フィリピンの伝統的な
民族衣装「バロンタガログ」についてご存じでしょうか。
ヨーロッパ文化の影響を受けたエレガントなデザインながら、フィリピン独自の素材や技法が使われた男性用の正装です。
中にはニュースで、フィリピン大統領が来ていた服が印象に残っているという人もいるかもしれませんね。
今回はフィリピンの民族衣装、バロンタガログの歴史や特徴について、またどんな時に着るのかなど詳しく紹介します。
バロンタガログとは
バロンタガログ(Barong Tagalog)はフィリピンの男性用の民族衣装であり、正装用のシャツです。
フィリピンが植民地化される以前の先住民文化と、スペイン帝国の服装の両要素を取り入れた、独特のスタイルを持っています。
バロンタガログの特徴
・白色や淡色が一般的
・結婚式や政治行事などフォーマルな場面での着用
・薄く透ける生地や、刺繍やレースの装飾が特徴的(中にアンダーシャツを着る)
バロンタガログは、フィリピン固有の伝統的なスタイルの正装用シャツであり、式典などの重要な機会に着用されているのです。
バロンタガログに対する女性の衣装は?
バロンタガログは男性用の正装の民族衣装ですが、女性用の伝統的な民族衣装もあります。
バロットサヤ(Baro’t Saya)・マリアクララ(Maria Clara)・テルノ(Terno)の主に3種類があり、総称してフィリピナーニャと呼ばれています。
・バロットサヤ(Baro’t Saya)
パフスリーブのブラウスとロングスカートを合わせます。
またドレススタイルのものもあり、よりフォーマルな正装とされています。
男性衣装と同様にレースや刺繡が施されたデザインです。
・マリアクララ(Maria Clara)
イエス・キリストの母マリアの像がモチーフで、ショール(パヌエロ)とタピスという布でできた厚手のスカート。
・テルノ(Terno)
足首までの長さがあるワンピースドレス。
テルノ(terno)とは、スペイン語で同じ生地で作られたひとそろいの服という意味があります。
バタフライ・スリーブと呼ばれる蝶の羽根ような大きな袖と、華やかな刺繡が特徴的です。
バロンタガログの歴史
バロンタガログの歴史は、スペインの植民地になる以前のフィリピンから始まります。
「バロン」はフィリピンの公用語であるタガログ語で、「服」という意味があります。
したがって、植民地時代前のフィリピンでは、男女ともに着ていた襟のないシンプルなシャツを「バロン」と読んでいたそうです。
そしてスペイン植民地化の時代に入ると、スペイン人がヨーロッパ風の服装を強要し、フィリピンの服飾文化は大きく変化しました。
先住民族はヨーロッパ風の服装への抵抗として、フィリピン特有の素材や技法を取り入れ、独自のスタイルであるバロンタガログを生み出したのです。
ちなみに最初は男女関係なく、伝統衣装のことをバロンタガログと呼んでいたそうで、いつの間にか男性衣装のみバロンタガログと呼ぶようになったのだとか。
またスペイン統治下でフィリピン人が武器を服の中に隠せないようにするため、透け感のある素材になったそうです。
その後アメリカ統治時代からバロンタガログはさらに発展し、今もフィリピンの正装として広く着用されています。
式典や公式行事などのフォーマルな場面ではもちろんのこと、日常的な場面で着られるカジュアルスタイルのバロンタガログもあるようです。
バロンタガログは、フィリピンの文化的アイデンティティを象徴する衣装として、国内外で高く評価されています。
バロンタガログの素材
伝統的なバロンタガログの素材には、パイナップルの葉から抽出した繊維(ピニャ)や、マアバカという植物から抽出した繊維(マニラ麻)が使われます。
バナナの皮を使うこともあるようです。
ピニャやマニラ麻の質感は軽量で涼やか、肌触りの良い素材であるとともに、エレガントで高貴な雰囲気を演出してくれます。
現代ではシルクやポリエステルなどの安価な素材のものもありますが、上流階級の人や首脳会議など公式な場面では伝統的な素材が使われているものを着ます。
素材 | 特徴 |
オーガンザ(Organza) | ポリエステルやシルクの混合。最も低価格で、ドレスコードの緩いイベントや数回しか着ない人、お土産に最適。 |
フーシ(Jusi) | シルクの一種で、オーガンザより質感が良い。 少し値段が上がるが、高すぎないため、あまりお金をかけたくないけど質感も気にする人におすすめ。 |
ピニャ(Pina) | パイナップルの葉の繊維を使った最高級素材。 肌触りも最高質で複雑な刺繍デザインも特徴的。 しかし職人技が必要で、製造が難しいため高価格です。 |
バロンタガログの特徴
バロンタガログの特徴は、刺繍やレースなどによる装飾です。
刺繍は主にシャツの前面、ペチェラと呼ばれる部分に施されますが、袖や背中にもある場合があります。
刺繍技法には糸で模様を描くドロンワークや、布の裏側から刺繡を施すことでぼんやりと模様が浮き上がるシャドウ刺繍などの技法が使われます。
レースは襟や袖口にあしらわれるのが一般的ですが、全体に使われていることもあり、デザインもさまざまです。
また装飾の複雑さによって、着用者の地位や富を表すこともあります。
バロンタガログはどんな時に着る?
バロンタガログは日本でいうと着物のような認識で、結婚式や特別なイベント時に着るものです。
また大統領が首脳会議で着用したり、ビジネスシーンで必要だったりもあるようです。
透け感のある素材なので、中には必ずインナーを着ます。
白の丸首のTシャツなどでいいそうです。
ズボンは黒、靴も黒のドレスシューズなどを合わせます。
シャツはズボンの中に入れず、出して着るのがルールとのこと。
また近年、セブ島でフォトウェディングを撮る人も増えているので、フィリピンの伝統衣装を取り入れることもあるようです。
バロンタガログを販売している場所は?通販でも買える?値段相場も紹介
バロンタガログが必要な際や着てみたい場合、オンラインマーケットもしくはフィリピン現地で購入できます。
値段の相場はデザインや素材でも変わってくるのでピンキリですが、約3,000円〜10,000円といえるでしょう。
高級なものになると1万円を超えることもあります。
以下、詳しく解説するので参考にしてください。
【日本国内から購入可能なオンラインマーケット】
・フリマアプリ
日本のフリマアプリであるメルカリやYahoo!オークションでは、バロンタガログの中古品や新品が数千円台から出品されています。
結婚式用や刺繍入りなどさまざまなデザインが見つかるでしょう。
・ハンドメイドマーケット
世界中のハンドメイドやヴィンテージ商品を扱うサイトEtsy(エッツィー)では、オーダーメイドやユニークなバロンタガログが購入できます。
ただし、値段相場はやや高めです。
【フィリピン現地での購入】
・デパートやショッピングモール
マニラやセブ島などランドマークにあるショッピングモールやデパートで、バロンタガログが販売されています。
価格はピンキリですが、安いものだと1,000ペソ(3,000円前後)程度で買えるようです。
ただし、生地の質感やデザイン性は、価格が低いほど落ちるでしょう。
・お土産屋さん
お土産店でもバロンタガログが販売されているようです。
例えば「Kultura(クルトゥラ)」というお店はフィリピン国内にいくつか店舗があるので見つけやすく、比較的質の良いバロン・タガログがあるとのこと。
・仕立て屋
仕立て屋さんで生地を選び、身体に合わせてオーダーメイドする方法もあります。
相場は仕立て代込みで5000ペソ(10,000円)前後が目安と、既製品に比べると少し値が張りますが、体のサイズに合わせて作ってもらえば見た目は格段に良いでしょう。
生地は伝統的なマニラ麻、バナナ繊維やパイナップル繊維から選ぶのが基本なので、質感も格別です。
バロンタガログを購入する際のポイント
バロンタガログは日本にいながらオンラインマーケットで買うか、現地で買うかの方法がありますが、購入時に押さえておきたいポイントをまとめます。
・バロン・タガログは素材(ポリエステル、シルク、麻、バナナ繊維、パイナップル繊維)や、刺繍・レースなどの装飾の複雑度で価格が大きく変動します。
・既製品はリーズナブルで即購入可能ですが、デザイン性や質感が良質なものを見つけるのは簡単ではないでしょう。
オーダーメイドは価格が上がりますが、サイズやデザインの自由度が高いです。
用途や予算に応じて、自身に合った購入ルート、商品選びをしてください。
またフィリピンでの挙式やフォトウェディングの際は、レンタルサービスもあるようです。
バロンタガログの洗濯方法は?
いざバロンタガログを購入したら、洗濯はどうすれば良いか不安という人もいるでしょう。
生地に使われている素材によって洗濯方法が異なるので確認してください。
・パイナップル繊維(ピーニャ)製のバロンタガログ
高級かつ繊細な素材のため、基本的に自宅での洗濯は推奨されません。
洗濯表示がないことが多い上に、自宅で洗わないのが一般的なので、陰干しでのケアが基本です(直射日光は生地を傷める可能性があります)。
またクリーニングに出したい場合は、ドライクリーニングにしましょう。
・ポリエステル製やシルク製のバロン・タガログ
洗濯機の使用が可能なものもあります。
心配であれば、洗濯洗剤を溶かしたぬるま湯で手洗い(押し洗い)すると良いでしょう。
漂白剤や乾燥機の使用は避け、ハンガーにかけて陰干ししてください。
またアイロンをかける際は、低い温度でアテ布を使用しましょう。
バロンタガログは基本的に繊細な製品です。
素材に合わせて適切なケアをすることで、長持ちさせられます。
まとめ
バロンタガログはフィリピンの男性用の伝統衣装で、結婚式やビジネスシーン、特別なイベント時に着用します。
植民地時代の前から存在する歴史深いもので、ヨーロッパ文化と先住民文化が混ざり合った、エレガントで繊細な正装です。
素材はパイナップルやバナナの繊維、マニラ麻など伝統的で高級なものから、ポリエステルやシルク混合など安価なものもあります。
バロンタガログが必要な人や着てみたいという人は、日本国内からオンラインマーケットで購入するか、現地で販売されている場所があるのでチェックしてみてください!

◇経歴
幼少期から英会話スクールに通い、大学は英語専攻に進学、社会人を経験した後にオーストラリアで1年ほどワーホリをしました。
◇資格
英検準2級、現在IELTSの受験勉強中
◇留学経験
オーストラリアの語学学校で2ヶ月英語を学びました。
◇海外渡航経験
オーストラリアでワーホリ(約1年)、現在フランス人のパートナーとフランス滞在中
◇自己紹介
オーストラリアでのワーホリを1年経験しました。
その時に出会ったフランス人の彼と現在フランスに住んでいます。
彼との会話は英語です。以前ライティングの仕事をしていた経験を活かし、Webライターとして活動しながら、英日翻訳家になるための勉強もしています。