくなるため、水面全体の景色をきれいに眺めることができる点が魅力。
一方、穴場の時期は9月下旬から10月中旬で、夏に比べて観光客が少なく、野生動物の活動が活発になるため多くの動物と出会える確率が上がります。
4位:アントニ・ガウディの作品群
スペインが生んだ天才建築家、アントニ・ガウディは、19世紀末から20世紀にかけて西ヨーロッパで流行した「モデルニスモ」を代表する芸術家。
世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」は、彼が手がけた作品のうち、バルセロナとその近郊にある7作品を指します。
ガウディのデザインはフランスのアール・ヌーボーに似ており、波打つような美しい曲線や華やかな装飾が特徴。
建築家としての高い芸術性に加え、独自の創造性が高く評価されています。
・アクセス
作品群のうち6作品は、バルセロナ中心部(ゾーン1)に位置しており、電車やバスを利用すれば簡単にアクセスできます。
この際に便利なのが、ゾーン1内の電車・地下鉄・トラム・バスで使える回数券「T10」。
改札やチケットリーダーを通すたびに回数が印字され、10回までチケットを購入する手間なく利用可能。
1時間15分以内での乗り換えはカウントされず、複数人での使用もOKです。
・おすすめの時期
年間を通して楽しめますが、気候が穏やかで過ごしやすい4~6月、9~11月がおすすめです。
ハイシーズンである夏よりも人混みが少なくなるため、ゆっくり観光できます。
5位:マチュ・ピチュの歴史保護区
「マチュ・ピチュの歴史保護区」は、標高2,430mの山中にあるインカ帝国時代の都市遺跡です。
インカ帝国の歴史を伝える遺跡として文化遺産に登録されているだけでなく、絶滅危惧種を含む貴重な生物の生息地でもあることから、複合遺産として世界遺産に登録されています。
インカ帝国は太陽を崇拝していたため、太陽の神殿や日時計など太陽に関わる遺跡が多く残されています。
・アクセス
まずペルーの首都リマへ辿り着き、そこから約1時間15分、クスコへの国内線に乗ります。
クスコ市内で一泊して高地に慣れた後、クスコからバスで約2時間の町であるオリャンタイタンボへ移動、そこから列車でマチュピチュ村(アグアスカリエンテス)へ向かいます。
村から遺跡まではバスで約30分です。
日本からは飛行機、バス、列車と乗り継ぎが必要な長旅ですが、その先に広がる壮大な景色は一生の思い出となるでしょう。
・おすすめの時期
ベストシーズンは乾季の5~10月。
安全面でも乾季がおすすめで、遺跡内の道は未舗装なので雨が降る雨季には多少の危険が伴います。
【雑学】世界遺産の多い国ランキング
ちなみに、世界には多くの世界遺産がありますが、その分布にはやや偏りがあります。
どの国に多いのか、理由を考えながら見るのも面白いですよ。
ランキング:2025年最新の世界遺産数
| 順位 | 国名 | 世界遺産の数 |
| 1 | イタリア | 61 |
| 2 | 中国 | 60 |
| 3 | ドイツ | 55 |
| 4 | フランス | 54 |
| 5 | スペイン | 50 |
| 6 | インド | 44 |
| 7 | メキシコ | 36 |
| 8 | イギリス | 35 |
| 9 | ロシア | 33 |
| 10 | イラン | 29 |
| 11 | 日本 | 26 |
| 11 | アメリカ | 26 |
世界には文化遺産が多いので、歴史の長い国や文化が残っている国で多く世界遺産が登録されている傾向がわかるかと思います。
日本は狭い面積なのにもかかわらず11位となっており、意外と言えば意外ですね!
世界遺産を持つ国は偏りすぎている?
世界遺産の多くを占める文化遺産は欧州の建築物に偏っている現実があり、アジアやアフリカなどとの地域格差が激しいのが現状。
教会建築や宮殿などへの偏重が目立っているなかで、この不均衡を是正するために世界遺産委員会は動いています。
文化的景観や産業遺産、20世紀建築も重視し、有名ではなくても価値のある遺産をさらに守っていけるようにしているのです。
世界遺産は年々登録されており、近頃は知名度の高くないものも登録されていますが、それにはこんな背景もあったのです。
まとめ
世界遺産は人類共通の財産であり、旅行を通じてその価値を肌で感じることができる貴重なスポットです。
世界遺産の意味合いや、それぞれの国や地域が持つ歴史や文化を理解することで、旅の体験はより深まるでしょう。
世界遺産を通して、どんな歴史や文化を体感したいか?という目線を持って旅行先を決めるのも、きっと楽しいはず!
「次はどの世界遺産を見に行こうか?」そんなワクワクを感じながら、次の旅行先を考えてみてはいかがでしょうか。
◇経歴
幼稚園時代をシンガポールで過ごし、現地の友達と英語でよく遊んでいました。小学校からは日本で暮らし、中学生の時にカナダにホームステイした経験から海外での暮らしに魅了され、東京外国語大学に進学。
在学中にバンクーバーへの留学を経て就職し、新卒で入った会社では外資系クライアントと英語でやり取りをしていました。
現在は仕事で英語を使う機会はほとんどないものの、趣味として楽しく勉強し続けています!
◇資格
TOEIC940点、TOEFL iBT 90点
◇留学経験
バンクーバー(カナダ)、半年間、ILSC vancouver
◇海外渡航経験
・シンガポール(居住・旅行)
・マレーシア(旅行)
・モルディブ共和国(旅行)
・サイパン(旅行)
・カナダ(ホームステイ・留学)
・グアム(旅行)
・タイ(旅行)
・ドイツ(旅行)
・イタリア(旅行)
・トルコ(旅行)
・インドネシア(旅行)
◇自己紹介
英語が話せるだけで、世界中の「私が自分の言葉で会話できる人」の母数がぐんと広がったことが、私にとってはいちばん面白いポイントでした!これからも英語を通じていろんな地域のいろんな文化や人に触れ、知らないことを知っていきたいと思っています。